導入:赤ちゃんを可愛いと思わない人はおかしいのか?
世間では、よくこう言われます。
赤ちゃんは可愛い。
子どもは尊い。
自分の子なら絶対に可愛い。
泣いていても可愛い。
見ているだけで守りたくなる。
でも、全員がそう感じるわけではありません。
犬や猫は可愛い。
カピバラも可愛い。
ゴールデンレトリバーやシェットランド・シープドッグのような、ふさふさして懐きそうな動物は可愛い。
大人の女性の笑顔や、柔らかい雰囲気にも「可愛い」と感じる。
でも、人間の赤ちゃんに対しては、
可愛いと思わない
世話したいと思わない
守りたいと思わない
ギャン泣きがうるさい
よだれが汚そう
いつ泣くか分からなくて怖い
触りたいと思わない
と感じる人もいます。
この感覚は、単に「冷たい」「人間嫌い」「親になれない」と決めつけていいものではありません。
大事なのは、
“可愛い”には複数の種類がある
ということです。
結論:人間の赤ちゃんを可愛いと思わない人は、“可愛いセンサー”の種類が違う可能性がある
この記事の結論はこれです。
人間の赤ちゃんをあまり可愛いと思わない人は、可愛いが分からない人ではない。
ただし、反応しやすい“可愛い”の種類が、赤ちゃん型・養育型ではない可能性がある。
たとえば、可愛いには次のような種類があります。
ベビースキーマ型かわいい:
大きい目、丸い顔、小さい鼻口、小ささ、幼さ
養育型かわいい:
守りたい、世話したい、泣いても受け止めたい
触覚癒やし型かわいい:
毛並み、ふさふさ、撫でたら気持ちよさそう
無害受容型かわいい:
攻撃してこなさそう、受け入れてくれそう、笑顔、懐き
安心接近型かわいい:
近づいても大丈夫そう、触れても安心、受け入れられる感じ
相互性型かわいい:
笑顔、声、雰囲気、仕草、人格、恋愛感情、安心感
人によって、このどれに強く反応するかが違います。
人間の赤ちゃんを可愛いと思いにくい人は、
ベビースキーマ型や養育型よりも、
無害受容型・安心接近型・触覚癒やし型に反応しやすいのかもしれません。
研究でいう「ベビースキーマ」とは何か
赤ちゃんが可愛く見える仕組みとして、心理学でよく出てくるのが ベビースキーマ です。
これは、動物行動学者コンラート・ローレンツが提案した考え方で、赤ちゃんっぽい特徴が大人に「かわいい」「世話したい」という反応を起こしやすいというものです。
ベビースキーマの特徴には、たとえば次のようなものがあります。
大きい目
丸い顔
高い額
小さい鼻
小さい口
ふっくらした頬
短く丸い手足
全体的な幼さ
Glocker らの研究では、乳児の顔画像にベビースキーマを強くしたもの・弱くしたものを作り、大人に評価してもらったところ、ベビースキーマが強い顔ほど可愛いと評価され、養育したい動機も高まりやすいことが示されています。
さらに、別の研究では、ベビースキーマが強い乳児顔を見ると、報酬処理に関わる側坐核が活性化することも報告されています。
つまり、赤ちゃんの「大きい目」「丸い顔」「小ささ」は、平均的にはかなり強い可愛い信号です。
でも、ベビースキーマは全員に同じようには刺さらない
ここで重要なのは、ベビースキーマは「平均的に刺さりやすい特徴」であって、全員に同じ強さで刺さるわけではないことです。
赤ちゃん顔を見て、
可愛い
守りたい
世話したい
抱っこしたい
泣いていても愛しい
と感じる人もいれば、
目が大きいから何?
