この記事は、特定の投稿者や個人を攻撃するものではない。
ここで扱うのは、投稿サービスや職場でよく見る次のような考え方である。
上司やリーダーがイマイチだと言う人は、
その環境では自分がその人たちより評価されていない現実を見た方がいい。
本当に優秀なら早く評価される。
他の畑に行っても、本人が変わらない限り評価は変わらない。
この考え方には、一部の現実的な正しさがある。
たしかに、今の環境で長く評価されないなら、自分の見せ方、成果の出し方、相手が求めていることとのズレを確認する必要はある。
しかし、そこから、
今の会社で評価されない = その上司よりイマイチ
他の畑に行っても変わらない
本人の問題である
まで行くのは、かなり飛躍がある。
この記事では、この飛躍を分解する。
今の会社の評価は、他の会社でも同じなのか?
会社で評価されない時、人は悩む。
自分が悪いのか。
上司が悪いのか。
会社が悪いのか。
部署が合っていないのか。
自分の見せ方が悪いのか。
それとも、本当に自分の能力が足りないのか。
そこへ、こういう言葉が飛んでくる。
上司やリーダーがイマイチだと言っている人は、
その環境では自分がその人たちより評価されていない現実を見た方がいい。
これは一部、正しい。
今いる会社の中で評価されていないなら、少なくともその会社の評価基準では、自分の方が評価されていない。
その現実は見る必要がある。
しかし、ここで止まらないと危ない。
なぜなら、会社の評価は、誰がどこで見ても同じ点数になるものではないからだ。
会社の評価は、その会社が何を見て、どう採点するかによって決まる。
1. 今いる会社の評価と、ほかの職場からの求められ方は同じではない
会社の評価は、能力そのものの大きさを、そのまま表すものではない。
会社の評価は、次のような要素で決まる。
- その会社の文化
- 上司の好み
- 評価制度
- 年功序列
- 部署同士の力関係
- 役職者が何を大事にして判断するか
- 成果の見え方
- 誰が評価者か
- 何を成果とみなすか
- 波風を立てないことが重視されるか
- 長時間労働が評価されるか
- 改善提案が歓迎されるか
- 上に従うことが評価されるか
- 下を詰めることが管理とみなされるか
つまり、会社の評価は、その会社の中での何を見てどう採点するかという決め方である。
実際の計算式という意味ではないが、組み合わせを並べると、
会社内の評価で見られるもの
成果、上司との相性、会社文化、見せ方、役割、勤続の長さ、その場の空気、社内の力関係
である。
ここで重要なのは、何を見てどう採点するかが変われば、同じ人でも評価が変わるということ。
昔ながらの日本の会社では評価されない人が、新しい事業を始めた会社、海外資本の会社、自宅などから働くことが中心の職場、得意な専門の仕事で見る職場では評価されることがある。 逆に、新しい事業を始めた会社で評価される人が、勤続が長いほど上に進む会社では浮くこともある。
だから、
その会社で評価されていない = ほかの職場からも求められない
とは言えない。
正確には、
その会社の採点の決め方では、高く評価されていない
である。
2. 「その人より評価されていない = その人よりイマイチ」は飛躍である
投稿サービスの意見でよくあるのが、
あなたがイマイチだと思っている上司やリーダーより、あなたは評価されていない。
つまり、会社から見ればあなたの方がイマイチだ。
という論理である。
これは一見、現実的に見える。
しかし、ここには飛躍がある。
評価されている人が、本当に優秀とは限らない。
その会社が何を見てどう採点するかに、うまく合わせているだけかもしれない。
たとえば、ある会社では次のような人が評価されることがある。
- 上に逆らわない
- 曖昧な指示を飲み込む
- 下に詰めて回す
- 長くいる
- 空気を読む
- 波風を立てない
- 根回しがうまい
- 会社都合に耐える
- 責任を下に流す
- 役職者の顔を立てる
こういうことを大事にする会社の中では、その上司やリーダーは「正しい」。
しかし、それはどこでも通じる優秀さではない。
別の環境では、次のように見られるかもしれない。
- 指示が曖昧
- 目的を定義しない
- メンバーが自分で考えて動くのを邪魔する
- 下に責任を流している
- 権限と責任を整理できない
- 改善提案を潰す
- 感情で詰める
- 誰でも同じようにできるやり方を作れない
- 仕組みではなく根性で回している
つまり、評価は、その場所で何を大事にしているかに左右される。
昔ながらの働き方では正しい人が、違う働き方ではイマイチになることがある。
