ポケモン対戦をかなり真面目に検証していくと、最終的に少し冷める瞬間がある。
型を集める。
育成論を読む。
構築を組む。
相手の6体を入れる。
こちらの6体を固定する。
出す3体と初手を計算する。
大量にシミュレーションする。
そうすると、かなり強そうな構築でも、環境平均の勝率はだいたい54〜55%くらいに収束していく。
もちろん、弱い相手に当たればもっと勝てる。
メタが刺されば60%を超えることもある。
短期なら上振れで70%勝つこともある。
でも、強い人同士、強い構築同士、ある程度メタが回った環境で見ると、結局は50%台前半〜中盤の数%差を取り合うゲームになりやすい。
つまり、ポケモン対戦は最終的に、
数%のエッジを、試行回数で回収するゲーム
になる。
これは麻雀やポーカーやトレードにかなり近い。
1戦1戦は運が絡む。
読み合いもある。
型の噛み合いもある。
急所もある。
命中不安もある。
選出ミスもある。
だから、1戦単位では全然安定しない。
でも、大量に回すと、強い構築・強い選出・強い立ち回りは、少しだけ勝率が高い場所に収束する。
その「少し」が、54%だったり55%だったりする。
不確実性ゲームの勝率は50%付近に圧縮される
不確実性ゲームでは、実力差があっても勝率が極端には開きにくい。
将棋やチェスのような完全情報ゲームであれば、実力差がかなり勝敗に反映される。
でもポケモンは、相手の型が完全には見えない。
選出も見えない。
技構成も持ち物もテラスタルも読みによる。
さらに急所、命中、追加効果、同速、マッチング運もある。
だから、上位帯同士で当たり続けると勝率は50%付近に圧縮されやすい。
感覚的にはこんな感じで見ていい。
| 状況 | 長期勝率のイメージ |
|---|---|
| 同格同士 | 50%前後 |
| 少し有利 | 52〜53% |
| 明確に強い構築・立ち回り | 54〜56% |
| かなりメタが刺さっている | 57〜60% |
| 長期60%以上 | 相手が弱い、環境が偏っている、短期上振れの可能性が高い |
もちろん、これは厳密な統計ではなく、対戦ゲームを見る時の実感値に近い。
ただ、5万回シミュレーションして勝率54〜55%に収束する感覚は、かなり自然だと思う。
真の勝率55%でも、短期成績はかなりブレる
ここで重要なのは、真の勝率と観測勝率を分けること。
真の勝率とは、その構築・選出・立ち回りが本当に持っている期待勝率。
観測勝率とは、実際に30戦、100戦、300戦した時に見える勝率。
たとえば、真の勝率が55%の構築があったとしても、短期ではかなりブレる。
ざっくり正規近似で見ると、P5〜P95の範囲はこうなる。
| 試合数 | 観測勝率のP5〜P95 |
|---|---|
| 30戦 | 約40.1%〜69.9% |
| 100戦 | 約46.8%〜63.2% |
| 300戦 | 約50.3%〜59.7% |
| 1000戦 | 約52.4%〜57.6% |
| 5000戦 | 約53.8%〜56.2% |
つまり、真の勝率55%でも、100戦なら勝率63%くらいは普通に上振れで出る。
逆に、100戦で47%でも下振れで説明できる。
だから、短期成績だけ見て、
「この構築最強だ」
「この構築終わってる」
と判断すると危ない。
本当に見るべきなのは、短期の勝率ではなく、長期で収束する期待勝率と、その下振れ幅である。
平均勝率54%でも、最悪33%なら運用はしんどい
今回の検証データでは、構築の環境平均は54.0%だった。
一見、かなり悪くない。
むしろ、ポケモン対戦のような不確実性ゲームでは十分に使える数字だと思う。
ただし、問題はここだった。
環境平均 54.0%
総合 47.0%
最悪 33.0%
下振れ 33.0%
平均では勝てる。
でも、最悪ケースが33%まで落ちる。
これは「弱い構築」というより、回答が1枚に寄っていて、特定の相手に対して事故負けが太い構築に見える。
たとえば、検証ではこういう重い相手が出ていた。
ブリジュラス
環境平均 54.0% / 主回答値 71.5% / 控え回答値 0.0%
今の回答: メガリザードンY
イダイトウ
環境平均 54.0% / 主回答値 73.1% / 控え回答値 0.0%
今の回答: ガブリアス
これは、単に「少し重い」というより、
その回答ポケモンを選出から外すと一気に苦しくなる
という意味に近い。
ブリジュラスにはメガリザードンYを外せない。
イダイトウにはガブリアスを外せない。
両方いたら、メガリザードンY+ガブリアスで2枠固定される。
この時点で、選出の自由度がかなり落ちる。
平均勝率が54%あっても、こういう「回答が1枚だけ」の相手が多いと、実戦ではかなり疲れる。
勝てる時は普通に勝てる。
でも負ける時の負け方が不快になる。
