説明: 「お大事に」が突き放し、「笑」が冷笑に見える。友達とのLINEが大げんかになる理由を、言葉の受け取り方と実際の反応から考える。
「お大事に」。普通なら、ここで会話が終わっても平和だ。ところが友人同士のやり取りでは、この一言から絶縁寸前の大げんかへ。発端は、片方が生理中で眠いと説明し、もう片方が体調を気遣ったことだった。どこで友情のハンドルが急に切れたのか。
「お大事に」はなぜ突き放しに聞こえた?
体調を気遣われた側は「病気じゃないよ?笑」と軽く返した。そして後に、「『お大事に』と言われて突き放されたと思った」と不安を明かす。
確かに「お大事に」には、その日の会話を締める使い方もある。相手が離れていくことに敏感な人なら、寂しく聞こえた可能性はある。でも、会話を締めることと、人を見捨てることは別だ。ここで確認したいのは「相手はどういうつもりだった?」という一点だった。
「病気じゃないよ?笑」の「笑」は冷笑だったのか
ここが最大のすれ違いだ。気遣った側は、真剣に心配したのに「笑」を付けて訂正されたことが不快だったと、後に説明している。一方、「笑」は相手を馬鹿にするためだけの記号ではない。
実際、日本語のLINEの「笑」「w」などを調べた2023年の研究では、笑いの記号に、面白さを示す・一緒に笑うよう促す・言い方を柔らかくするという働きがあると報告された。68の会話を分析した研究で、今回の二人の本心を証明するものではないが、「笑=嘲笑」と即決しない根拠にはなる。
「病気じゃないよ」とだけ送ると冷たく見えそうだから、最後に「笑」を足した。相手に嫌われたくないから角を丸めた。そんな読み方も十分できる。嫌われないために付けた「笑」が、嫌われる原因になったとしたら、文字一つに負わせる仕事が重すぎる。
気遣いを否定された怒りと、拒絶された不安が衝突
気遣った側は「もう言わない」と返し、相手はさらに突き放されたと感じて謝った。ところが、その不安の伝え方まで「勝手な思い込み」と責められ、人格の批判に発展する。
二人にはそれぞれ、確認する前に意味を決めた瞬間がある。「お大事に=拒絶」「笑=馬鹿にされた」。ただし、早合点することと、相手の人格を攻撃することは同じ重さではない。
「先にありがとうと言えば済んだ」という意見も分かる。感謝があれば、確かに火種は小さくなっただろう。しかし感謝の一言が抜けたことと、悪意があったことも別だ。
「友達のふりをした敵」なのか? 公開後の反応で変わる問題
やり取りの一部がSNSに公開された後も、投稿した側は相手への悪口を重ね、相手が返事をしないことにも不満を示した。ここでは、最初の文字の誤解より、相手が謝っても黙っても責められる状態の方が気になる。
投稿者は長年の我慢も語っている。過去に深刻な問題があった可能性は残るが、公開された会話だけで相手を「味方のふりをした敵」と決める材料には足りない。生理中の体調や、相手に嫌われたくない気持ちが関わったとしても、その人の性格や病名まで言い当てることはできない。
10年の友情より難しい、たった一文字の扱い
もし気遣いが誤解されたら、「心配して言っただけだよ」で一度確かめられる。「笑」が刺さったら、「今のは少し悲しかった」と伝えられる。休みたい人は休んでいいし、返事を一度止める自由もある。
関係を続けるか離れるかは当人たちの判断だ。ただ、私人同士の口論を広く公開してしまうと、仲直りしても相手が安心して話せる状態に戻すのは難しくなる。
「お大事に」から始まったのに、最後に必要なのが友情の応急処置になるとは。
参考資料: 高村遼「Pragmatic functions of wara in Japanese text messages」『Journal of Japanese Linguistics』39巻2号(2023年)/Katharina König「Stance taking with ‘laugh’ particles and emojis」『Journal of Pragmatics』(2019年)