泣くとうるさい
よだれが汚そう
触りたいと思わない
世話したいとは思わない
と感じる人もいます。
これは、赤ちゃんを見た時に動く回路が人によって違うからです。
可愛さは、単なる顔パーツだけではありません。
- 視覚
- 音
- 匂い
- 触覚
- 文脈
- 過去経験
- 養育動機
- 対人感覚
- 責任感
- 予測可能性
- 安心感
が混ざります。
だから、ベビースキーマ顔を見ても、それだけで可愛いに直結しない人がいても不思議ではありません。
「可愛い」と「世話したい」は同じではない
ここも大事です。
多くの研究では、赤ちゃんの可愛さは養育動機と結びつけて語られます。
つまり、
赤ちゃんを見る
↓
可愛いと思う
↓
守りたい
↓
世話したい
という流れです。
でも、すべての「可愛い」が「世話したい」につながるわけではありません。
たとえば、犬や猫やカピバラを見て、
かわいい
撫でたい
見ていたい
癒やされる
と思っても、
毎日世話したい
責任を全部背負いたい
病院も散歩も排泄も全部やりたい
まで行くとは限りません。
また、大人の女性を見て「笑顔が可愛い」と思っても、それは養育したいという意味ではありません。
つまり、
可愛い = 世話したい
ではありません。
ここを混ぜると、自分の感覚が分からなくなります。
「赤ちゃん型の可愛い」と「安心接近型の可愛い」は違う
かなり重要なのがこの分け方です。
赤ちゃん型の可愛い
小さい
丸い
守りたい
泣いても受け止めたい
世話したい
成長を見守りたい
この可愛さは、養育動機と近いです。
安心接近型の可愛い
無害そう
攻撃してこなさそう
受け入れてくれそう
笑顔
懐いている
嬉しそう
動きがゆっくり
触れても大丈夫そう
近づいても安心
この可愛さは、養育よりも安心・接近・受容・触覚に近いです。
人間の赤ちゃんを可愛く感じにくい人でも、安心接近型の可愛さには強く反応する場合があります。
たとえば、
- 懐いてくる犬
- ふさふさの猫
- のんびりしたカピバラ
- 嬉しそうなゴールデンレトリバー
- ゆっくり動くシェットランド・シープドッグ
- 笑顔の大人の女性
- 柔らかい雰囲気の人
- 攻撃してこなさそうな人
- 受け入れてくれそうな人
です。
これは、赤ちゃん型とは別の可愛いです。
動物が可愛い理由:毛並み・触り心地・無害感
犬猫やカピバラを可愛いと感じる時、必ずしも「大きい目」「丸い顔」を見ているわけではありません。
むしろ、次のような要素が大きいことがあります。
毛並みがよさそう
撫でたら気持ちよさそう
ふさふさしている
あたたかそう
ぼーっとして何も考えてなさそう
懐いている
嬉しそう
攻撃してこなさそう
近づいても大丈夫そう
これは、かなり触覚に近い可愛さです。
視覚的に「かわいい形」を見ているというより、
触ったら安心しそう
撫でたら気持ちよさそう
そばにいても害がなさそう
こちらを受け入れてくれそう
という予測をしている。
つまり、動物の可愛さは、触覚癒やし+無害感+懐きで成立している場合があります。
このタイプの人にとって、人間の赤ちゃんはあまり刺さらないことがあります。
なぜなら、赤ちゃんには毛並みがなく、よだれ・泣き声・要求・壊れやすさが前面に出やすいからです。
人間の赤ちゃんが刺さらない理由:よだれ・泣き声・予測不能性
人間の赤ちゃんを可愛いと思いにくい人にとって、赤ちゃんは次のように見えることがあります。
よだれがある
鼻水がある
ミルク臭がある
泣き声が大きい
いつギャン泣きするか分からない
何を求めているか分からない
止め方が分からない
壊れやすそう
抱っこが怖い
世話したいと思わない
これは、かわいいより先に警戒や負荷が立ち上がっている状態です。
乳児の泣き声は、養育者に反応を促す重要な信号です。
しかし同時に、泣き声は一部の大人にとって不快・回避したい刺激にもなり得るとされています。
つまり、泣き声は、
養育したい人にとって:
助けなきゃ、かわいそう、世話したい
苦手な人にとって:
うるさい、読めない、怖い、逃げたい
になり得ます。
同じ刺激でも、反応は人によって違います。
「ギャン泣き」は、可愛いより警報になる
赤ちゃんの笑顔でキャッキャしている姿なら、
ちょっと可愛いかも
と感じる人もいます。
なぜなら、その瞬間は、
- 嬉しそう
- 無害そう
- ポジティブ
- こちらを攻撃してこない
- 予測しやすい
からです。
しかし、ギャン泣きになると一気に変わります。
音が大きい
要求が分からない
止め方が分からない
いつ来るか読めない
周囲も気になる
自分の神経が削られる
この状態では、可愛いより先に警戒が立ち上がります。
犬でも同じです。
ふさふさで懐いている犬は可愛い。