「いや、それ選出してないと終わりじゃん」
「この相手だけ毎回祈りじゃん」
「平均では勝てるけど、負け筋が太すぎる」
となる。
平均勝率より、最大負けを見た方がいい
ここで見るべきなのは、平均勝率だけではない。
むしろ、長期運用する構築では、
最悪ケースをどこまで底上げできるか
の方が大事になる。
たとえば、次の2つの構築があるとする。
| 構築 | 環境平均 | 最悪ケース | 体感 |
|---|---|---|---|
| A | 54% | 33% | 勝てるが事故負けが重い |
| B | 53% | 40% | 平均は少し落ちるが安定する |
短期で上振れを狙うならAでもいい。
でも、長く回すならBの方が楽なことが多い。
なぜなら、不確実性ゲームでは、平均勝率を1%上げるより、最悪ケースを7%上げる方が、体感のストレスを大きく減らすからだ。
これは投資やトレードでいう最大ドローダウンに近い。
平均リターンが高くても、最大ドローダウンが大きすぎる戦略は運用しにくい。
同じように、平均勝率が高くても、最悪ケースが低すぎる構築は使っていてしんどい。
だから、構築評価では、
平均勝率最大化
だけでは足りない。
必要なのは、
最悪ケース最大化
CVaR最大化
下振れ耐性最大化
回答が1枚しかない対面の削減
である。
CVaRとは、下振れ側の平均を見る考え方
CVaRは、ざっくり言うと、
悪い結果だけを集めた時の平均
である。
平均勝率が54%でも、下位10%の対面が34%なら、かなり危ない。
一方で、平均勝率が53%でも、下位10%が42%なら、安定している。
普通の平均値は、上振れも下振れもまとめてならしてしまう。
でも実戦でしんどいのは、平均ではなく、悪い対面を引いた時である。
だから、ポケモン構築を長期運用するなら、
- 環境平均
- 最悪ケース
- 下位10%平均
- CVaR
- 回答が1枚に寄っている相手
- 選出固定を強制される相手
を分けて見る必要がある。
今回の構築は「平均54%マシン」だが、下振れ耐性は弱い
今回の構築は、平均54%という意味ではかなり悪くない。
自分用に本気で使う前提の6体として、十分に試す価値はある。
ただし、完成形というより、
平均は合格。下振れ耐性はまだ弱い。
という状態に見える。
運用するなら、最低限このルールは必要になる。
通常時:
カバルドン / メガリザードンY / アーマーガア を基本軸にする
ブリジュラス入り:
メガリザードンYを外さない
イダイトウ入り:
ガブリアスを外さない
ブリジュラス+イダイトウ入り:
メガリザードンY+ガブリアスで2枠固定
残り1枠を相手の残り4体で選ぶ
迷った時:
平均勝率ではなく、回答が1枚しかない相手を優先して選出する
このルール化だけでも、実戦勝率は少し上がる可能性がある。
ただ、それはプレイングで大きく伸びるというより、選出事故を減らすことで数%改善するという話である。
立ち回りで伸びるのは、せいぜい数%
構築検証で環境平均54%まで出ているなら、そこから立ち回りで伸ばせる幅はそこまで大きくないと思う。
もちろん、実戦での選出、技選択、交換、読み合いで差は出る。
でも、すでに構築と選出がかなり検証されているなら、そこから先は、
54% → 55〜57%
くらいが現実的な伸び幅ではないかと思う。
60%安定を目指すなら、相手が弱い、環境に刺さっている、あるいはモデル上で拾い切れていない大きな優位がある必要がある。
つまり、ここから先は、
勝率を爆発的に上げるゲーム
ではなく、
負け筋を削って、下振れを浅くして、数%のエッジを安定回収するゲーム
になる。
スコア設計は平均寄りからmaximin寄りに変える
実装上も、ここはかなり重要である。
現状のように、候補選定が環境平均や総合点に寄りすぎていると、最悪ケースが低い構築が残ってしまう。
たとえば、裏側のスコアが次のような重みだったとする。
teamScore = 環境平均52% + 最悪20% + CVaR16% + 薄い対面12%
この設計だと、平均勝率が強すぎる。
環境平均が高い構築が上に来る一方で、最悪ケースや下振れ耐性が低い構築を落とし切れない。
だから、改善するなら、主目的を変えるべきだ。
第一優先:worstCase を最大化する
第二優先:CVaR / 下位10%平均を最大化する
第三優先:回答が1枚しかない対面を減らす
第四優先:環境平均勝率を見る
つまり、平均勝率は同点時の補助に下げる。
構築選定の思想としては、
平均最大化
ではなく、
maximin、つまり「最悪の中で一番マシなもの」を選ぶ
に近づける。
これはかなりポケモン対戦向きだと思う。
なぜなら、レート運用で本当に嫌なのは、平均勝率が1%低いことではなく、特定対面で勝率33%を引かされることだからだ。
実装方針としては、候補ソートを変える
