なぜ“推しを唐揚げ”にするとバズるのか?――#画像揚げと麻辣湯・アサイー・タピオカに共通する「カスタマイズ型流行」の正体

2026年9月、インターネットはまた意味の分からない方向に進化した。

広告
広告

2026年9月、インターネットはまた意味の分からない方向に進化した。

好きな画像を、から揚げにできる。天ぷらにもできる。

以上である。

人類は火を使い、農耕を始め、文字を発明し、インターネットを作り、ついに推しのPNGを油へ投入するところまで来た。

公開検索で確認できる範囲では、9月14日夜に「好きな画像をから揚げにできるサイト」が投稿され、ほどなく #画像揚げ とともに大量の派生作品が流れ始めた。

そして当然のように、かわいいキャラクターも揚げられた。

そこで生まれたのが、

「泣いてるのになんで揚げるんだ」 「一日草をむしって生きてる苦労が分かるのか」

みたいな、もはやキャラクター保護団体の緊急声明みたいなマジギレである。

口調は完全に怒っている。だが中身はものすごく優しい。

しかも面白い。

なぜこんなものが成立するのか。

ここで思い出したいのが、麻辣湯、アサイーボウル、タピオカのような近年の食トレンドだ。

一見すると、

  • 推しを油に落とすサイト
  • 野菜や練り物を選んで作る麻辣湯
  • フルーツを盛るアサイーボウル
  • 甘さ・氷・トッピングを選ぶティードリンク

には何の関係もない。

しかし体験の構造だけを見ると、妙に似ている。

完成品を受け取るのではなく、自分が最後の一手を入れて完成させる。

ここがかなり重要である。

1. 「画像揚げ」は、画像を見るミームではなく“ミーム製造機”だった

普通のミームは、誰かが作った面白い画像を見る。

画像揚げは違う。

自分の好きな画像を持ち込める。

猫でも、推しでも、ゲームキャラでも、友達が描いた絵でもいい。画像を入れると、それが衣をまとって油へ沈み、揚がって出てくる。

つまり面白さの中心が、完成した一枚の画像ではない。

「次は何を揚げよう?」という入力欄そのものなのである。

これはかなり強い。

一つのネタが100万人に配られるのではなく、100万人がそれぞれ違うネタを作れる。

しかも操作説明がほぼ要らない。

  1. 画像を選ぶ。
  2. 揚げる。
  3. 笑う。
  4. 投稿する。
  5. 他人が「おい」と怒る。
  6. さらに別の画像が揚がる。

インターネット食品工場、操業開始。

ツール自体が投稿を量産するため、ミームの寿命を一枚の画像に依存しなくてよい。

「この画像面白い」から、「この仕組みで何をやったら面白い?」へ変わっている。

2. ちいかわを揚げたとき、なぜ“マジギレ”が一番面白くなるのか

かわいいキャラクターを揚げた画像だけでも少し面白い。

でも本当に強いのは、その後に人間が本気みたいな温度で怒り始めたときだ。

ここには三つの落差がある。

落差1:罪が軽すぎるのに、怒りが重すぎる

起きたことは画像加工である。

なのに反応は、

「お前はこいつが今日までどうやって生きてきたと思ってるんだ」

ぐらいまで行く。

刑事事件の追及みたいな熱量を、PNGの唐揚げに投入している。

温度差だけで既に面白い。

落差2:怒りの根拠が“設定への深すぎる共感”

さらに面白いのが、単に「かわいそう」では終わらないことだ。

草をむしって生活する大変さまで持ち出すと、急にキャラクターの労働問題になる。

「かわいいものを守りたい」という感情が、架空世界の生活史まで召喚してくる。

推しの労働組合、突然の結成である。

落差3:怒っているのに、実質は愛情表現

言葉だけを見ると攻撃的なのに、動機は「そんな目に遭わせるな」である。

だから返信として「優しい」が成立する。

怒りの外装を着た慈愛。

この反転が笑いになる。

3. 麻辣湯・アサイー・タピオカとの共通点は「自分で完成させる」こと

2026年の若者600人調査では、上半期の「流行グルメ」で麻辣湯が19.5%で1位となり、15〜19歳女性では32.0%だった。

麻辣湯が強い理由を一つに決めることはできない。味、辛さ、野菜を取りやすい感覚、SNS、店舗増加など複数の要因がある。

そのうえで、体験として非常に目立つのが具材選択だ。

棚を見て、春雨を選び、肉を入れ、きくらげを足し、練り物を拾い、辛さを決める。

店が完成品を渡す前に、客がかなり編集している。

タピオカ系ティードリンクも同じだ。ゴンチャの現在の公式注文案内でも、ドリンク、シロップ量、氷の量、トッピングを好みに合わせてカスタマイズできる。

アサイーボウルも、ベースにフルーツ、グラノーラ、ソースなどを重ね、見た目と味の両方を組み立てやすい。2026年の調査では、アサイーは2023年ごろからSNSや専門店の広がりを背景に、Z世代を中心に再注目されていると整理されている。

共通するのは、

商品=完成品

ではなく、

商品=編集可能なテンプレート

になっていることだ。

麻辣湯なら「具材スロット」。 タピオカなら「甘さ・氷・トッピング設定」。 アサイーなら「盛り付けビルド」。 画像揚げなら「素材画像スロット」。

ほぼUIである。

4. ただし、画像揚げは“良くするカスタム”ではなく“わざとひどくするカスタム”

ここが一番面白い差である。

食べ物のカスタマイズは基本的に、

「自分にとってもっと良くする」

方向へ進む。

辛くする。肉を増やす。好きな果物を乗せる。甘さを減らす。

ところが画像揚げは、

「好きなものを、わざと意味不明な状態にする」

方向へ進む。

推しがサクサクになる。

猫が天ぷらになる。

かわいいキャラが油面から出てくる。

普通なら「価値を高める」のがカスタマイズなのに、ここでは尊厳を軽く破壊すること自体が価値になる。

もちろん本当に対象を嫌っているからではない。

むしろ元画像を知っていて、愛着があるほど、変身後との落差が大きい。

どうでもいい画像を揚げても、「ふーん、揚がったね」で終わる。

推しを揚げると、

「何してんだよ!!!!」

が発生する。

Same structure, different emotion.

