仮ルールは足場、無ルールはジャイアン猿の支配──意味のないルールより怖い「後出し無ルール」

世の中には、一見すると意味が分からないルールがあります。

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仮ルールは足場、無ルールはジャイアン猿の支配

世の中には、一見すると意味が分からないルールがあります。

なぜこの期限なのか。
なぜこの書式なのか。
なぜこの順番なのか。
なぜこの承認が必要なのか。
なぜこの制度が残っているのか。

こういうルールには、いくつかの種類があります。

本当に深い理由があるルール。
昔は意味があったが、今は前提が変わったルール。
適当に決めたけれど、なんとなく残っているルール。
誰かにとって都合がよいから残っているルール。

だから、ルールを見た時にすぐ「意味がない」と決めつけるのも危険です。

一方で、「頭のいい人たちが考えたのだから意味があるはず」と盲信するのも危険です。

ただ、現場で本当に怖いのは、意味のないルールそのものではありません。

本当に怖いのは、ルールがないのに後から採点されることです。


変なルールでも、見えるだけまだマシ

一見変なルールでも、明文化されているだけマシな場合があります。

なぜなら、見えるからです。

見えるルールは、議論できます。

  • この期限は短すぎる
  • この書式は現場に合っていない
  • この承認は不要ではないか
  • この対象範囲は広すぎる
  • この例外は追加した方がいい
  • このルールは今のシステムでは古い

このように、みんなで「妥当かどうか」を話せます。

つまり、ルールは存在するだけで、改善の対象になります。

もちろん、ルールがあるだけで正しいわけではありません。

ゴミルールもあります。

しかし、ゴミルールはまだ「どこがゴミか」を指摘できます。

ルールがあるから、比較できる。
例外が見える。
不公平が見える。
前提の古さが見える。
改善案を出せる。

だから、変なルールでも、見えるだけまだマシなことがあります。


仮ルールは足場である

完璧なルールを最初から作るのは難しいです。

現場には例外があります。

人も変わります。
業務も変わります。
システムも変わります。
後工程の事情も変わります。
顧客や関係部署の要求も変わります。

だから、最初から完璧なルールを作ろうとすると、逆に何も決まらないことがあります。

ここで大事なのが、仮ルールです。

たとえば、月次リストなら、

  • 月初5営業日時点の元資料反映済みデータを対象にする
  • 未確定者は翌月反映にする
  • 元データどおりに表記する
  • 表記変換が必要なら変換ルールを別途決める
  • 基準日以降の情報は関係部署がメールで個別対応する

このように、まず仮で決める。

この仮ルールは、最初から完璧でなくていい。

なぜなら、仮ルールは足場だからです。

足場があるから、現場は動けます。

「このルールだと9日入社者が漏れる」
「この後工程では16日までに欲しい」
「この表記だと別部署が困る」
「未確定者も参考情報として欲しい」

こういう例外が見えたら、ルールを直せばいい。

仮ルールは、改善するために置くものです。


未定義は沼である

一方で、ルールがない状態はかなり危険です。

ルールがないと、こうなります。

  • 何を対象にするか分からない
  • どこまでやるか分からない
  • 誰が決めるか分からない
  • どの資料を正とするか分からない
  • いつ時点の情報を使うか分からない
  • 例外をどう扱うか分からない
  • 何が正解か分からない
  • でも後から「違う」と言われる

これが一番きついです。

ルールがないのに、なぜか責任だけは発生する。

基準がないのに、間違いと言われる。
権限がないのに、考えろと言われる。
変更ルールがないのに、気を利かせろと言われる。
勝手に変えると怒られる。
変えないと「ただ写しているだけ」と言われる。

