日曜日にカレーを大鍋で作った。
月曜日はうまい。火曜日もうまい。水曜日、少し飽きる。
そして金曜日の夜、冷蔵庫の奥で、ふたの曇ったタッパーと目が合う。
「これ、いつのだっけ?」
ふたを開けて、鼻を近づける。
「……たぶん大丈夫」
この「たぶん」で食べていいのか。今日はその話である。
0. 結論:冷蔵庫の残り物は「3〜4日」がひとつの目安
米国農務省の食品安全検査局(FSIS)は、調理済みの残り物は冷蔵庫で3〜4日、冷凍なら3〜4か月を目安にしている。[1]
日本の厚生労働省は日数を一律には示していないが、残った食品について「時間が経ち過ぎたら、思い切って捨てましょう」と書いている。[2]
つまり日曜日のカレーは、
- 月曜日:安心
- 水曜日:そろそろ締め切り
- 金曜日:締め切りを過ぎた
という扱いになる。
もちろん3〜4日は「この日までは絶対安全」という保証ではない。保存の仕方が悪ければ、もっと早く危なくなる。逆に言えば、正しく保存した場合の上限の目安である。
1. 匂いチェックが当てにならない理由
ここが一番大事な話だ。
食べ物に関わる菌には、ざっくり2種類ある。
- 腐敗菌:食べ物を傷ませて、変な匂い、ぬめり、味の変化を起こす
- 病原菌:食中毒を起こす
FSISによると、食中毒を起こす病原菌は、一般に食べ物の味や匂いや見た目を変えない。[3]
つまり、
「匂いは普通」=「安全」ではない。
鼻が教えてくれるのは「傷んでいるかどうか」の一部だけで、「食中毒の菌がいるかどうか」はほぼ分からない。
鼻は品質管理部としては優秀だが、警備部ではない。
さらに、リステリアという菌は冷蔵庫の低い温度でも増えることがある、とFSISは注意している。[3] 冷蔵庫は「菌を止める箱」ではなく、「増えるのを遅くする箱」と考えたほうが正確だ。
2. 冷蔵庫に入れる前の2時間が勝負
日数を数える前に、もうひとつ時計がある。
FSISは、調理した食べ物は2時間以内に冷蔵庫へ入れるよう勧めている。気温が32℃(90°F)を超える日は1時間以内だ。[1]
菌が増えやすいのは、だいたい4〜60℃(40〜140°F)の範囲とされる。[1]
鍋ごと台所に置いて「冷めてから入れよう」と寝てしまうと、朝までずっとこの温度帯にいることになる。
大鍋のカレーで気をつけたいのはここだ。量が多いと、中心がなかなか冷えない。
厚生労働省もFSISも、浅い容器に小分けして早く冷やすことを勧めている。[1][2]
大鍋のまま冷蔵庫に入れるより、平たいタッパー数個に分けたほうが早く冷える。
3. 冷蔵庫の温度と、詰めすぎ問題
冷蔵庫そのものの温度も大事だ。
基準の数字は国によって少し違うが、「しっかり冷えていること」が前提なのは同じである。
そして厚生労働省は、冷蔵庫や冷凍庫に詰める量は7割程度が目安としている。[2] ぎゅうぎゅうに詰めると冷気が回らず、奥のほうが冷えにくくなる。
冷蔵庫の奥でタッパーが行方不明になる原因も、だいたいこの詰めすぎである。
4. 冷蔵庫の奥から出てきたタッパーは「考古学の出土品」
ふたが曇っていて、中身の正体が分からない。いつ作ったかも思い出せない。
これはもう食べ物ではない。
出土品である。
考古学者なら年代測定ができるが、家庭の冷蔵庫にそんな装置はない。
作った日が分からない残り物は、匂いを嗅いでも年代は分からない。厚生労働省の言葉どおり、「ちょっとでも怪しいと思ったら、食べずに捨てましょう」が正解だ。[2]
発掘調査を減らすコツは単純で、
- ふたにマスキングテープで作った日を書く
- 古いものを手前、新しいものを奥に置く
- 3日目に食べ切れなさそうなら、その時点で冷凍に回す
FSISによれば、冷凍すれば3〜4か月は目安の範囲だ。[1] 水曜日に「もう飽きた」と思ったカレーは、捨てる前に冷凍庫へ避難させればいい。
5. 温め直しは「中までしっかり」
食べるときは、温め直しにも目安がある。
電子レンジは加熱ムラが出やすい。表面がぐつぐつでも中心がぬるいことがあるので、途中で一度かき混ぜると安心だ。
ただし、温め直せば何でも元通りになるわけではない。日数が過ぎたものや、常温に長く放置したものは、温め直しで救おうとせず捨てる、と考えておくほうが安全である。
6. まとめ:作り置きのルールは3つだけ
作り置きは、平日の自分を助ける最高の仕組みだ。
ただし、そのための約束は3つある。
- 2時間以内に冷やす(浅い容器に小分け)
- 3〜4日で食べ切る(無理なら早めに冷凍)
- 迷ったら捨てる(匂いは判定に使わない)
金曜日の夜、冷蔵庫の奥のタッパーと目が合ったら、こう言えばいい。
「出土品は博物館へ。つまり、ゴミ箱へ」
そして次の日曜日からは、ふたに日付を書こう。
健康メモ
食後に強い腹痛、嘔吐、下痢、発熱などが続く場合や、小さな子ども、高齢の人、妊娠中の人が症状を出した場合は、早めに医療機関に相談してほしい。[2]
参考資料(3件)
- USDA Food Safety and Inspection Service — “Leftovers and Food Safety fsis.usda.gov
- 厚生労働省 — 「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」 mhlw.go.jp
- USDA Food Safety and Inspection Service — “Refrigeration & Food Safety fsis.usda.gov
