『VIVANT』は全員化け物なのに、1話からうんこまみれで始まるのが最高な理由

乃木憂助だけでなく、野崎守もドラムもベキも全員が化け物級に有能。なのに第1話は汚物まみれの逃亡劇から始まる。そのギャップから『VIVANT』の異常な面白さを考察する。

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※この記事は『VIVANT』第1シーズン最終話までのネタバレを含みます。

結論:『VIVANT』は「普通の人が化け物に巻き込まれる話」ではない

『VIVANT』を見返すと、初見の印象がかなり変わる。

最初は、

  • 乃木憂助:巻き込まれた商社マン
  • 野崎守:頼れる公安
  • ドラム:謎に有能な相棒
  • バルカ警察:怖い追跡者
  • テント:得体の知れない敵

くらいに見える。

でも最終話まで見たあとに第1話へ戻ると、話が違う。

これは「一般人の乃木が、公安やテロ組織に巻き込まれる話」ではない。
化け物同士が、普通の人の顔をして、互いの正体と情報量を探り合う話だった。

しかも、その化け物ドラマが第1話からやることが、砂漠、爆破、国際逃亡、公安、諜報戦だけではない。

汚物まみれの逃亡劇である。

ここが『VIVANT』のすごいところだと思う。

1話から「金のかかったうんこ」なのが狂っている

『VIVANT』第1話は、画面のスケールだけ見ると完全に映画級だ。

架空国家バルカ。
広大な砂漠。
爆破事件。
警察からの逃亡。
大使館への突破。
阿部寛、堺雅人、二階堂ふみ、役所広司、二宮和也という主役級キャスト。

普通なら、ここはひたすら格好よく見せたくなる。

でも『VIVANT』は違う。
逃亡の中に、かなり泥臭い、というか身もふたもない汚れ方を入れてくる。

これがめちゃくちゃ良い。

なぜなら、作品が最初からこう言っているように見えるからだ。

これは、きれいなスパイごっこではない。
生きるためなら汚れるし、逃げるためなら何でも使う。
しかも、その中で腹の探り合いも続く。

つまり第1話の汚れ方は、単なるギャグではない。
『VIVANT』という作品のルール説明でもある。

この世界では、超有能な人間たちが、超格好いい任務だけをやっているわけではない。
泥、汗、汚物、失敗、焦り、事故、偶然、死にかけ、その全部を抱えながら、それでも任務ラインへ戻していく。

だから第1話の乃木は、ただのポンコツにも見える。
でも見返すと、そこに別の怖さが出てくる。

初見の乃木:巻き込まれた商社マン

初見の乃木は、かなり危なっかしい。

誤送金された130億円を取り戻すためにバルカへ向かい、爆発事件に巻き込まれ、爆破犯に間違われ、バルカ警察に追われる。TBS公式の前作あらすじでも、乃木はバルカで野崎や薫とともに脱出へ奔走した人物として整理されている。[^tbs-story]

この時点では、視聴者の目にはこう見える。

  • 砂漠で死にそうになる
  • タクシーでもやらかす
  • 野崎に助けられる
  • 薫も巻き込まれる
  • ドラムがいなければ終わっている
  • ずっと焦っている
  • ずっと困っている

つまり、かなり「巻き込まれた側」に見える。

でも最終話まで見たあとだと、この見え方が変わる。

乃木は本当に焦っている。
本当に死にかけてもいる。
本当に失敗もしている。

ただし、それでも大枠では任務の中にいる。

ここが怖い。

再視聴の乃木:焦っている顔のまま盤面を見ている

『VIVANT』の怖さは、乃木が「全部を完全に仕組んでいた」ことではない。

むしろ逆だと思う。

砂漠で死にそうになるのは、たぶん普通にギリギリ。
逃亡も、普通に危ない。
タクシーの件も、盤面としてはかなり事故に近い。

それでも乃木は、ただパニックになっているだけではない。

  • 公安がどこまで知っているかを見る
  • 野崎がどれくらい鋭いか測る
  • 自分の正体をどこまで隠せるか判断する
  • 逃げるか、あえて一緒に行動するかを選ぶ
  • Fという別人格的な内側の声も含めて、別の階層で状況を評価する

