Pythonの教科書を開かずに売った人が、コード作成・テスト・公開作業をAIに任せてWebサービスを運営する。何を外注でき、何を確認すべきか。「お母さんを雇う」発想で考える。
数年前、プログラミングに興味を持ってPythonの教科書を買った。ところが、ほとんど開かずに売った。
現在はWebサービスを運営している。自分でコードを書いたことも、テストを手で動かしたことも、公開の操作を手動でしたこともない。何を作るか考え、AIに頼み、結果を評価する。
プログラミングを学ばずにWebサービスは作れるのか。新しく始める一部のプロジェクトでは可能だ。 ただし、コードを書く仕事が消えたわけではない。自分で実行する代わりに、誰に何を頼むかと、できたものが本当に動くかを考える仕事が残る。
教科書を売ったのに、サイトが育っている
一般的な順序は「勉強する→コードを書く→サービスを作る」。この例では、まず作りたいものがあった。
AIに機能を説明し、作らせ、表示を確かめ、気に入らない部分を直させる。更新や多言語の仕組みも、その繰り返しで増えていった。
本人がやるのは、必要なアカウントを開設すること、本人確認、優先順位の決定、成果の評価などだ。Pythonの文法は覚えていなくても、何が欲しいかは説明できる。
教科書の「変数とは何か」を読む前に、現実では「サービスの更新」に到達してしまった。学習の順番がバグっている。しかもプログラムは動いている。
エラーログを読んだら、やる気が消えた
開発は画面を作って終わりではない。変更すると別の機能が壊れる。テストが失敗する。公開処理が止まる。そこに大量のエラーログが出てきた。
「これ、俺が読むの?」
答えは「自分で全部読む必要はない」だった。AIにログを確認させ、原因を探し、修正と再確認まで頼む。失敗がなくなるわけではないが、人間が画面の文字列と格闘する時間を減らせる。
実際、技術を学ぶ時間より先に、AIの週ごとの利用枠を使い切ることが運営上の制限になる場合もある。人より長く動かせるから、まずはそれでいい。もちろん、これは一つの個人運営の経験で、どんな古いシステムにも当てはまるわけではない。
お母さんが準備したキッチンがないなら、お母さん役を雇う
自動テストや自動公開を「やっていて当然」と言う人への批判で、面白い料理の比喩があった。
道具も材料もそろい、買い物と下ごしらえまで済んだキッチンで料理する人は恵まれている。古いシステムを引き継いだ現場では、設備を整えるだけでひと仕事。そこを知らずに「なぜ自動化しない?」と言うのは確かに雑だ。
しかし、自分が料理人になることに興味のない人は、別の結論に飛ぶ。
「お母さんが必要なら、お母さんを雇えばいいじゃん」
お母さんとは、この話では準備をする役割の比喩だ。引っ越しの荷造りを人に頼むのと同様、開発環境の準備だってAIや専門家へ依頼できる。自動化を整える作業そのものも、頼む仕事になる。
もちろん、誰にいくらで頼むか、期待どおりに動いたか、引き継げるかは確認しなければならない。頼んだから難しさが消えるのではなく、担当者が変わるのだ。
AIが行き詰まれば、詳しい人に有償で頼む
AIが利用上限で止まることもある。何度修正しても直らない問題もある。そんなとき、自分が徹夜でプログラミングを習得する以外にも道がある。
Web開発を仕事にする知人や、適切な専門家へ相談する方法だ。必要になったら、扱える技術、空き時間、作業範囲、費用を確認して依頼する。
安さだけを追いかけるのではなく、双方が納得できる条件で仕事をお願いする。AIが解けるならAI。専門家が必要なら専門家。自分にしかできない決定は自分でやる。
コードを読まない代わりに、何を見ればいい?
最低限、三つの結果は確かめたい。
- 公開したページを実際に開き、表示と機能が正しいか。
- 更新に失敗したとき、元の状態へ戻せるか。
- 個人情報、支払い、安全に関わる部分を、別の検査や専門家が確認したか。
AIが「完了」と報告することと、利用者が正常に使えることは違う。GitHubの公式資料も、変更のたびに自動でプログラムを作って検査できる仕組みを説明している。一方、Googleの2025年のDORA調査は、AIが開発組織の強みと弱点の両方を増幅すると整理した。間違いを高速に量産する可能性もある。
結論:レシピ本は売った。厨房は動かしている
プログラミングを学ぶ楽しさも、自分で書ける強みもある。でも、欲しいのがプログラミング能力ではなく動くWebサービスなら、仕事を任せるという別の道を選べる。
昔はPythonの教科書を開かなかった。今はエラーログも開きたくない。
料理を学ぶ代わりに、厨房を用意する人を探した。しかも食材の買い出しまで外注する気でいる。
参考資料(2件)
- GitHub Docs, Continuous integration (accessed 2026-10-14): https://docs.github.com/en/actions/get-started/continuous-integration
- Google DORA, State of AI-assisted Software Development 2025: https://dora.dev/research/2025/dora-report/
