エンゲージメントは、下流で直接操作できない
会社は、エンゲージメント向上、中堅離職防止、休職予防を掲げる。
施策担当者は、最初に期待する。
今度こそ、会社が人の扱い方を変えるのではないか。
役割、権限、負荷、管理行動を見直せるのではないか。
しかし、実際に任されるのは次である。
- アンケート
- 研修
- 交流イベント
- 声かけ
- 1on1
- ストレス対処
- 社内広報
- 「主体性」を高める企画
一方、次には触れられない。
- 上位者の長時間の一方的拘束
- 後出し指示
- 私用携帯への反復連絡
- 管理職の機嫌で変わる評価
- 人員不足
- 慢性残業
- 同じ部署に偏る欠勤、休職、退職
- 発言した人への不利益
- 実行されない改善提案
これでは、施策担当者は、火元を消す権限なしで煙を減らせと言われている。
三方向の板挟み
エンゲージメント担当者には、三方向から圧がかかる。
経営・上位者
数値を上げてほしい。
離職を減らしてほしい。
社員を前向きにしてほしい。
従業員
意見を聞くと言ったのだから、本当に変わるのか。
また研修だけではないのか。
上司の行動は変わるのか。
現実の権限
上位者の行動は対象外。
人員は増えない。
業務は減らない。
上が承認しない案は止める。
この構造では、担当者の仕事は改善ではなく、変化への期待を管理する感情労働になる。
意見募集が不信感を増やすとき
新入社員でも、次を短期間で学習する。
意見を出す
↓
最初に否定される
↓
「上が認めない」で止まる
↓
代替案も交渉もない
↓
次回また「意見を出して」と言われる
これは参加ではない。
「参加しているように見せる儀式」である。
本気で意見を求めるなら、管理側は次を返す必要がある。
- 採用する
- 採用しない理由を示す
- 条件を変えれば採用できる範囲を示す
- 誰が上へ交渉するか決める
- いつ再検討するか決める
- 小さく試す
「上が無理」で終えるのは、上位者への交渉責任を放棄し、現場へ無力感だけを残す。
期待を持たせた後の不作為は、以前より悪い
何も期待していなければ、人は最初から距離を取る。
しかし、「声を聞く」「変える」と宣言して意見を集めた後、何も変えなければ、会社は次を学習させる。
会社の言葉は、行動につながらない。
本音を出すと、時間だけ失う。
改善は、上位者の気分で消える。
この学習は、単なる低エンゲージメントではない。
組織への合理的な不信である。
エンゲージメント施策の正しい順番
- 威圧、侮辱、長時間拘束、報復を止める
- 役割、権限、優先順位、完了条件を明確にする
- 人員と仕事量を合わせる
- 欠勤、休職、異動、退職の部署偏在を確認する
- 管理職行動を評価へ入れる
- 意見への回答期限と責任者を決める
- その後に、研修、1on1、交流施策を行う
エンゲージメントは、イベントで注入する液体ではない。
日常の仕事設計と権力行使の結果である。
