人間関係の話で、こういう言説を見かけることがある。
「私が悪い」と自責している人も、結局は自分のことしか見ていない。
自分を責めていれば無罪になるわけではない。
それも自己中心的だ。
この指摘には、一部当たっているところがある。
たしかに、「自分が悪い」と言いながら、相手への影響を見ない人はいる。
自責しているようで、実際には相手と向き合わず、何も説明せず、突然消える人もいる。
自分の内側の苦しさだけで完結して、相手に何が起きたかを見ないなら、それは問題になる。
ただし、ここで大事なのは、自責している人をさらに責めても、問題は解決しにくいということだ。
「ジブンガージブンガーで自己中だ」と言っても、その人が急に相手を見られるようになるとは限らない。
むしろ、
自分が悪い
↓
そんな自責も自己中だと言われる
↓
さらに自分を責める
↓
恥・反芻・回避が強くなる
↓
結局、行動には進まない
というループに入る可能性がある。
問題は、自責そのものではない。
問題は、自責が行動・対話・境界線・距離調整に変換されないことである。
「自責していれば無罪」ではない
まず、ここは分ける必要がある。
「自分が悪い」と思っているからといって、相手への影響が消えるわけではない。
たとえば、回避的な行動で相手を混乱させた。
説明せずに距離を取った。
突然連絡を断った。
相手に不安や不信感を残した。
その場合、
自分は自己肯定感が低かった
相手を不快にしたくなかった
自分が悪いと思っていた
という内面があっても、相手が受けた影響は残る。
ここで必要なのは、
自分はなぜそうしたのか
相手には何が起きたのか
次に何を変えるのか
説明や謝罪は必要か
今後どう距離を取るのか
を見ることだ。
つまり、自責はスタート地点にはなる。
でも、ゴールではない。
でも「自責してる人を責める」だけでも何もならない
一方で、自責している人に対して、
自分が自分がって言ってるだけ
それも自己中
自分を責めてればいいと思ってる
と責めても、実務的にはあまり進まない。
なぜなら、それは新しい行動を示していないからだ。
自責している人に必要なのは、さらに恥を増やすことではない。
必要なのは、問いを変えることだ。
誰が悪いか
↓
何が起きたか
自分が悪いか
↓
自分が変えられる部分はどこか
相手が悪いか
↓
相手に働きかける余地はあるか
関係を続けるべきか
↓
距離を置くべき段階か
責めるだけでは、この変換が起きない。
だから、「自分が悪い」と言っている人を見たときに大事なのは、
自責を否定することではなく、自責を行動に変換すること
である。
自責・他責・関係責任を分ける
人間関係の問題は、だいたい一人だけの問題ではない。
多くの場合、
自分の問題
相手の問題
関係の問題
タイミングの問題
環境の問題
伝え方の問題
期待値のズレ
が混ざっている。
だから、フラットに見るならこうなる。
自分に悪いところがある
→ 直せるなら直す
相手にも悪いところがある
→ 見てもいい
働きかけられることがある
→ 話す、伝える、調整する
それでも無理
→ 距離を置く
これでいい。
他人様のことはコントロールできない。
でも、働きかけはできる。
話す。
説明する。
お願いする。
境界線を伝える。
条件を出す。
距離感を調整する。
それでも効かないなら、距離を置く。
この段階まで来たら、もう、
自分が悪いのか?
相手が悪いのか?
という会議は終了している。
必要なのは、原因探しではなく、距離と行動の設計である。
自責ループが危ない理由
自責が危ないのは、行動に進まないときだ。
自分が悪い
↓
でも何を変えるか分からない
↓
相手に何を伝えるか分からない
↓
また自分が悪いと思う
↓
つらくなる
↓
逃げる
↓
相手が混乱する
↓
また自分が悪いと思う
これが自責ループである。
このループでは、本人は苦しんでいる。
しかし、相手から見ると、何も改善されていない。
だから、相手はこう感じる。
反省してるなら、なぜ説明しないの?
悪いと思ってるなら、なぜ次を変えないの?
相手のためと言いながら、なぜ勝手に消えるの?