でも、ガンガン吠えている犬は「うるさい」と感じる。
つまり、問題は赤ちゃんか犬かではなく、
無害感があるか、警報になっているか
です。
触りたいと思うかどうかも重要
可愛いには、見た目だけでなく、触覚予測があります。
たとえば、
この犬、撫でたら気持ちよさそう
この猫、ふわふわしてそう
このカピバラ、のんびりしてて触れそう
と思うと、可愛いが強まります。
一方で、人間の赤ちゃんに対して、
よだれがありそう
手がベタベタしてそう
鼻水がありそう
ミルク臭そう
触ったら汚れそう
壊れそう
泣きそう
と感じると、触りたい気持ちは出にくいです。
実際の衛生度だけで言えば、犬猫も必ずしも清潔ではありません。
でも、脳内の分類が違います。
犬猫:
毛並みを触る
赤ちゃん:
よだれ・体液・ぬめり・要求に触る
のように感じる人もいます。
この場合、犬猫の方が可愛いと思えて、赤ちゃんに触りたいと思えないのはかなり自然です。
大人の女性を可愛いと思う場合:笑顔・受容感・無害感
人間の赤ちゃんは可愛いと思わないけれど、大人の女性を可愛いと思う。
これは矛盾しません。
なぜなら、大人の女性に対する可愛いは、赤ちゃん型ではないからです。
大人の女性への「可愛い」は、たとえば次の要素で起きます。
笑顔
柔らかい雰囲気
攻撃してこなさそう
受け入れてくれそう
声
仕草
動きがゆっくり
安心感
相互性
真顔の美人を見て「美人」とは思っても「可愛い」とは思わない人がいます。
逆に、ムスッとしている美人に対して、
なんか可愛くない
むしろ不機嫌そうで嫌だ
と感じる人もいます。
これは、顔面偏差値ではなく、受け入れ感・無害感・笑顔を見ているからです。
心理学でも、笑顔は社会的なシグナルとして大きな意味を持ちます。
特に親和的な笑顔は、敵意がない・近づいてもよい・関係を作れるという信号として働きます。
つまり、大人の女性の可愛さは、
パーツではなく、安心接近の信号
として感じられている場合があります。
ディズニーやピクサーのキャラが気持ち悪く見える理由
ディズニーやピクサーのキャラには、大きい目・丸い顔・幼さ・誇張された表情など、ベビースキーマ的な要素が多く使われます。
平均的には、こうした要素は可愛さや親しみやすさを高めます。
しかし、それが全員に刺さるわけではありません。
特に、
大きすぎる目
人間っぽいのに不自然
表情が過剰
質感が気持ち悪い
触りたくない
作り物感が強い
無害感より違和感がある
と感じる人もいます。
これは、不気味の谷に近い反応かもしれません。
つまり、
大きい目
丸い顔
幼い造形
があっても、安心接近型の可愛さに入らなければ、むしろ気持ち悪く感じることがあります。
この場合、
ベビースキーマを盛れば可愛い
ではありません。
少なくとも、その人にとっては、
無害感・触覚安心・自然な笑顔・受け入れ感
の方が重要です。
ディズニーが女の子に人気な理由も、可愛いの種類で説明できる
ディズニーやピクサーが女の子に人気になりやすい理由には、いくつかの要素があります。
大きい目・丸い顔などの可愛い造形
表情が分かりやすい
プリンセス・ドレス・歌・変身
自己投影しやすい物語
ごっこ遊びしやすい世界観
安心できるハッピーエンド
グッズ展開
つまり、ディズニーの可愛さは、ベビースキーマだけではありません。
世界観、物語、歌、服、自己投影、コミュニティ、ごっこ遊びがセットです。
だから、刺さる人には強く刺さります。
一方で、ベビースキーマ的な造形や誇張表現が刺さらない人には、むしろ気持ち悪く見えることがあります。
オキシトシン寄りの可愛い:膝枕・よしよし・懐いた動物
可愛いには、ドーパミン的な「当たりそう」「興奮する」タイプもあります。
たとえば、UFOキャッチャーやパチンコは、不確実報酬・ニアミス・もう少しで取れそうという期待で報酬系を動かします。
しかし、犬猫・カピバラ・膝枕・よしよしの可愛さは、それとは違います。
こちらは、
安心する
近づいても大丈夫
触れても受け入れられる
懐いてくれる
嬉しそうにする
撫でられる
身体が落ち着く
という方向です。
これは、オキシトシンや愛着、社会的接触、安心感に近い可愛さです。
つまり、
ギャンブル報酬ではなく、安心接触報酬。
このタイプの人にとっては、赤ちゃんのベビースキーマよりも、懐いた動物や受け入れてくれる相手の方が強く刺さります。
“永遠に可愛い”は、小さな安心シグナルが何度も更新されること
「ずっと可愛いなぁ」と感じる時、それは同じ刺激が永遠に燃えているというより、小さな安心シグナルが何度も更新されているのかもしれません。
犬なら、
こっちを見る
しっぽを振る
近づいてくる
嬉しそうにする
撫でても嫌がらない
またこっちを見る
このたびに、可愛いが再起動します。
