この記事の結論
『HUNTER×HUNTER』の王位継承戦・暗黒大陸船内編は、面白い。
ただし、リアルタイムで追うにはかなり重い。
理由はシンプルで、物語内の船もなかなか進まないし、現実の連載もなかなか進まないからだ。
さらに、1話あたりの情報量がかなり多い。
王子が多い。
護衛が多い。
私設兵が多い。
念獣がいる。
マフィアがいる。
旅団がいる。
ヒソカがいる。
ビヨンドの秘密も出る。
クラピカの念講習もある。
これを更新間隔が空いた状態で読むと、読者側の記憶が毎回リセットされる。
「面白い」のに、「読む前に復習が必要」になる。
ここが王位継承戦のしんどさだと思う。
ハンゾーが再登場しても、ぜんぜん“戻ってきた感”がない
ハンゾーはハンター試験編ではかなり印象が強いキャラだった。
最終試験でゴンと戦い、実力では完全に上回っていたのに、ゴンの折れなさを見て自分から降参する。
あのシーンでハンゾーは、単なる強キャラではなく、
- 強い
- 殺しの経験もある
- でも必要以上には壊さない
- 相手の意志を認める
という、かなりいいキャラとして立っていた。
だから普通なら、再登場したらかなり熱い。
実際、漫画の王位継承戦ではハンゾーは再登場している。
でも、読者の体感としては「ハンゾーが戻ってきた!」というより、王位継承戦という巨大な情報の海にハンゾーが混ざっているという感じに近い。
理由は、船内編の密度が高すぎるからだ。
ハンゾー単体で活躍を味わう前に、
- 第何王子の護衛なのか
- 王子の念獣は何をするのか
- クラピカ側の講習会はどうなったのか
- マフィア抗争は今どこまで進んだのか
- 旅団とヒソカはどこにいるのか
- ビヨンドの仕込みは何なのか
という話が同時進行する。
つまりハンゾーは再登場している。
でも、再会キャラとして気持ちよく消化されている感じはまだ薄い。
ハンター試験編のハンゾーが好きだった読者からすると、ここは少しもったいない。
王位継承戦は「進む」より「盤面が更新される」章になっている
ハンター試験編は、進行感が分かりやすかった。
一次試験で走る。
二次試験で料理する。
三次試験で塔を降りる。
四次試験でプレートを奪う。
最終試験で一対一をする。
読者は「今どこにいて、何をクリアすればいいか」がすぐ分かる。
一方で王位継承戦は、読んでいても「ゴールに近づいている」というより、盤面の情報が少しずつ増えている感覚が強い。
たとえば、1話の中で起きることはこういうタイプが多い。
- 王子陣営の思惑が少し見える
- 護衛の能力条件が少し分かる
- マフィアの勢力図が少し動く
- 旅団やヒソカの位置が少し匂う
- ビヨンド関連の伏線が少し増える
これは面白い。
ただ、爽快な「進んだ!」ではなく、盤面が細かく更新されたという面白さになる。
将棋や人狼やTRPGのリプレイを読んでいる感覚に近い。
毎週読めるなら、それでも追える。
しかし更新間隔が空くと、前提を忘れる。
誰がどの王子側だったか。
誰がどの部屋にいたか。
誰がどの能力を持っていたか。
どのマフィア組織がどこと繋がっているか。
そこから思い出す必要がある。
だから王位継承戦は、読者側に「記憶保持能力」を要求してくる。
公式あらすじを見ても、船内でまだ渋滞している
集英社公式の39巻あらすじでは、内容は「船内で進行する旅団とマフィアの戦い」「熾烈な王位継承戦」「クラピカの講習会」「ロンギから明かされたビヨンドの秘密」「ボノレノフとヒソカ」といった要素で説明されている。
つまり、話題はかなり多い。
でも場所としては、まだ船内だ。
38巻の公式あらすじでも、暗黒大陸を目指す船内での三つ巴のマフィア抗争、ヒソカを追う幻影旅団、エイ=イ一家との衝突が中心になっている。
暗黒大陸を目指している。
でも、暗黒大陸にはまだ着かない。
その前に船内で王位継承戦とマフィア抗争と旅団・ヒソカ問題が膨らんでいる。
これが「進まなすぎる」と感じる大きな理由だ。
暗黒大陸という目的地を提示しておきながら、その手前の船内が巨大ダンジョン化している。
読者としては、
「暗黒大陸まだ?」
「船、まだ?」
「王子まだ多くない?」
「旅団とヒソカもまだ決着してない?」
となる。
面白いけど、渋滞している。
連載間隔が空くと、文字量の多さが効いてくる
王位継承戦は文字量も多い。
もちろん、ただ文字が多いだけではない。
念能力の条件、王子陣営の思考、護衛の判断、マフィアの交渉、クラピカの講習、心理戦など、必要な情報として多い。
だから密度は高い。
ただ、密度が高い作品は、連載間隔が空くほど読者に負荷がかかる。
VIZ公式の掲載ページでは、Ch.410が2024年12月8日、Ch.411が2026年6月28日として並んでいる。
つまり、この区間だけ見てもかなり間が空いている。
この状態で、いきなり王子・護衛・マフィア・旅団・ヒソカ・ビヨンドの話を再開されると、読者の脳内キャッシュが死ぬ。
昔の章なら、多少間が空いても思い出しやすかった。
ハンター試験なら「試験を突破する話」。
天空闘技場なら「念を覚えてヒソカと戦う話」。
ヨークシンなら「クラピカ対旅団」。
グリードアイランドなら「ゲームクリア」。
キメラアントなら「人類対生物災害」。
でも王位継承戦は、
「誰が誰の味方で、何を狙っていて、どの能力がどの条件で発動して、どの陣営がどの階層にいて、誰がどの情報を知っているか」
を覚えていないと読みづらい。
