若者は自分の不快に敏感で他人の不快に鈍感? 世代論の研究と怒鳴る指導の影響を踏まえて、批判が自分に返ってくる構図を考える。
「相手の気持ちを考えろ」と言いながら
SNSでよく見る批判がある。若手は怒鳴られると嫌がるが、先輩が困っていることには無頓着だ、と。たしかに、自分に配慮を求めながら他人に仕事を押しつける人がいれば、それは問題だ。
ところが、同じ人が「怒鳴られる程度で嫌がるなんて甘い」と言い出すと、話は一気に面白くなる。「他人の不快感を尊重しろ」というルールから、若者の不快感だけを勝手に除外しているからだ。
「相手の気持ちを考えろ」選手権、主催者が開会式で失格。 これが今回のブーメランである。
Z世代固有だと言えるのか?
職場の世代差をまとめたメタ分析では、幅広い仕事の態度や行動において、体系的で意味のある差はほとんど見つからなかった。[1] 論文は2024年にオンライン公開され、2025年の学術誌号に掲載された。もちろん、全員の共感能力が等しいと証明したわけではない。しかし、特定の困った人を見て数百万人の性格を決めるのは飛躍だ。
そもそもミレニアル世代も2010年には「自己中心的」「意欲がない」「無礼」と批判されていた。[5] 「最近の若者」はキャストが入れ替わる長寿ドラマである。
米国の成人3,458人を対象に含む五つの研究では、人は自分が得意と考える性質ほど現代の若者が劣ると感じやすく、過去の記憶も美化されやすかった。[2] 昔の自分は美肌補正した卒業アルバム、今の新人は失敗の瞬間を切り取った防犯カメラ。そりゃ勝負にならない。これは研究を説明する比喩であり、個々の投稿者の心理を診断するものではない。
不快感の尊重と、要求の正当性は別
新人が納期を変更したのに報告しない。上司が困って報告と改善を求めるのは当然だ。一方、上司が大声で威圧する。新人が「普通の声で説明してほしい」と求めるのも当然だ。
「納期の変更を共有して」と「怒鳴られても耐えて」は、どちらも不快を理由にした発言だが、要求の中身は対等ではない。
「昔は教師に殴られて育ったから強い」という話も同様。WHOは2025年に子どもへの体罰の害を整理した。[3] また2026年の39研究・32,909人のメタ分析では、虐待的な指導は仕事の成果や従業員の状態などの悪化と関連していた。[4] 苦労をした経験と、苦労を他人へ配布する権利は別売りだ。
年齢を隠しても同じ判断ができるか
仕事で実際に何が起きたか、誰が困ったか、何を直す必要があるかを見ればいい。若手が無責任ならその行動を改善し、上司が怒鳴るならそれも改善する。年齢が逆でも同じ基準を使う。
「私たちの気持ちも理解してほしい」。いい主張だ。では、その「私たち」に、目の前の相手も入れてください。
参考資料(5件)
- Ravid, Costanza & Romero (2025 journal issue, online 2024), Generational differences at work? https://doi.org/10.1002/job.2827
- Protzko & Schooler (2019), Kids these days: Why the youth of today seem lacking (five studies, N=3,458). https://doi.org/10.1126/sciadv.aav5916
- WHO (2025), Corporal punishment of children: the public health impact. https://www.who.int/publications/i/item/B09424
- Singh, Gupta & Sarda (2026), Cascading effect of abusive leadership on employee and organizational outcome (39 studies, N=32,909). https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2026.106312
- Myers & Sadaghiani (2010), Millennials in the Workplace. https://doi.org/10.1007/s10869-010-9172-7