大人の女性なら、
笑顔
柔らかい声
攻撃してこない
ゆっくりした動き
受け入れ感
安心して近づける感じ
が更新されるたびに、可愛いが再起動します。
これは「顔のパーツ」よりも、関係性と反応の更新です。
だから、無表情の美人より、笑顔で柔らかい人の方が可愛いと感じる。
可愛いは静止画ではなく、安心シグナルの連続更新でもあります。
「赤ちゃんを可愛いと思わない」は子ども判断で重要な情報
ここまで見ると、人間の赤ちゃんを可愛いと思わないことは、単なる好みの問題ではありません。
子どもを持つかどうかの判断にかなり関わります。
なぜなら、赤ちゃんや乳幼児には、
- 泣く
- 要求する
- よだれがある
- 予測不能
- 会話できない
- 世話が必要
- 生活時間を大きく変える
- 自由を制限する
- 親としての責任が発生する
という要素があるからです。
もし自分の中に、
可愛い
守りたい
世話したい
泣いても受け止めたい
がほとんど起動しないなら、
自分の子なら可愛いはず
に賭けるのは危険です。
もちろん、実際に親になってから感覚が変わる人もいます。
しかし、それを前提に突っ込むのはリスクがあります。
今の自分の反応として、
赤ちゃんに対する養育報酬が低い
ギャン泣き・要求・よだれ・予測不能性がかなり負荷
動物や大人の笑顔には可愛いが出るが、赤ちゃん型には出にくい
と分かっているなら、それは重要な自己情報です。
可愛いセンサー整理シート
自分の可愛いセンサーを整理するなら、次のように分けると分かりやすいです。
1. 見た目パーツで可愛いと思うか
大きい目、丸い顔、小ささ、幼さ
2. 触覚で可愛いと思うか
毛並み、ふさふさ、撫で心地、あたたかさ
3. 無害感で可愛いと思うか
攻撃してこない、受け入れてくれそう、懐いている
4. 表情で可愛いと思うか
笑顔、嬉しそう、柔らかい雰囲気
5. 世話したいと思うか
泣いても受け止めたい、守りたい、育てたい
6. 予測不能性に耐えられるか
泣き声、要求、突然の不機嫌、止め方不明
7. 接触したいと思うか
抱っこしたい、撫でたい、触りたい、近づきたい
8. 責任ごと引き受けたいと思うか
生活時間、お金、自由、親役割、長期責任
これを見れば、自分がどの可愛いに反応しているか分かります。
まとめ:可愛いとは一種類ではない
「赤ちゃんを可愛いと思わない人」は、可愛いが分からない人ではありません。
可愛いの種類が違うだけかもしれません。
可愛いには、
ベビースキーマ型
養育型
触覚癒やし型
無害受容型
安心接近型
相互性型
があります。
人間の赤ちゃんは、ベビースキーマ型・養育型に強く反応する人には可愛く見えます。
でも、無害受容型・安心接近型・触覚癒やし型に反応しやすい人にとっては、赤ちゃんは必ずしも刺さりません。
むしろ、
ギャン泣き
よだれ
要求
予測不能
止め方が分からない
世話したいと思わない
が先に来ることがあります。
一方で、犬猫、カピバラ、ゴールデンレトリバー、シェットランド・シープドッグ、笑顔の大人の女性、膝枕よしよしには強く反応する。
これは矛盾しません。
その人の可愛いセンサーが、
小さいから守りたい
ではなく、
無害で、受け入れてくれそうで、触れても安心できそうだから可愛い
に寄っているだけです。
だから、子どもを持つかどうかを考える時は、
赤ちゃんは可愛いはず
という一般論ではなく、
自分はどのタイプの可愛いに反応するのか
赤ちゃんの泣き声・よだれ・要求・予測不能性をどう感じるのか
世話したい動機が本当にあるのか
を見る必要があります。
可愛いとは、一種類ではありません。
そして、自分の可愛いセンサーを知ることは、恋愛・子育て・動物・人生設計にかなり重要です。
可愛い反応を作っているのは、脳なのか、神経なのか、体なのか
ここまで整理すると、次に気になるのは、
可愛いと感じているのは、脳なのか。
神経なのか。
体なのか。
という点です。
結論から言うと、これはどれか一つではありません。
可愛い反応は、脳・神経・体のセットで起きている。
ただし、それぞれの役割は少し違います。
感覚入力:
目・耳・皮膚・匂いが情報を拾う
脳の判定:
これは可愛いか、無害か、怖いか、汚そうかを判断する
神経の反応:
近づいていいか、警戒するか、逃げたいか、安心できるかを決める
体の反応:
触りたい、撫でたい、近づきたい、離れたい、顔がこわばる、耳がしんどい
つまり、可愛いとは単なる頭の中の感想ではありません。
体が近づけると判断するか。
神経が安心できるか。
触った時に気持ちよさそうと予測するか。
そこまで含んだ反応です。
ベビースキーマ型は、脳の報酬系が動きやすい
研究でよく扱われるベビースキーマ型の可愛いは、かなり脳の報酬系に近い話です。
