鹿児島を独断と偏見で歩いたら、だいたい芋だった

鹿児島に着いて最初に目についたのが、日焼けしているように見える人の多さだった。

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1. 第一印象、「みんな日焼けしてない?」

鹿児島に着いて最初に目についたのが、日焼けしているように見える人の多さだった。

体感では「日焼け率95%では?」と言いたくなるくらいだった。ただし、これは完全に旅行者の目測であって統計ではない。鹿児島県民の何%が日焼けしているか、という公的な数字は見つからないし、見た目だけで「日焼け」か「もともとの肌の色」かを決めることもできない。

一方で、「鹿児島は日焼けしやすい土地なのか」なら、かなり筋が通る。気象庁によると、日本では一般に南へ行くほど太陽が高くなり、紫外線が強くなる。8月には九州から南西諸島の一部でUVインデックス8~9の「非常に強い」水準になる。

つまり、「鹿児島県民の95%が焼けている」は言いすぎだが、「鹿児島で日焼けした人が多く見えた」は、気候的にまったく意味不明な観察ではない。

2. 黒豚、黒牛、人まで黒く見えて脳がバグる

ここで悪い連想が始まる。

鹿児島といえば黒豚。黒牛。そして目の前には日焼けしているように見える人が多い。

「黒豚と黒牛を食べているから……?」

もちろん違う。

かごしま黒豚は、黒い体毛と、4本の足・鼻・しっぽの先の計6か所に白い毛がある「六白」が特徴。黒毛和種も名前どおり黒い毛色を持つ品種だ。どちらも人間の日焼けとは関係ない。

食べたものの色が人間の肌に移るシステムだったら、イカ墨パスタを食べた日の日本は大変なことになる。

3. 「西郷隆盛みたいな体格の人が多そう」は普通に偏見だった

鹿児島へ来る前、頭の中には謎の県民像があった。

「西郷どんみたいに、どっしりした人が多そう」。

現地へ来た。

別にそんなことはなかった。

当たり前である。鹿児島県民の体型が全員、西郷隆盛のイメージに寄る理由はない。これは完全に「有名人ひとりの印象を県民全体へコピーした」だけだった。

旅行のおもしろさは、こういう雑なイメージが現地で秒で壊れることにもある。

4. 「さつまいもはめちゃくちゃ食べてそう」だけは、かなり当たった

ここまで外してきたので、さつまいもも偏見かと思った。

ところが芋は強かった。

農林水産省の2025年産統計では、全国のかんしょ収穫量69万9,400トンのうち、鹿児島県は21万9,000トン、約31%で全国1位。ほぼ3本に1本が鹿児島という規模だ。

食べる側でも鹿児島は強い。総務省の家計調査をもとにした鹿児島県のまとめでは、2023~2025年平均の二人以上世帯で、鹿児島市のさつまいも年間支出額は1,729円で全国2位。全国平均1,293円の約1.34倍だった。購入量でも上位である。

ただし1位は徳島市。

「薩摩芋なのに鹿児島が1位じゃないんかい」という、きれいなオチまでついている。

5. そして今さら知った。「さつまいも」の薩摩は、本当に薩摩

一番びっくりしたのがこれだった。

さつまいもの「さつま」って、鹿児島の薩摩なのか?

本当にそうだった。

農林水産省によると、さつまいもは中南米原産で、中国から琉球、そして薩摩へ伝わり、薩摩を経由して日本各地へ広がった。そのため「薩摩いも」と呼ばれるようになった。

しかも鹿児島では「からいも」「かいも」と呼ばれることもある。

本州側から見ると「薩摩から来た芋」なので薩摩芋。薩摩側から見ると「中国・琉球方面から来た芋」なので唐芋。

視点が変わると名前まで変わる。地理の授業より分かりやすい。

6. 売店、紫と黄色ばっかり。完全に分かっている

そして売店を見ると、紫と黄色が強い。

紫芋の紫。スイートポテトの黄色。

「もっとさつまいもを売ればいいのに」と思ったが、よく見ると、もう十分すぎるほど売っていた。ただし、生の芋を山積みにするのではなく、お土産として持ち帰りやすい形に変身している。

代表例が薩摩芋タルト。山福製菓の公式説明では、鹿児島のさつまいもをスイートポテト状に練り、クッキーの上に絞った洋風タルト。黄色系と紫系の見た目まで、売店の配色そのものだ。

さらにパッケージには西郷隆盛。

芋、紫、黄色、西郷どん。

鹿児島要素を一箱に圧縮しすぎである。

7. 「さつま揚げより芋を売れば?」と思ったら、両方ガチだった

最初は「さつま揚げより、せっかく名前そのものが薩摩のさつまいもをもっと売ればいいのに」と思った。

しかし、さつま揚げ側も普通に強かった。

鹿児島県によると、県民はさつま揚げを「つけあげ」と呼ぶ。2023~2025年平均の家計調査では、鹿児島市の「揚げかまぼこ」年間支出額は6,479円で全国1位。全国平均2,426円の約2.7倍である。

芋だけではなかった。

鹿児島は「薩摩」の看板を、揚げても焼いても甘くしても使い倒していた。

ロイヤルのスイートポテトも、鹿児島県長島町のブランド芋「長島紅美人」を使う商品として現在も販売されている。

「もっと芋を売れ」は、現地売店に対して完全に釈迦に説法だった。

8. 結論:独断と偏見で入って、現地で壊すと旅行はおもしろい

今回の鹿児島第一印象を整理するとこうなる。

  • 「みんな日焼けしている」→ 体感としては強烈。ただし95%は統計ではない。南ほど紫外線が強いという背景はある。
  • 「黒豚・黒牛だから人も黒い?」→ 何を言っているんだ。豚と牛の黒は毛色。
  • 「西郷隆盛みたいな体格の人が多そう」→ 普通に偏見。現地で即終了。
  • 「さつまいもをめちゃくちゃ食べてそう」→ これはかなり当たり。
  • 「さつまいもの“さつま”って薩摩?」→ 本当に薩摩。
  • 「もっと芋を売ればいいのに」→ 売店が紫と黄色だらけ。もうやってる。
  • 「西郷どんの芋タルトまである」→ 鹿児島要素の圧縮率が高すぎる。

旅行前の県民像なんて、だいたい雑である。

でも、その雑なイメージを持って現地へ行き、「これは外れ」「これは意外と当たり」「これは想像以上」と一個ずつ直していくのはかなり楽しい。

そして最後に残ったのは、芋だった。

鹿児島、思っていた以上に薩摩芋だった。

参考資料(9件)


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