これはもう、仕事ではなく沼です。

未定義は自由ではありません。

未定義は、後出し採点の温床です。


ゴミルールと無ルールは違う

ここは分けて考えた方がいいです。

ゴミルールは、たしかに困ります。

目的が不明。
根拠が弱い。
現場に合っていない。
前提が古い。
負担が偏っている。
誰かにだけ都合がいい。
見直しできない。

これはゴミです。

しかし、それでもルールとして見えていれば、まだ議論できます。

「このルールはなぜあるのか」
「この期限は妥当なのか」
「この対象範囲は広すぎないか」
「この前提は今も生きているのか」
「この負担は誰に寄っているのか」

と問えます。

一方で、無ルールはそれすらできません。

何を変えればいいのか分からない。
どこが基準なのか分からない。
誰が決めたのか分からない。
何が例外なのか分からない。

だから、ゴミルールよりも、無ルール後出し採点の方が害悪な場面があります。


ルールがゴミかどうかを判定する軸

では、ルールがゴミかどうかはどう判定すればよいのでしょうか。

絶対的に良いルール・悪いルールというより、次の観点で見た方がよいです。

1. 目的があるか

何のためのルールなのか。

安全のためなのか。
公平性のためなのか。
期限管理のためなのか。
責任範囲を明確にするためなのか。
コスト管理のためなのか。
後工程を守るためなのか。

目的が説明できないルールは危険です。

2. 根拠と背景があるか

なぜその数字なのか。

なぜ2年なのか。
なぜ月初5営業日なのか。
なぜ16日までなのか。
なぜこのフォーマットなのか。

制度上の根拠なのか。
過去の運用上の都合なのか。
誰かの仮置きなのか。
なんとなく残っているだけなのか。

根拠と背景が見えると、見直しやすくなります。

3. 今も前提が生きているか

昔は妥当だったルールでも、今は合わないことがあります。

システムが変わった。
人員が変わった。
働き方が変わった。
法律が変わった。
顧客の要求が変わった。
後工程が変わった。

それでも昔のまま残っているルールは、見直し対象です。

4. 誰にメリット・デメリットがあるか

ルールは、誰かにとって都合がいいものです。

会社に都合がいい。
管理者に都合がいい。
現場に都合がいい。
労働者に都合がいい。
後工程に都合がいい。
顧客に都合がいい。

逆に、誰かに負担が寄っていることもあります。

だから、ルールを見る時は、誰にとって都合がよいのかを見る必要があります。

5. 見直しできるか

これが一番大事です。

仮ルールがゴミルールになる瞬間は、仮置きだったはずのものが、見直し期限なしで絶対化された時です。

仮ルールは足場です。

でも、足場を永久建築にしてはいけません。

定期的に見直せる。
例外が出たら修正できる。
現場からフィードバックが返る。
期限や対象範囲を変えられる。
不要なら廃止できる。

これがあるルールは、多少粗くても改善できます。

見直せないルールは、ゴミ化します。


有給休暇の「2年で消える」ルールをどう見るか

たとえば、年次有給休暇の消滅時効は2年とされています。

厚生労働省の「確かめよう労働条件」でも、年次有給休暇については消滅時効は2年のままと説明されています。

このルールを労働者目線で見ると、こう感じる人もいるはずです。

「なんで2年で消えるの?」
「働いて得た権利なのに、消えるのは納得しにくい」
「使えなかった職場環境の問題もあるのでは?」

一方で、管理側から見ると、無期限に積み上がると、人員計画・会計・引き継ぎ・取得調整が重くなるという考え方もあります。

つまり、2年というルールがあること自体は、制度運用上の意味を持ちます。

しかし、2年という長さが妥当か、職場で有給を取りやすい設計になっているか、取得できなかった責任がどこにあるかは、別に考える必要があります。

ここでも同じです。

ルールがあるから、議論できます。

  • なぜ2年なのか
  • 労働者に不利ではないか
  • 管理上の必要性は何か
  • 取得しやすい職場になっているか
  • 消える前に取得を促す仕組みはあるか