この「焦っている顔」と「任務計算」が同時に走っている感じが、乃木の一番怖いところだ。

普通の人は、命の危険が迫ると「助かるか、死ぬか」だけになる。
乃木は違う。

助かるか、死ぬか。
相手は何を知っているか。
誰を利用できるか。
どこまで正体を隠すか。
任務ラインへどう戻すか。

これを同時にやっている。

だから、乃木はサイコパスというより、感情のある人間の顔を残したまま、任務用の思考を別の箱で動かせる化け物に見える。

野崎は「99%黒」でも言わないのが強い

第1話から見返して面白いのは、野崎がずっと乃木を疑っていることだ。

野崎は、乃木を完全な白だと思って協力しているわけではない。
おそらくかなり早い段階から、

こいつ、普通の商社マンではない。
でも今ここで詰めたら逃げる。

と見ている。

ここで野崎がすごいのは、疑っていることそのものではない。
疑っているのに、疑っていないふりができることだ。

刑事ドラマなら、ここで「お前、何者だ?」と詰めたくなる。
でも相手は乃木である。
もし野崎がそこで強く踏み込めば、乃木は逃げる。

だから野崎の正解は、

  • 詰めない
  • 言わない
  • 隣に置く
  • 観察する
  • 協力する
  • 必要な局面までカードを切らない

だった。

これが公安っぽい。

現実の警視庁の公安警察も、公式には国際テロ組織、過激派、右翼などによるテロ・ゲリラの未然防止、違法行為の取締り、拉致容疑事案、対日有害活動、サイバー攻撃、NBCテロなどを扱う部門として説明されている。^mpd-public-safety

つまり、公安は「起きた事件の犯人を捕まえる」だけではなく、背後関係、組織、人脈、情報の流れ、まだ表に出ていない危険を見る仕事に近い。

野崎はまさにそれをやっている。
乃木を犯人として詰めるのではなく、乃木という異常な存在を盤面に残す。
逃がさず、敵にもせず、情報源にもして、相互監視のまま共闘する。

普通の有能は、見抜く。
野崎は、見抜いたあとに、見抜いていないふりができる。

これが化け物である。

全員化け物。ただし乃木は化け物の中でも化け物

『VIVANT』は、乃木だけが特殊な作品ではない。

周囲もだいたい化け物である。

乃木憂助

弱そうな商社マンとして成立している。
でも実際は別班の諜報員であり、Fという別人格的な存在も抱えている。

しかも、表の乃木とFが単純な「弱い人格」「強い人格」に分かれているわけではない。

乃木本体も有能。
Fも有能。
優しさも本物。
任務判断も本物。
父への情も本物。
切断判断も本物。

だから怖い。

野崎守

公安として、違和感を捨てない。
99%黒でもすぐには詰めない。
疑っている相手と一緒に動ける。
利用されていること込みで、相手を利用できる。

野崎は「正義の味方」というより、公安のプロとして化け物である。

ドラム

喋らないのに、判断と実行が速すぎる。
運転、逃亡、連絡、現地対応、野崎の補助、どれも異常に安定している。

ドラムがいなかったら、かなりの場面で詰んでいる。

黒須

乃木に振り回されても任務を続ける別班員。
感情はあるが、現場対応力もある。
乃木に対する不信や怒りを抱えながらも、完全には崩れない。

ベキ

孤児を救う父性と、組織を作る能力と、復讐心を同時に持っている。
思想家でもあり、組織運営者でもあり、父親でもあり、危険人物でもある。

ノコル

感情的に見えるが、テントの実務を回している時点で普通ではない。
ベキへの忠誠、乃木への嫉妬、組織運営、全部を抱えている。

こう見ると、『VIVANT』は本当に「全員化け物」だ。

ただし、その中でも乃木は一段おかしい。

なぜなら、他の化け物は、最初からそれっぽく見えるからだ。

野崎は公安っぽい。
ベキは大物っぽい。
黒須は別班っぽい。
ドラムは有能相棒っぽい。

でも乃木だけは、初見では本当に「砂漠で死にかける商社マン」に見える。

弱そうに見える人間が、一番深いところで盤面を作っている。

これが一番怖い。

Fがいるから、乃木はさらに異常に見える

乃木の異常さを強めているのが、Fの存在だ。

Fは、乃木の中の別人格的な存在として描かれる。
ただの幻覚やギャグ演出ではなく、乃木の判断、警戒、任務遂行の別レイヤーとして機能している。

福澤克雄監督は、堺雅人でなければ乃木の別人格Fは出さなかった、続編ではFをもう少し増やすかもしれない、という趣旨の発言をしている。^cinematoday-f

この発言が面白いのは、制作側もFをただのネタではなく、乃木というキャラクターの中核として見ているように読めるところだ。

乃木は、Fがいるから強いのではない。
Fがいなくても乃木は有能で、Fがいることでさらに層が増えている。

つまり、

  • 表の乃木
  • 任務中の乃木
  • F
  • 父を求める乃木
  • 別班として切断できる乃木

が、同じ人物の中で同時に存在している。

このレイヤーの多さが、乃木を「化け物の中でも化け物」にしている。

それだけ金をかけて、最初に汚物逃亡をやる胆力

『VIVANT』は制作規模の面でもかなり異例だった。

MANTANWEBによると、TBSの改編発表会で「1話の制作費が1億円は本当か」と質問され、TBS側は制作の中身は答えられないとして明言を避けている。つまり「1話1億円」は確定情報ではなく、あくまで報道・噂として扱うべきだ。[^mantan-budget]

一方で、モンゴルロケの大きさはかなり具体的に確認できる。
モンゴルでの撮影をコーディネートしたWAYOの事例紹介では、『VIVANT』のモンゴル撮影が約2カ月半に及び、約3000頭のヤギなど多くの動物も含まれていたこと、さらにモンゴル文化省の映画制作費払い戻し制度が初めて適用された事例だったことが紹介されている。[^wayo-mongolia]

