結婚式に出ると、なぜか他人の人生年表が急に解像度を上げる。
今回の新郎新婦は、約2年前に交際開始。約1年でプロポーズ、約1年半で入籍、約2年で結婚式。その後には、さらに1週間ほどの海外新婚旅行が控えているらしい。
きれいすぎる。
交際、プロポーズ、入籍、挙式、新婚旅行。
イベントの進行表として見ると、あまりにも順調である。
そしてその「1年半で入籍」という数字を聞いた瞬間、こちらの脳内で余計な比較装置が起動した。
「俺、1年半で別れたんだが。くそおおおおお。」
もちろん、別れたこと自体を後悔しているわけではない。
後悔していないのに比較はする。
この二つは普通に両立する。
1. 同じ「1年半」が、片方では入籍、片方では別れ
数字だけ切り出すと強烈である。
片方は交際1年半で入籍。
片方は交際1年半で終了。
同じ18か月なのに、出口が真逆だ。
ただし、ここで「早く結婚した側が勝ち」「別れた側が遅れている」と結論づけるのは違う。
交際の目的、相性、生活条件、家族観、結婚観、子ども観、仕事、金、住む場所。中身が違えば、同じ期間でも意味は違う。
筆者自身も、別れた判断をひっくり返したいとは思っていない。
それでも、目の前で友人が新郎新婦として完成形みたいに立っていると、脳は勝手に横並び比較を始める。
理屈では別物。
感情では「同じ1年半なのに!」。
このズレが面白い。
2. さらに強いのが「9年付き合って別れたあと、次は2年で結婚」
今回さらに驚いたのは、新郎新婦のどちらかに、過去に約9年付き合った相手がいたと聞いたことだった。
9年。
小学校なら入学して卒業して、まだ余る。
それだけ長い交際を終わらせ、その後の相手とは約2年で結婚まで進んだという。
外から見ると、とにかく切り替えがすごい。
「9年も付き合ったんだから、ここまで来たら続けるか」とはならなかった。
本人から聞いた範囲では、結婚をゴールとして強く意識していた一方、当時の相手の意思が固まっていないことに腹が立った、という趣旨だった。
ここは重要である。
9年付き合ったことと、今後も付き合うべきことは別問題だったらしい。
過去に何年積んだかではなく、これから同じ方向へ進めるか。
その一点で関係を切り替えたのだとすれば、かなり強い意思決定である。
3. 「遊びで付き合う気はない。付き合ったら本気で進める」
さらに本人は、次の交際について「遊びで付き合う気はない」「付き合ったら本気で進める」という趣旨のことを話していたらしい。
それを聞くと、今回の2年間の流れが一気に理解しやすくなる。
交際開始。
1年ほどでプロポーズ。
半年ほど後に入籍。
さらに半年ほど後に式。
その後、新婚旅行。
最初から結婚をかなり明確なゴールとして置いていたなら、このスピード感は単なる勢いではなく、方針通りに進めた結果とも読める。
もちろん、当事者の内面を完全に知ることはできない。
だが少なくとも、「次は曖昧なまま何年も待たない」という姿勢があった可能性はある。
9年の経験が、次の2年を速くした。
そう考えると、長い交際が無駄だったというより、次の判断基準を異常に研いだ期間だったのかもしれない。
ただし、これは筆者の解釈であって、本人の心理を断定する話ではない。
4. こちらは4か月たっても、元恋人の記憶が勝手にオートコンプリートされる
一方の筆者。
別れてから数か月たっているのに、元恋人に関する言葉や名前や場面が、たまに脳内へ勝手に出てくる。
脳内・元恋人オートコンプリートである。
その状態で「9年交際を終えて、次の相手と2年で結婚」と聞くと、そりゃ比較する。
「切り替えすげえ。俺まだ数か月で脳内に出てくるぞ。」
しかし、ここも分けたほうがいい。
思い出すこと。
戻りたいこと。
別れを後悔していること。
次へ進めないこと。
これは全部同じではない。
筆者の場合、「思い出す」はある。
でも「別れなければよかった」とは思っていない。
つまり、記憶は残っているが、意思決定は残っていない。
結婚式という巨大な比較イベントに来たせいで、普段より人生年表が頭に浮かびやすくなっているだけ、とも言える。
5. 周囲のサンプルが濃すぎる。「7年交際→結婚→式前に別離」もいる
比較装置をさらに壊しに来るのが、別の友人の人生年表である。
約7年付き合う。
結婚する。
しかし、結婚式を迎える前に関係が終わる。
本人たちの事情の詳細はここでは扱わない。
「マリッジブルーだったのでは」と外から想像することはできるが、これは推測にすぎず、原因として断定できない。
重要なのは、ここまで違うルートが現実に並んでいることだ。
9年付き合って別れる人。
その後2年で別の相手と結婚する人。