このように、ルールが見えるから検討できます。

ルールがないよりはマシです。

ただし、見直せないならゴミ化する可能性があります。


ルールは「誰にとって都合がいいか」で見方が変わる

ルールは、誰にとって都合がいいかで評価が変わります。

労働者にとって良いルール。
会社にとって良いルール。
顧客にとって良いルール。
管理者にとって良いルール。
現場にとって良いルール。

すべての人に完全に都合がいいルールは、なかなかありません。

これは、人間関係にも似ています。

「いい人」とは何か。

いい人とは、その人にとって都合がいい人という見方もできます。

同じように、いいルールとは、その人にとって都合がいいルールなのかもしれません。

だからこそ、ルールを評価する時は、単に「自分にとって不利だからゴミ」と決めつけるのではなく、次を見る必要があります。

  • 何の目的があるか
  • 誰を守っているか
  • 誰に負担が寄っているか
  • その負担は妥当か
  • 今の前提でも必要か
  • 見直しできるか

フラットに見ると、メリットも見えます。

同時に、デメリットも見えます。

この「見える」ことが大事です。


ルールがないと、声がでかい人の支配になる

ルールがない状態は、一見すると自由に見えます。

柔軟に対応できる。
その場で考えられる。
一人ひとりに合わせられる。
例外処理しやすい。

しかし、実際にはそうならないことが多いです。

ルールがないと、基準がありません。

基準がないと、誰が正しいかではなく、誰が強いかで決まります。

  • 声がでかい人
  • 立場が強い人
  • 怒る人
  • 面倒くさい人
  • 後出しで詰める人
  • 責任を押し付ける人

こういう人が、その場のルールになります。

つまり、無ルールは中立ではありません。

無ルールは、声量支配を生みます。


ジャイアン猿支配とは何か

ルールがない職場では、ジャイアン猿が支配しやすくなります。

ジャイアン猿とは、こういう存在です。

  • 強く言う
  • 後出しで詰める
  • 普通こうでしょと言う
  • 自分の都合を基準にする
  • でもルールは決めない
  • 責任は担当者に置く
  • 例外はその場で押し切る
  • 自分の言葉をルールのように扱う

ルールがあれば、

今のルールではこうです。
例外にするなら、例外条件を決めましょう。
次回から変えるなら標準を変更しましょう。

と言えます。

しかし、ルールがないと、

俺はこう思う。
普通こうだろ。
考えれば分かるだろ。
後工程を理解していない。
ただ写しているだけじゃ仕事じゃない。

で押し切られます。

これが、ジャイアン猿支配です。

無ルールは、弱い人を自由にするのではありません。

強い人の都合をルール化します。


仮ルールは、ジャイアン猿から現場を守る

だから、仮ルールには防御機能があります。

たとえば、

月初5営業日時点の元資料反映済みデータを対象にする。

と決める。

すると、こう言えます。

9日入社の人は、現行ルールでは翌月反映です。
今回だけ例外にするなら、例外条件を決めましょう。
次回以降も入れるなら、基準日を変えましょう。

これで、担当者の気配りではなく、ルールの見直しになります。

同じように、

表記は元データどおり。

と決める。

すると、

出力側で表記を変えるなら、変換ルールを決めましょう。

と言えます。

仮ルールがあるから、話を人から仕組みに戻せます。

仮ルールは、現場の足場です。

同時に、ジャイアン猿から現場を守るバリアでもあります。


良いルール・悪いルール・無ルールの違い

整理すると、こうです。

状態 特徴 評価
良いルール 目的・根拠・対象・例外・見直しがある 運用しやすい
仮ルール 粗いが見える。改善できる 足場になる
ゴミルール 目的不明、前提が古い、負担が偏る 見直し対象
見直せないルール 仮置きが絶対化している ゴミ化する
無ルール 基準がない。後出し採点になる 沼
無ルール声量支配 強い人の都合がルールになる 本当のゴミ

つまり、最悪なのは、単なるゴミルールではありません。

最悪なのは、ルールがないのに、声がでかい人がその場の正解を後出しで作ることです。


現場でまずやるべきこと

現場で必要なのは、いきなり完璧なルールを作ることではありません。

まずは仮ルールを置くことです。

たとえば、次のようにします。

  • 対象範囲を決める
  • 基準日を決める
  • 参照元を決める
  • 変更ルールを決める
  • 例外処理を決める
  • 判断者を決める
  • 見直しタイミングを決める

最初は仮でいい。

大事なのは、見えることです。

見えれば、改善できます。

見えなければ、担当者の責任になります。


まとめ:仮ルールは足場。未定義は沼。無ルールはジャイアン猿の支配。

意味のないルールには、いろいろな種類があります。

深い理由があるルール。
昔は意味があったルール。
適当に決まったルール。
誰かに都合がいいルール。
すでに前提が変わったルール。

だから、ルールを見た時は、すぐに否定するのではなく、目的・背景・根拠・前提・メリット・デメリットを見る必要があります。

ただし、ルールがない状態はもっと危険です。

ルールがなければ、自由になるわけではありません。

基準がない。
正解が見えない。
後から採点される。
声がでかい人が押し切る。
担当者が責任を吸う。
ジャイアン猿の都合が、その場のルールになる。

これが、本当のゴミです。

だから、多少粗くても仮ルールを置く。

仮ルールは足場。
ゴミルールは改善対象。
見直せないルールはゴミ化する。
未定義は沼。
無ルールはジャイアン猿の支配。

見えるルールは改善できます。

見えない正解は、責任転嫁になります。


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めんどいちゃん

この記事を書いた人

めんどいちゃん

仕事や日常の「めんどい」を構造化して、次に動きやすくする記事を書いています。

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