実装するなら、候補の表示順やおすすめ判定を次のように変える。
候補評価の優先順位:
1. 最悪ケース勝率が高い
2. CVaR / 下位10%勝率が高い
3. 控え回答不足が少ない
4. 薄い対面が少ない
5. 環境平均勝率が高い
6. 総合スコアが高い
擬似的にはこういう思想になる。
// 例:平均勝率ではなく下振れ耐性を主目的にする
const score =
worstCase * 0.35 +
cvarLowTail * 0.30 +
coverageScore * 0.20 +
averageWinRate * 0.10 +
roleBalance * 0.05;
さらに、本気でmaximin寄りにするなら、単純な加重平均ではなく、ソートキーを分ける方がよい。
candidates.sort((a, b) =>
b.worstCase - a.worstCase ||
b.cvarLowTail - a.cvarLowTail ||
b.coverageScore - a.coverageScore ||
b.averageWinRate - a.averageWinRate
);
こうすると、平均勝率が少し高いだけの尖った構築より、最悪ケースが高い安定構築が上に来る。
これは、今回の「平均54%だけど最悪33%」のような構築を見つけた後の、かなり自然な改善方針だと思う。
不確実性ゲームに飽きる理由
ここまで来ると、ポケモン対戦への飽きもかなり説明できる。
最初は面白い。
型を探す。
育成論を読む。
構築を作る。
相手の6体を見る。
どの3体を出すか考える。
勝ち筋を探す。
相手のミスを拾う。
この段階はかなり楽しい。
でも、シミュレーションを回して、
この構築の真の期待勝率は54〜55%です
最悪ケースは33%です
重い相手はこの2体です
あとは選出ミスを減らして回してください
となった瞬間、ゲーム性が変わる。
それはもう、ゲームというより、
バックテスト済み戦略の運用
になる。
勝ち方を探している間は面白い。
でも、勝率の天井が見えた後は、あとは数%のエッジを試行回数で回収するだけになる。
この時、レート到達のような明確なゴールがあれば続けられる。
「レート○○まで行きたい」
「最終順位○○位を取りたい」
「この構築で記事を書きたい」
「ツールとして改善したい」
こういうゴールがあれば、試行回数にも意味が出る。
でも、ただ勝率54〜55%の期待値マシンを回すだけだと、だんだん、
同じことを繰り返しているだけでは?
という感覚になる。
それは自然だと思う。
自分にとっての資産になるかどうか
ここで重要なのは、その試行回数が自分の資産として積み上がるかどうかである。
ただレートを回すだけなら、試行回数は消費される。
勝ったら嬉しい。
負けたら悔しい。
でも翌月には環境が変わる。
構築も変わる。
また最適化し直す。
一方で、
- 構築評価ツールを作る
- 選出ルールを自動化する
- 重い相手を可視化する
- 最悪ケース最大化のスコアを作る
- 記事にする
- 他人が使える形にする
こうすると、試行回数は資産になる。
ただポケモンを回すのではなく、ポケモンを題材にして、期待値評価・下振れ耐性・maximin設計・UI改善・自動検証の資産を作っていることになる。
たぶん、自分に合っているのはこっちである。
対戦そのものを無限に回すより、
不確実性ゲームをどう評価するか
平均勝率ではなく最大負けをどう減らすか
人間が選出ミスしないUIをどう作るか
勝率54%の構築を、体感で使いやすくするにはどうするか
を考える方が面白い。
結論:勝率最大化から、下振れ耐性最大化へ
ポケモン対戦は、最適化していくと、勝率54〜55%くらいの世界に収束しやすい。
そこから先は、
数%のエッジを試行回数で回収するゲーム
になる。
だから、平均勝率だけを追い続けると、どこかで飽きる。
本当に改善するなら、次に見るべきは平均ではない。
見るべきなのは、
- 最悪ケース
- 下位10%勝率
- CVaR
- 最大負け
- 回答が1枚しかない対面
- 選出が縛られる相手
である。
つまり、次のフェーズは、
勝率最大化
ではなく、
下振れ耐性最大化
最大負けの最小化
maximin構築選定
である。
平均54%・最悪33%の構築より、平均53%・最悪40%の構築の方が、長期運用では強いかもしれない。
ポケモン対戦も、麻雀も、ポーカーも、トレードも、結局は同じところに行き着く。
勝つ人は、毎回勝つ人ではない。
不確実な中で、少し有利な選択を積み続ける人である。
そして、長く続けるなら、平均だけではなく、最悪の負け方を見なければいけない。
数%のエッジを回収するゲームだからこそ、最大負けを小さくする。
これが、不確実性ゲームを長期で扱う時のかなり大事な考え方だと思う。