7年付き合って結婚しても、その後別れる人。
1年半付き合って別れる人。
2年で式まで行く人。
これを見ていると、「交際期間が長いほど結婚は安泰」「結婚したらゴール」という単純な一本線は、少なくとも身の回りの実例には当てはまりにくい。
人生年表、枝分かれしすぎである。
6. だから「ちゃんと式まで来た」のが妙にすごく見える
入籍しただけでも大きい。
でも、その後に式まで来ると、さらに「ここまで来たんだな」という感覚がある。
今回の二人は、交際からプロポーズ、入籍、式までを順番に進め、実際に家族や友人の前で結婚式を終えた。
過去に「入籍したけど式前に関係が終わった」という身近な例を知っているぶん、余計に「式まで来たこと」自体が一つの到達点に見える。
もちろん、式を挙げたら将来が保証されるわけではない。
ただ、その保証の話と「この日まで一緒に準備して辿り着いた」ことは別である。
少なくとも今日というイベントは、本当に成立した。
そこには素直に「すげえな」がある。
7. しかも結婚式で終わらない。次は1週間の海外新婚旅行
ここでタスク表を見る。
交際。
プロポーズ。
両家まわり。
入籍。
式場や衣装や招待客や席次や料理や写真や各種連絡。
結婚式本番。
そして、海外へ1週間ほどの新婚旅行。
忙しい。
結婚イベント、終わる気がない。
結婚式だけでも巨大案件なのに、その直後に海外旅行という別プロジェクトが積まれている。
航空券、ホテル、荷造り、現地移動、通信、金、休暇、予定。
新婚旅行という名前を付けると優雅だが、やっていることは大型旅行案件である。
「結婚って幸せそう」より先に「タスクがえぐい」が出てくるのも無理はない。
8. 「新婚旅行で別れないといいけどw」からの、「結婚後に本番テストは嫌だ」
ここまでくると、冗談でこう言いたくなる。
「新婚旅行で別れないといいけど。」
海外旅行は普段と違うことが多い。
予定はずれる。疲れる。寝不足になる。移動する。金を使う。判断が増える。
だから二人の違いが出る場面は当然あるだろう。
ただし、ここで筆者が強く感じたのは別のことだった。
「結婚したあとに相性の本番テストをしたくない。」
これはかなり切実である。
もちろん、一緒に暮らして初めて分かること、結婚後に初めて起きることはある。
全部を事前に潰すことはできない。
でも、金、家事、住む場所、仕事、子ども、親との距離、休日の過ごし方、旅行、喧嘩したときの態度など、大きな共同領域については、結婚前にできるだけ見ておきたい。
「入籍してから、実は根本的に合いませんでした」は怖い。
結婚後は未知の実験開始ではなく、ある程度分かった相手との運用フェーズであってほしい。
筆者の感覚では、そっちのほうがいい。
9. 実話として確認できること、聞いた話、筆者の解釈
ここは公開記事なので線を引いておく。
実話として扱っているのは、あるカップルが約2年の交際期間で、交際開始から約1年でプロポーズ、約1年半で入籍、約2年で式を挙げ、その後に海外新婚旅行を予定していること。
また、身近な人物について、長期交際の末に別れ、その後の交際では比較的短期間で結婚した例があること。別の人物には、長期交際から結婚したものの、式前に関係が終わった例があること。
「結婚の意思が固まらない相手に腹が立った」「遊びで付き合う気はなく、付き合うなら本気で進める」という部分は、本人から聞いた趣旨として扱っている。
一方で、「9年の経験が次の2年を速くした」「式前の別離はマリッジブルーだった」「新婚旅行が二人のテストになる」といった説明は、筆者側の解釈や一般化である。
当事者の心理や別離の原因を断定するものではない。
10. 結論:人生年表はランキングじゃない。でも比較ボタンは勝手に押される
結局、今回一番おもしろかったのはこれだった。
筆者は自分の別れを後悔していない。
それでも、友人が交際1年半で入籍したと聞けば、「俺は1年半で別れたのに」と思う。
9年付き合って別れた人が、その後2年で結婚したと聞けば、「切り替えすげえ」と思う。
7年付き合って結婚したのに式前に別れた人を思い出せば、「結婚まで行ってもそうなるのか」と思う。
そして目の前の二人がちゃんと式まで来て、さらに新婚旅行へ向かうと、「タスクえぐい。でもここまで来たのすげえ」と思う。
全部同時に成立する。
他人の人生年表は、自分の人生を採点するためのランキング表ではない。
しかし結婚式という場所は、ときどき勝手に比較ボタンを押してくる。
理性は「別物だ」と分かっている。
感情は横で「くそおおおおお」と叫んでいる。
まあ、それくらいでいい。
後悔していないなら、比較して笑って、飯を食って、友人を祝って帰ればいいのである。