赤ちゃん顔の特徴、たとえば大きい目、丸い顔、高い額、小さい鼻や口を見ると、平均的には「かわいい」「世話したい」という反応が起きやすいとされています。
研究では、ベビースキーマが強い乳児顔を見ると、報酬処理に関わる側坐核が活性化することも示されています。
これはかなり、
赤ちゃんっぽい顔を見る
↓
脳が報酬として処理する
↓
かわいい
↓
世話したい
という流れです。
ただし、これは平均的な傾向です。
全員が同じように反応するわけではありません。
安心接近型は、神経の「近づいていい」判定が大きい
一方で、無害受容型・安心接近型の可愛いは、脳の報酬だけでは説明しきれません。
こちらは、かなり神経の安心判定が大きいです。
たとえば、犬や猫、カピバラ、ゴールデンレトリバー、シェットランド・シープドッグを見た時。
毛並みがよさそう
撫でたら気持ちよさそう
懐いていそう
攻撃してこなさそう
ぼーっとしていて無害そう
近づいても大丈夫そう
と感じる。
この時、脳は「かわいい」と言語化しているかもしれません。
でも、実際にはそれ以前に、
この対象は安全そう。
近づいてもよさそう。
触れても拒否されなさそう。
自分の神経が落ち着きそう。
という判定が走っています。
これは、単なる視覚パーツ反応ではありません。
安心して近づけるかどうかの判定です。
体の触覚予測もかなり大きい
触覚癒やし型の可愛いでは、体の予測もかなり大きいです。
たとえば、
ふさふさしてそう
撫でたら気持ちよさそう
あたたかそう
手触りが良さそう
ぎゅっとしたら落ち着きそう
という感覚です。
この場合、可愛いは見るだけでは完結していません。
見た瞬間に、体が
触ったら気持ちよさそう
と予測しています。
だから、犬猫やカピバラには可愛いが起きやすい。
一方で、人間の赤ちゃんに対して、
よだれがありそう
手がベタベタしてそう
鼻水がありそう
ミルク臭そう
触ったら汚れそう
壊れそう
泣きそう
と予測すると、触りたいではなく、避けたいになります。
これは、脳の好みだけではなく、体の接触予測です。
泣き声は、神経にとって「警報」になり得る
赤ちゃんの泣き声は、本来は養育者に反応を促す重要な信号です。
泣いている。
助けが必要。
世話をしなければならない。
この信号に対して、養育動機が強く起動する人もいます。
しかし、別の人にとっては、泣き声はかなり強いストレス刺激になります。
音が大きい
予測できない
止め方が分からない
要求が読めない
周囲にも気を遣う
自分の神経が削れる
こうなると、泣き声は「かわいい信号」ではなく「警報」になります。
だから、赤ちゃんの笑顔でキャッキャしている時は少し可愛いと感じても、ギャン泣きになると一気に「うるさい」「怖い」「鬱陶しい」になる。
これはかなり自然です。
同じ赤ちゃんでも、
笑顔:
無害そう、嬉しそう、ポジティブ、安心
ギャン泣き:
うるさい、読めない、要求、警報、負荷
で、神経の判定が変わるからです。
膝枕よしよしや懐いた動物は、オキシトシン寄りの安心接触
膝枕よしよし、頭をなでられる、懐いた動物を撫でる。
こういう反応は、ギャンブル的なドーパミン報酬とは少し違います。
パチンコやUFOキャッチャーのような、
当たりそう
取れそう
もう少しで勝てそう
という報酬ではありません。
むしろ、
近づいてもいい
受け入れられている
触れても安心
身体が落ち着く
神経がゆるむ
という方向です。
これは、オキシトシンや愛着、社会的接触、安心感に近い可愛さです。
つまり、
ギャンブル報酬ではなく、安心接触報酬。
犬猫・カピバラ・笑顔の人・膝枕よしよしに反応しやすい人は、この安心接触報酬が強い可能性があります。
人間の赤ちゃんは、安心接近ではなく警戒接近になりやすい場合がある
人間の赤ちゃんに対して、ベビースキーマ型・養育型の可愛さが強く起動する人はいます。
しかし、そうでない人にとっては、赤ちゃんは次のように見えることがあります。
かわいい対象
ではなく、
泣くかもしれない対象
要求してくる対象
触ると汚れそうな対象
壊れやすい対象
世話しなければならない対象
予測できない対象
この場合、赤ちゃんは安心接近ではなく、警戒接近になります。
近づきたいより、
近づいたら何か起きそう。
泣かれそう。
汚れそう。
責任が発生しそう。
どう扱えばいいか分からない。
が先に出る。
だから、赤ちゃんに対して「可愛い」「世話したい」が起きにくいのは、
脳のベビースキーマ報酬が弱いだけでなく、神経の警戒判定と体の接触回避が勝っている可能性があります。
可愛いは“頭の評価”ではなく“近づけるかどうか”でもある
ここまで見ると、可愛いはただの見た目評価ではありません。
可愛いとは、
見た目が好ましい
だけでなく、
