同じ記事を12言語で出した。日本語と韓国語は伸び始めた。なのに、スペイン語やフランス語は静かなまま。「その国では需要がないのか?」と考えたくなる。
ところが、ある多言語サイトの記録を調べると、弱い言語ほど、改善に使う検索データからこぼれやすい仕組みが見つかった。読者が来ない原因を調べる機械が、先に読者の気配を見失っていたのである。
12言語でも、伸び方は12通り
検索サイトを経由して開かれた記事の閲覧回数を、2026年10月7〜9日と11〜13日(いずれも日本時間)で比較した。
| 言語 | 7〜9日 | 11〜13日 |
|---|---|---|
| 日本語 | 26 | 311 |
| 英語 | 1 | 13 |
| 韓国語 | 12 | 63 |
| 中国語・簡体字 | 2 | 4 |
| 中国語・繁体字 | 16 | 35 |
| スペイン語 | 2 | 2 |
| ブラジルのポルトガル語 | 1 | 0 |
| インドネシア語 | 1 | 6 |
| タイ語 | 1 | 4 |
| ベトナム語 | 4 | 3 |
| フランス語 | 1 | 1 |
| ドイツ語 | 0 | 2 |
これは検索結果の表示回数でも、Googleのクリック数でもない。閲覧計測から抽出した「検索サイトが参照元の記事閲覧」で、一部は標本からの推計だ。比較期間の曜日も違う。小さな数字の上下から記事修正の効果を決めつけるためではなく、言語ごとに問題の場所が違うことを見つけるための表である。
なぜ①:修正する候補が、検索データから消えていた
検索の記録を取り込む処理は、2,000行に達して途中終了していた。状態は「一部だけ取得」。
別の集計を照らすと、ページ別の一覧から漏れた「検索語とページの組み合わせ」が見つかった。繁体字中国語40行、ベトナム語30行、ブラジルのポルトガル語28行、簡体字中国語16行、タイ語13行。これは記事の本数ではなく、表示された検索語とページの組み合わせの行数だ。
なぜ弱い記事が見えなくなるのか。
検索データはクリックの多いものが先に返る。そこへ全言語共通の取得上限が重なる。すると、すでにクリックを集めている言語の記事が前に並び、まだクリックされていない記事は後ろに残りやすい。後ろが切れれば、改善するべき記事ほど候補から姿を消す。
例えるなら、売れている店の売上だけを帳簿に載せ、「売れていない店はありません」と会議を始めるようなものだ。会議は平和。経営は大惨事。
Googleの検索データ取得機能も、上位の行を中心に返し、全行の取得を保証していない。だから実務では、言語・期間・ページなどに分けて取り込み、取得途中の記録を全件と取り違えないことが重要になる。
なぜ②:現地語の記事が、別言語の単語テストを受けていた
次に見つかったのは、修正後の合格判定だった。簡体字中国語の記事に対して、テニスの声出しと球速に関する英語の検索語が題名や冒頭にそのまま入っていない、と不合格が付いた記録があった。
検索者が知りたいのは「声を出すと球が速くなるのか」。中国語で自然に答えればよいはずだ。ところが判定側は、英語の単語が実際に書かれたかを見ていた。
なぜこうなる?
検索語を拾う → 単語に分ける → 題名や冒頭に同じ文字があるか調べる → なければ修正失敗。手順としては簡単で速い。しかし、読者の疑問に答えたかと特定の文字が入ったかは別の検査である。
これでは、丁寧な現地語への改稿が落第し、ぎこちない単語の寄せ集めが合格する逆転が起こりうる。外国語の記事を採点する先生が、実は英単語の穴埋め問題しか持っていなかった。
なぜ③:看板だけ変えても、店の中身が別の店
さらに、検索者が「検索サービスの使い方」を知りたいのに、記事は「そのサービスで自分の記事を発見してもらう運営方法」を説明している、という種類のずれもあった。
両方とも同じ検索サービスの話だが、探している答えは違う。タイトルだけ検索語に寄せても、読者が開いた先で「欲しかった説明と違う」となる。
本文の文から検索語を多く含む一文を抜き出して説明文にする仕組みも、このずれを助長しうる。検索語が入った文と、読む価値を伝える文は同じとは限らない。
ここでの問いは単純だ。その記事は、検索した人が最初に知りたいことへ冒頭で答えているか。 合っているなら題名と説明を直す。問いそのものが違うなら、冒頭から本文まで組み直す。
どこを直せば、12言語が育つのか
「海外のアクセスが少ない」を一つの故障名にしない。言語ごと、記事ごとに次の順番で調べる。
- 見つけてもらえたか:検索エンジンが記事のURLを発見し、読み取れたか。
- 検索に出せる状態か:検索対象に登録され、正しい言語ページが選ばれているか。
- 表示されたか:その言語の、どんな疑問で何回表示されたか。
- 選ばれたか:表示されたのに読まれなかったなら、題名と実際の問いは合うか。
- 直した結果が届いたか:原稿変更、本番反映、検索エンジンの再取得、その後の成績を別々に確認したか。
修理の順番もここから決まる。まず言語別に検索記録を取り切れる仕組みを作る。次に単語の一致より質問と回答の一致を優先する。そして本文まで直すべき記事を、表面だけの修正から分ける。最後に、同じ言語・同じ条件で経過を見る。
需要、競争、現地での呼び方の違いも残る。すべての言語が同じ速度で伸びる保証はない。ただし、計測から消えた言語に「需要がない」という判決を出すのは早すぎる。
12言語を育てるなら、記事を12回翻訳するだけでは足りない。各言語に、ちゃんと見える健康診断と、ちゃんと意味が分かる編集者を付けること。
客が来ないと思ったら、入口の人数計が途中から寝ていた。まず起こす相手は、客ではなく人数計だった。
出典と測定上の注意
上の閲覧数と取得途中の記録は、2026年10月14日に確認した匿名化した運用事例。特定の修正が閲覧増加を生んだ割合は測定していない。
- Google:検索データ取得の仕様 https://developers.google.com/webmaster-tools/v1/searchanalytics/query
- Google:検索結果の題名と本文の言語 https://developers.google.com/search/docs/appearance/title-link
- Google:多言語ページの対応関係 https://developers.google.com/search/docs/specialty/international/localized-versions
- Cloudflare:閲覧集計の標本と推計 https://developers.cloudflare.com/analytics/graphql-api/sampling/