また、福澤監督も続編関連の取材で、海外ロケなどで費用がかかる作品ではあるが、配信ドラマに負けないようにある程度は使った、という趣旨の発言をしている。^cinematoday-f

つまり、少なくとも『VIVANT』が地上波ドラマとしてかなり大きな勝負だったことは間違いない。

そして、その大きな勝負の第1話で、主人公を汚物まみれにする。

これはかなりすごい。

普通なら、金をかけた画はきれいに見せたい。
海外ロケ、砂漠、爆破、豪華俳優、国際諜報、全部を格好よく配置したい。

でも『VIVANT』は、きれいなスパイ作品に寄せきらない。
むしろ、汚くて、泥臭くて、失敗して、死にかけて、それでも頭脳戦が続く世界を見せる。

だから第1話が強い。

『VIVANT』の面白さは、格好よさと汚さが同居していること

『VIVANT』は、設定だけならかなり格好いい。

別班。
公安。
国際テロ組織。
謎の言葉「VIVANT」。
父と子。
裏切り。
潜入。
国家。
衛星監視。
諜報戦。

でも、実際の画面はそれだけではない。

砂漠で死にかける。
タクシーでやらかす。
汚物まみれで逃げる。
焦る。
叫ぶ。
汗をかく。
泥臭く走る。

このギャップがいい。

なぜなら、現実の危機対応や情報戦も、たぶん「きれいなチェス」だけではないからだ。
実際には、事故、誤解、汚れ、体力、運、現場判断、変な人間関係、失敗のリカバリーが混ざる。

『VIVANT』は、それをエンタメとしてかなり濃く見せている。

だから、1話からうんこまみれなのは、むしろ正しい。

この作品は、最初から視聴者に言っている。

ここから先は、きれいな諜報ドラマではありません。
汚れても、死にかけても、疑われても、まだ裏で盤面が動き続けます。

まとめ:乃木は一番ヤバい。でも野崎もドラムも全員ヤバい

『VIVANT』を見返すと、乃木だけが化け物なのではないと分かる。

野崎も化け物。
ドラムも化け物。
黒須も、ベキも、ノコルも、それぞれ別ジャンルの化け物。

ただし乃木だけは、化け物の中でもさらにおかしい。

理由は、弱そうに見えるからだ。

最初は、ただの商社マンに見える。
砂漠で死にかけ、タクシーでやらかし、汚物まみれで逃げる人に見える。
でもその裏で、別班としての任務、Fの判断、公安への観察、父への感情が同時に走っている。

だから怖い。

強そうな人が強いのは分かる。
でも、弱そうな人が一番深いところで盤面を作っていたら、もうホラーである。

『VIVANT』第1話は、金のかかった大作なのに、初手から汚い。
でも、その汚さこそがこの作品の本質だった。

全員化け物。
乃木はその中でも化け物。
そして、その化け物たちは、うんこまみれの逃亡劇から始まる。

それが『VIVANT』の最高におかしいところだ。


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  • 『VIVANT』第1話を再視聴すると怖い理由:巻き込まれ商社マンに見えた乃木の裏側
  • 『VIVANT』はなぜ地上波ドラマなのに映画級に見えたのか:モンゴルロケと制作費報道

公開時の注意点

  • 「1話1億円」は確定情報ではなく、報道・噂・質問ベースとして扱う。
  • 汚物シーンの表現は、媒体のトーンに合わせて「うんこまみれ」「汚物まみれ」「泥臭い逃亡劇」を使い分ける。
  • 作品内容は最終話までのネタバレを含むため、冒頭にネタバレ注意を置く。
  • 公安や別班については、実在組織とフィクションを混同しないようにする。
  • 職場・政治・実在人物批判に寄せず、あくまでドラマ考察として公開する。

参考・確認ソース

[^tbs-story]: TBSテレビ 日曜劇場『VIVANT』あらすじ。乃木が誤送金回収のためバルカへ向かい、爆破犯に間違えられ、野崎や薫と脱出に奔走したこと、さらに本当の顔が別班の諜報員だったことが整理されている。
https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/story/

https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/saiyo/type/public-safety.html

https://www.cinematoday.jp/news/N0149267

[^mantan-budget]: MANTANWEB「TBS:『VIVANT』事前PRナシが『功を奏した』 『1話1億円』の制作費のうわさは『想像していただけたら』」。TBS側は「1話の制作費が1億円は本当か」という質問に明言を避けている。
https://mantan-web.jp/article/20230831dog00m200052000c.html

[^wayo-mongolia]: WAYO Holding「Coordination for filming in Mongolia」。『VIVANT』のモンゴル撮影コーディネート事例として、約2カ月半の撮影、約3000頭のヤギ、モンゴル文化省の映画制作費払い戻し制度が初適用されたことなどが紹介されている。
https://www.wayoholding.co.jp/en/projects/location/

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