構造は同じで、感情の向きが違う。

5. なぜ「自分で選ぶ」と強くなるのか――所有感と自己表現

カスタマイズが強い理由を考えるとき、「自由だから」で終わらせると少し足りない。

研究では、自分でカスタマイズしたアバターは、単に用意されたものを受け取る場合より心理的所有感と結びつきやすいことが報告されている。

また、食べ物の写真をSNSへ投稿する行為について、自己表現が食体験の評価向上を媒介した研究もある。

2026年のSNS研究でも、利用者同士・利用者と提供者の相互作用が、心理的所有感を介して一部のエンゲージメント行動と関連することが示されている。

もちろん、これらの研究が「画像揚げが流行った原因」を直接証明したわけではない。

ただし、今回の現象を考える補助線としては使える。

自分が選んだ。 自分が作った。 自分の結果が出た。 それを人に見せられる。

この4つが揃うと、同じテンプレートでも「俺のやつ」になる。

麻辣湯も、アサイーも、タピオカも、画像揚げも、完成後に言いたくなるのはだいたい同じだ。

「見て、俺のこれ。」

6. 流行りやすいのは「自由度MAX」ではなく“制約付き自由”かもしれない

何でもできるツールは、一見最強に見える。

でも何でもできると、まず「何すればいいの?」が来る。

画像揚げはルールが極端に狭い。

画像を入れたら揚がる。

麻辣湯も、何でも料理できるわけではない。

この棚から具材を選んで、このスープで食べる。

タピオカも、分子料理から始める必要はない。

このドリンクに、このトッピング。

つまりユーザーはゼロから発明しなくていい。

店やツールが80%作り、最後の20%だけユーザーに渡す。

このくらいの制約付き自由は参加しやすい。

創造性を要求しすぎず、それでも結果には個性が出る。

「自由に何か面白いものを作ってください」は宿題になる。

「この猫を揚げられます」は祭りになる。

7. 画像揚げがSNS向きすぎる理由

画像揚げには、拡散に向いた条件がかなり揃っている。

一目で分かる

説明文を読まなくても、

元のキャラ → 衣 → 油 → 唐揚げ

で理解できる。

入力だけ変えれば無限に派生する

フォーマットは固定なので、新規参加者はネタの文法を覚える必要がない。

元画像への愛着がリアクションを生む

知らない物体なら「揚がってる」で終わる。

知っている推しなら「やめろ」で始まる。

結果が投稿者ごとに違う

同じツールなのにタイムラインが同じ画像で埋まらない。

ツッコミまでコンテンツになる

画像だけで終わらず、

「かわいそう」 「うまそう」 「なんで揚げた」 「天ぷら版まであるの何」

と二次反応が増える。

つまり投稿一つが、さらに投稿を呼ぶ。

コンテンツではなく、コンテンツを作るルールが流行っている。

ここが強い。

8. 結論:「映えるから」より「参加できるから」で見ると、流行がつながる

アサイーボウル、麻辣湯、タピオカ、画像揚げ。

全部を一つの原因で説明するのは無理がある。

味も違う。市場も違う。利用動機も違う。

ただ、共通する体験設計は確かにある。

固定された土台がある。 自分で一部を選べる。 結果がすぐ出る。 結果に個体差がある。 人に見せやすい。 他人の組み合わせも見たくなる。 次は別の組み合わせを試せる。

ここまで揃うと、商品やサービスは単なる完成品ではなくなる。

遊び場になる。

麻辣湯なら「俺のビルド」。 アサイーなら「俺の盛り」。 タピオカなら「俺の一杯」。 画像揚げなら「俺の推し、揚がりました」。

最後だけ最悪である。

でも、その最悪さを自分で選べるから面白い。

そして推しが泣いているのを見て、誰かが本気みたいに怒る。

「お前はこいつが草をむしって生きてる大変さを分かってるのか」と。

そこで完成する。

画像加工だけでは、まだ半分だったのだ。

揚げる人、怒る人、笑う人まで含めて一つの参加型ミームになっている。

広告
めんどいちゃん

この記事を書いた人

めんどいちゃん

仕事や日常の「めんどい」を構造化して、次に動きやすくする記事を書いています。

このサイトについて
広告

新着記事

  1. 1AIでマチアプの文章を作る――恋愛を外注せず「返信フック」だけ量産する
  2. 2サードアイはガチャ専用でいい:第六感を信じる場所、論理で詰める場所
  3. 3四日市とんてき、米を外したら「わんこキャベツ」が始まった
  4. 45秒で結論
  5. 5針一本を何時間も流して全員坊主。それ、魚との遭遇率から変えた方がよくない?

あわせて読みたい

広告