要約・結論
始まりは、架空の登場人物の強さ、戦闘力、能力相性を延々と考える雑談だった。そこから「強さは単純な最大火力ではなく、条件、コスト、再現性、相手との相性で決まる」という見方が、現実の短期売買へ接続した。値動きの初動、押し戻し、再加速に継続性があるのではないか。そう考え、公開約定履歴を使って検証した。
結果として、ランダムとは言い切りにくい弱い方向性は見つかった。しかし、手数料を超えるほど強くはなく、条件を掘るほど過適合の危険が増えた。最大の成果は「儲かる必勝法」を発見したことではない。面白そうな仮説を、入金前に数値で壊せる検証工程を作ったことである。
偶然の出発点:物語の強さ議論は、条件付き期待値の議論だった
フィクションの強さ議論では、「誰が一番強いか」だけでは結論が出ない。先手を取れるか、能力を知っているか、制約を満たせるか、相性が良いか、継戦能力があるかで結果が変わる。
この構造は短期売買にも似ている。チャート上で方向を当てても、次の条件を満たさなければ利益にはならない。
- シグナル確定後に実際に入れるか
- 手数料とスプレッドを超える値幅があるか
- 遅延後にも優位性が残るか
- 一部の大勝ちだけに依存していないか
- 未使用期間でも同じ傾向が出るか
- 他の銘柄へ移しても再現するか
つまり「方向予測の正しさ」と「運用可能な強さ」は別である。物語の能力相性を考えていたはずが、いつの間にか市場マイクロストラクチャーの検証へ移っていた。
仮説:初動、押し戻し、再加速の後には短期継続性がある
検証した中心仮説は単純だった。
- 一方向へ強い初動が起きる
- 反対方向への押し戻しが入る
- それでも初動の高値・安値を再突破する
- 再加速方向の成行フローが確認される
- その後、数秒から数分は同方向へ継続しやすい
未来参照を避けるため、再突破を確認した後、設定した遅延後の最初の実約定価格で参加する。買い、売り、統合を分け、500ミリ秒から1分の時間足、50から2,000約定のイベント足、複数の保有時間を比較した。
データ監査で分かった、バックテスト以前の難しさ
初期の3日分析では、時刻、価格、数量、方向が同じ行を重複として除外していた。しかし、公開約定履歴には、これらが一致していても異なる取引IDを持つ正規約定が存在した。約111万件を誤って落としていたため、初期結果を参考値へ格下げし、取引IDだけで重複判定する形へ修正した。
正式版は10日、合計14,105,850約定で再計算した。期間を学習4日、検証2日、最終テスト4日に固定し、最終テストを見て条件を選び直さないようにした。
この訂正は重要である。戦略ロジックが精密でも、データ洗浄を誤れば全てが崩れる。再現性の第一条件は、派手なモデルではなく、データの意味を正しく理解することである。
結果1:50約定足には微弱な継続性があった
50約定足・30秒保有では、未使用テスト446シグナルの平均粗利が+0.436bpで、4日すべてプラスだった。方向予測としては、完全なランダムより少し良い可能性がある。
しかし、BybitのVIP 0基準では、無期限・先物の片道手数料はテイカー5.5bp、メイカー2.0bpであり、往復ではテイカー11bp、メイカー4bpとなる。[1] +0.436bpでは、理想的に両側メイカーでも-3.564bp、両側テイカーなら-10.564bpである。
これは「エッジがない」のではなく、「統計的な癖はあるが経済的価値がない」という結果である。
結果2:15秒足・10分保有で値幅は拡大した
足を大きくし、15秒足・10分保有へ変えると、未使用テスト51シグナルで平均粗利+3.324bp、4日すべてプラスとなった。50約定足の約7.6倍まで値幅を拡大できた。
ただし中央値は+0.683bpで、最大利益3件を除くと平均は+1.103bpまで低下した。利益の多くは少数の大きなトレンドに集中していた。理想的な両側メイカー手数料4bpを引いても-0.676bpであり、標準条件ではまだ届かない。
固定利確・損切りを入れると、大きく伸びる右裾を早く切ってしまい、手数料後成績は改善しなかった。この戦略の形は、高勝率で小さく積む型ではなく、半分程度の勝率で少数の大きな継続を取る型だった。
結果3:強く見えた条件ほど、新しい期間が必要だった
詳細分析では、学習期間の中央値から固定した次の3条件を全て満たす場合、数字が大きく改善した。
- 初動値幅が大きい
- 直前60分の値幅が大きい
- 直前60分の約定活動が高い
この条件では、学習+8.093bp、検証+6.100bp、テスト+9.509bpだった。しかし、この条件自体をテスト結果を見た後に発見している。したがって、テスト数字を純粋な未使用検証として扱うことはできない。
「強い条件を見つけた」のではなく、「次に固定して試す仮説を見つけた」と表現するのが正しい。
結論:面白い仮説を、面白いまま信じない
架空の戦闘力分析から始まり、約1,400万件の実約定検証へ進んだ。この流れ自体は冗談のようだが、思考法は一貫している。
- 強さを単一指標で見ない
- 条件とコストを分ける
- 相性と局面を見る
- 未使用データで確認する
- 間違いを見つけたら全計算をやり直す
市場では、仮説を持つことより、仮説を捨てられる仕組みの方が重要である。