ここで関係が壊れやすい。
自責そのものが悪いのではない。
自責が行動に変換されないことが問題である。
羞恥と罪悪感は違う
心理学では、羞恥と罪悪感は区別されることが多い。
かなり雑に言うと、
羞恥
= 自分はダメな人間だ
罪悪感
= 自分のこの行動がよくなかった
羞恥は、回避・撤退・隠れる方向に行きやすい。
罪悪感は、修復・謝罪・改善に向かいやすいとされることがある。
もちろん、現実には単純ではない。
羞恥が修復行動につながることもあるし、罪悪感が強すぎて潰れることもある。
ただ、人間関係で使いやすい区別はこれだ。
自分はダメだ
→ 動けない、逃げたい、消えたい
自分のこの行動はよくなかった
→ 次はこう変える、謝る、説明する
目指すべきは、人格否定ではなく行動修正である。
自責を行動に変える6ステップ
自責ループに入ったときは、次の6つに分けるとよい。
1. 事実
まず、何が起きたかを書く。
連絡を返さなかった。
急に距離を置いた。
説明せずに終わらせた。
相手に強い言い方をした。
感情ではなく、事実を書く。
2. 影響
次に、相手に何が起きたかを見る。
相手が混乱した。
相手が不安になった。
相手が拒絶されたと感じた。
相手が理由を分からないまま残された。
ここで初めて、相手の視点を見る。
3. 自分の修正点
次に、自分が変えられる部分を書く。
次回は突然消えず、一言説明する。
返信できない時は「今は返せない」と伝える。
限界になる前に距離を取りたいと伝える。
4. 相手への働きかけ
相手にできる働きかけを見る。
謝る。
説明する。
今後の距離感を相談する。
嫌だったことを伝える。
無理なことは無理と言う。
5. 相手の反応
相手がどう反応するかを見る。
聞いてくれる。
改善してくれる。
一部だけ受け取る。
攻撃してくる。
無視する。
変わらない。
ここは自分ではコントロールできない。
6. 距離調整
最後に、距離を決める。
続ける。
少し距離を置く。
連絡頻度を下げる。
境界線を置く。
関係を終える。
ここまで来ると、もう「自分が悪いのか相手が悪いのか」だけではない。
関係をどう扱うかの段階になる。
相手をコントロールできないが、働きかけはできる
この整理で大事なのは、相手をコントロールしようとしないことだ。
相手を変えることはできない。
でも、働きかけはできる。
伝える
頼む
謝る
説明する
境界線を置く
条件を出す
距離を取る
ここまでは自分の範囲でできる。
その後、相手がどうするかは相手の範囲である。
相手が聞いてくれたら、関係は調整できるかもしれない。
相手が聞かないなら、距離を置くしかない。
このときには、もう自責ループは終わっている。
自分ができることはした。
相手の反応も見た。
これ以上は相手の領域。
だから距離を置く。
これでいい。
「自分が自分が」を責めるより、問いを変える
自責している人に対して、有効な問いはこうだ。
自分が悪いと思っているのは分かった。
では、次に何を変える?
相手には何が起きたと思う?
一言説明するとしたら、何を伝える?
働きかける余地はある?
相手が変わらなかったら、どの距離にする?
これは謝罪の問題?境界線の問題?撤退の問題?
この問いなら、行動に進みやすい。
逆に、
それも自己中だよ
自分が自分がって言ってるだけだよ
自責してれば許されると思ってるの?
は、刺さることはあるかもしれないが、行動には進みにくい。
反省を増やすより、次の一手を増やす方が大事である。
一言でまとめると
自責していれば無罪ではない。
相手への影響を見ない自責は、関係を壊す。
でも、自責している人をさらに責めても、問題は解決しにくい。
必要なのは、自責を行動に変換することだ。
自分に悪いところがあるなら直す。
相手の問題も見る。
働きかける。
効かなければ距離を置く。
その時点で、自分が悪いのか相手が悪いのか会議は終了。
これが一番フラットで、現実的な整理だと思う。
「ジブンガージブンガー」を責めても、あまり変わらない。
大事なのは、
自分が悪いかどうかではなく、次に何をするか。
である。