近づいても大丈夫そう
触れても安心できそう
拒否されなさそう
攻撃されなさそう
自分の神経が落ち着きそう
という判定でもあります。
だから、真顔の美人を見ても可愛いと思わないことがある。
顔の造形は整っていても、
受け入れ感がない
笑顔がない
敵意や不機嫌に見える
近づいても大丈夫そうに見えない
と、可愛いには入りにくい。
逆に、笑顔で柔らかい雰囲気の人は、顔の造形以上に可愛いと感じることがあります。
これは、無害感・受け入れ感・安心接近の信号が出ているからです。
まとめ:可愛い反応は、脳・神経・体の共同作業である
可愛いを作っているのは、脳だけではありません。
もちろん、脳の報酬系は関わります。
ベビースキーマ型の可愛いでは、側坐核など報酬系の働きが重要です。
しかし、安心接近型・無害受容型・触覚癒やし型の可愛いでは、
神経が安心できるか
体が触れたいと感じるか
音や匂いや触覚が負荷にならないか
近づいても安全だと感じるか
がかなり大きいです。
だから、可愛い反応はこう考えると分かりやすいです。
脳:
これは何か、かわいいか、報酬になるかを判定する
神経:
近づいていいか、警戒するか、安心するかを判定する
体:
触りたいか、撫でたいか、避けたいか、うるさいと感じるかを反応する
つまり、
可愛いとは、脳・神経・体が一緒に出している“接近してもよい”の判定である。
人間の赤ちゃんに反応しにくい人は、赤ちゃん型の報酬が弱いだけでなく、泣き声・よだれ・要求・予測不能性によって、神経と体が「近づきたくない」と判定しているのかもしれません。
一方で、犬猫・カピバラ・笑顔の人・膝枕よしよしは、
安全そう
受け入れてくれそう
触れても大丈夫そう
神経が落ち着きそう
という判定が通る。
だから可愛い。
この違いを知ることは、子どもを持つかどうか、恋愛で何に弱いか、動物に癒やされる理由を理解する上でかなり重要です。
参考・出典
- Glocker, M. L. et al. “Baby Schema in Infant Faces Induces Cuteness Perception and Motivation for Caretaking in Adults,” Ethology, 2009. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3260535/
- Glocker, M. L. et al. “Baby schema modulates the brain reward system in nulliparous women,” PNAS, 2009. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19451625/
- Luo, L. et al. “The Cute Infantile Face: A Hormonal Link to Sensitivity to Cuteness in Infant Faces,” Psychological Science, 2015. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4505392/
- Borgi, M. et al. “Baby schema in human and animal faces induces cuteness perception and gaze allocation in children,” Frontiers in Psychology, 2014. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4019884/
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- Nittono, H. et al. “The Power of Kawaii: Viewing Cute Images Promotes a Careful Behavior and Narrows Attentional Focus,” PLOS ONE, 2012. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0046362
- Rychlowska, M. et al. “Functional Smiles: Tools for Love, Sympathy, and War,” Psychological Science, 2017. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8340880/