3. 昔ながらの会社では、どんな人が評価されやすいのか
ここで考えるのは、日本の大きな会社や古い組織で、勤続の長さ、その場の空気、周りとの調整を重視するときの、何を見てどう採点するかという決め方である。
もちろん、すべての日本企業が同じではない。
昔ながらの会社にも良い面はある。
安定して働けること、教育、給料以外の支援、長く雇ってもらえること、会社に積み上がった知恵、周りとの調整のうまさは強みでもある。
しかし、問題が出る場合、次のような採点になりやすい。
昔ながらの会社での採点
= 上司への従順さ
+ 空気を読む力
+ 長時間耐久
+ 根回し
+ 役職者の顔を立てる力
+ 波風を立てない力
+ 曖昧指示を飲み込む力
+ 下に詰めて回す力
- 仕事の組み方への指摘
- 権限と責任の確認
- どこまでできれば終わりかを明確にしてほしいという要求
- 上司の矛盾への指摘
こういう採点では、自分で考えて動ける人、仕事の組み方の問題が見えてしまう人、改善案を出す人、決める権限と責任を確認する人が浮くことがある。
逆に、上の曖昧な指示を飲み込み、下に詰めて、なんとなく回す人が評価されることがある。
これは、能力そのものを場所に関係なく測った結果ではない。 その会社が大事にしていることに合っているだけである。
4. 「他の畑に行っても変わらない」は検証不足
もう一つ危ういのが、
他の畑に行っても評価は変わらない。
という言い方である。
これは、検証して初めて言えることだ。
問題は、「他の畑」とは何かである。
本当に畑を変えたのか。
確認するべき軸はたくさんある。
□ 業界を変えたか
□ 職種を変えたか
□ 会社規模を変えたか
□ 地域を変えたか
□ 昔ながらの会社から、海外資本の会社/新しい事業の会社/中小企業/自宅などから働く会社へ変えたか
□ 評価制度を変えたか
□ 上司の考え方を変えたか
□ 裁量の有無を変えたか
□ 実際に作ったものや出した結果で評価される環境に変えたか
□ 年功序列から成果・専門性評価へ変えたか
□ 部署同士の力関係を変えたか
□ 誰が何をするか明確な環境に変えたか
近所の昔ながらの会社から、近所の同じような会社へ移っただけなら、それは畑を変えたとは言い切れない。
同じ地域。
同じ業界。
同じ年功序列。
同じ曖昧指示文化。
同じ上司の考え方。
同じ「上に犬、下に詰める」構造。
この場合、評価が変わらないのは当然かもしれない。
それは、
本人はどこへ行っても同じ
ではなく、
採点の決め方が同じ場所の中を横移動しただけ
かもしれない。
「他の畑に行っても変わらない」と言うなら、畑を本当に変えたのかを確認する必要がある。
5. 本人の見直しは必要。ただし環境の見直しも必要
ここで誤解してはいけない。
この記事は、
本人に問題は一切ない
と言っているわけではない。
本人側にも見直すべきことはある。
たとえば、
- 成果を見える形にしているか
- 上司が求めるものを理解しているか
- 報告が不足していないか
- 不満だけでなく改善案を出しているか
- 言い方が強すぎないか
- どんな結果を求められているか、先にすり合わせているか
- 会社の評価項目を理解しているか
- 自分の強みを会社の言葉に翻訳できているか
- 仕事の優先順位を間違えていないか
ここは見た方がいい。
しかし、同時に環境側も見る必要がある。
- 権限と責任が合っているか
- 評価項目が明確か
- 上司が目的とゴールを定義しているか
- 改善提案が潰されていないか
- 自分で考えて動ける人が、その力を使える仕事の組み方か
- 仕組みではなく個人の善意で回していないか
- 長時間労働や便利屋化を評価していないか
- 評価者の好みや政治で決まっていないか
- 昔ながらの、その場の空気で決まる評価に偏っていないか
本人だけ見てもダメ。
環境だけ見てもダメ。
本当に必要なのは、
本人側の課題と環境側の課題を分けること
である。
6. 「自分を普通だと思っている人」も普通に飛躍する
この手の議論で面白いのは、自分を「普通」だと思っている側も、普通に飛躍していることだ。
たとえば、
今の会社で評価されていない
だから、その上司よりイマイチ
他の畑でも変わらない
本人のマインドが悪い
これはかなり飛躍している。
途中にあるはずの確認が抜けている。
- その会社が何を見てどう採点するかは妥当か
- 上司の評価基準は妥当か
- 役割と責任は一致しているか
- その人の強みは今の環境で見える形になっているか
- 他の畑とは何を指すのか
- 業界・職種・評価制度・上司の考え方を変えたのか
- 本人の問題と環境の問題を分けたのか