これはもう、漫画というより半分ノベルゲームや群像劇小説に近い。
ゴンとキルアがいないことも、進行感の薄さに効いている
王位継承戦が重く感じる理由の一つは、ゴンとキルアが中心にいないことだと思う。
もちろん、クラピカ編として見れば正しい。
クラピカの因縁、緋の眼、王子護衛、十二支ん、暗黒大陸、ビヨンド、旅団、ヒソカ。
今の話にクラピカがいる意味は大きい。
ただ、読者の感情の乗り方として、ゴンとキルアは強かった。
ゴンとキルアがいると、話の目的が分かりやすい。
- 強くなる
- 友達を助ける
- ゲームをクリアする
- カイトを取り戻す
- ゴンを救う
という軸があった。
王位継承戦は、感情の軸よりも制度・策略・能力条件・陣営構造が前に出る。
だから読者は「誰を応援すればいいか」より先に、「今何が起きているか」を把握しなければいけない。
これが重い。
王位継承戦は完結後に読むと化ける可能性がある
ただし、王位継承戦はつまらないわけではない。
むしろ、まとめて読むとかなり面白くなる可能性がある。
なぜなら、王位継承戦は「1話ごとの進行感」よりも、「後から構造が繋がる面白さ」に寄っているからだ。
- あの王子の発言は伏線だった
- あの護衛の判断が後で効いた
- あの念能力の条件がここで噛み合った
- あのマフィア抗争が旅団と繋がった
- あのクラピカの講習が後の生存戦略になる
こういう読み方には向いている。
リアルタイムで追うと重い。
でも完結後、あるいは単行本で一気に読むと、「ああ、全部つながってたのか」となるタイプだと思う。
問題は、そこまで待つ読者の記憶と体力がもつかどうかだ。
「進まない」のではなく、進んでいる場所が細かすぎる
王位継承戦は、まったく進んでいないわけではない。
進んではいる。
ただし進んでいる方向が、読者の期待する「暗黒大陸へ近づく」ではなく、
- 王子陣営の内部
- 護衛の心理
- 念獣の条件
- マフィアの階層
- 旅団の探索
- ヒソカの所在
- ビヨンドの仕込み
という、細かいレイヤーになっている。
だから読者の体感としては、
「話は動いている」
でも
「船は進んでいない」
になる。
このズレが一番大きい。
暗黒大陸という大目的地があるのに、船内で別作品レベルの群像劇が始まっている。
それは面白い。
でも、さすがに長い。
まとめ:面白いけど、リアルタイムで追うには重すぎる
王位継承戦は、HUNTER×HUNTERらしい章だと思う。
念能力の条件戦。
心理戦。
制度の穴。
人間の欲。
強者が必ずしも盤面を支配しない構造。
一見モブに見える人物にも役割がある群像劇。
全部、HUNTER×HUNTERらしい。
ただし、リアルタイムで追うには重い。
更新間隔が空く。
文字量が多い。
勢力図が複雑。
船内からなかなか出ない。
再登場キャラも巨大な盤面に飲まれる。
だから読者の体感は、
「面白いけど、進まなすぎる」
になる。
ハンゾーが再登場しているのに、体感ではあまり見ていない。
暗黒大陸を目指しているのに、まだ船の中。
1話読んでも、目的地へ進んだというより、盤面が更新された感覚になる。
王位継承戦は、たぶん完結後にまとめて読むとかなり評価が上がる。
でもリアルタイムでは、読者側が毎回ハンター試験を受け直している。
読む前に復習。
読んだ後に整理。
次回までに忘れる。
このループがしんどい。
HUNTER×HUNTERは今も面白い。
ただ、王位継承戦はもう「週刊少年漫画」というより、超高密度の群像劇小説を不定期で読む体験になっている。
そりゃ、進まなすぎて「なあ……」となる。
公開時の注意点
- 王位継承戦・暗黒大陸船内編のネタバレを含むため、冒頭にネタバレ注意を入れる。
- 最新話・最新巻の情報は更新されるため、公開前に巻数・話数・日付を再確認する。
- 作者の体調や連載事情を断定的に批判するより、「読者体感として追いづらい」という書き方にする。
- 作品批判ではなく、「面白いが連載形式と相性が悪い」という論調にする。
関連記事導線
- 『HUNTER×HUNTER』ハンター試験編の異常さ
- 『HUNTER×HUNTER』キメラアント編のクソゲー感
- 『HUNTER×HUNTER』ヒソカの強さと限界
- 『HUNTER×HUNTER』王位継承戦の読みづらさと面白さ
参考資料(5件)
- 集英社『HUNTER×HUNTER 39』書誌情報
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-885174-7 - 集英社『HUNTER×HUNTER 38』書誌情報
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-884279-0 - 少年ジャンプ公式『HUNTER×HUNTER』コミックス一覧
https://www.shonenjump.com/j/rensai/list/hunter.html - VIZ公式『Hunter x Hunter』Chapter 410
https://www.viz.com/shonenjump/hunter-x-hunter-chapter-410/chapter/44896 - VIZ公式『Hunter x Hunter』Chapter 411
https://www.viz.com/shonenjump/hunter-x-hunter-chapter-411/chapter/50510