ここを飛ばしている。
つまり、「普通側」も、よいか悪いかの二択だけで決めてしまっている。
評価されている人 = 優秀
評価されていない人 = イマイチ
他に行っても変わらない
本人の考え方が悪い
これは、間にある事情を見ずに二択で決めている。
物事を「よいか悪いかだけ」で見る癖は、脳の育ち方に関わる困りごとがある人だけの問題ではない。
多数派側も普通にやる。
ただ、それが「常識」「社会性」「現実」という名前で包まれるから、二択で決めつけているように見えにくいだけである。
7. 今いる会社の評価だけを、どこでも通じる正解にしてしまう
この考え方で起きているのは、今いる会社の評価だけを、どこでも通じる正解にしてしまうことである。
つまり、
今いる会社の評価を、そのまま、ほかの職場からどれくらい求められるかや、その人の能力全体として扱ってしまう考え方
である。
この考え方では、次のように決めつける。
会社で評価されている = 優秀
会社で評価されていない = イマイチ
上司が上にいる = 上司の方が能力が高い
出世していない = 本人に問題がある
環境を変えてもどうせ同じ
しかし、現実はもっと複雑である。
会社の評価は、会社ごとに何を見てどう採点するかに左右される。 その採点の決め方が妥当とは限らない。
上司が上にいる理由も、能力だけとは限らない。
- 年功
- タイミング
- 空席
- 上司との相性
- 会社文化への適応
- 政治
- 根回し
- 長い時間働いても耐えられること
- 波風を立てない力
- 役職者に気に入られる力
などが絡む。
だから、今いる会社の評価だけを正解にすると、自分の可能性を狭める。
8. 環境が悪い場合、本当に「他の畑」で変わることがある
環境との相性が、仕事への満足、その会社へ関わり続けたい気持ち、辞めたい気持ちなどと関係することは、研究でも扱われている。
人と会社の相性や、人とその仕事の相性は、仕事への満足、会社へ関わり続けたい気持ち、辞めたい気持ちなどと結びついていることが、複数の研究の数値をまとめて調べた結果でも報告されている。
つまり、環境との相性は無視できない。
合わない環境で評価されない人が、別の環境で評価されることは普通にあり得る。
たとえば、
昔ながらの会社で評価されにくい人
- 誰が何を決め、仕事がどう回っているかを細かく見る
- 曖昧指示に違和感を持つ
- 権限と責任を確認したがる
- 改善案を出す
- 無駄な会議や根回しに疲れる
- 長時間労働より成果を重視する
- 便利屋化を嫌がる
違う職場で評価されるかもしれない仕事や働き方
- 業務改善
- 商品やサービスをよくする仕事
- パソコンや新しい仕組みで仕事の進め方を変える仕事
- 新しい事業を始めた会社
- 自宅など、会社の外から働く仕事
- 実際に作ったものや出した結果で見る評価
- 専門職
- 外から会社の仕事の進め方を調べ、改善を助ける仕事
- 採用や配置、社員への支援を考える仕事
- 何をどんな順番で教えるかを組み立てる仕事
- 誰でも同じようにできる作業の仕方を整える仕事
- 文章で相談できる道具などを仕事に生かすこと
もちろん、環境を変えれば必ず成功するわけではない。
しかし、今の会社で評価されないことを、ほかの職場でも求められないという評価として受け取るのは危険である。
9. 会社の評価が合っているか確認するチェックリスト
自分が評価されない時、次のチェックをするとよい。
□ 会社の評価項目は明確か
□ 自分の成果は評価項目に乗っているか
□ 上司は自分の成果を理解しているか
□ 成果を数字や資料で見える化しているか
□ どんな結果を求められているか、互いに確かめられているか
□ 役割と責任は一致しているか
□ 権限がないのに責任だけ来ていないか
□ 改善提案が評価される文化か
□ 長時間労働や便利屋化が評価されていないか
□ 上司の考え方と自分の考え方が合っているか
□ 部署異動で改善する可能性があるか
□ 会社を変える必要があるか
□ 業界・職種・評価制度を変えれば評価が変わる可能性があるか
このチェックをすると、
本人の改善ポイント
と
環境の問題
を分けやすくなる。
10. 自分を見直す時のチェックリスト
環境だけ見てもダメである。
本人側も見る。
□ 不満だけでなく成果を出しているか
□ 成果を見える形にしているか
□ 上司に伝わる言葉に翻訳しているか
□ どんな結果を求められているか確認しているか
□ 会社が求める優先順位を理解しているか
□ 正論をそのままぶつけていないか
□ 改善案に期限・担当・判断者をセットにしているか
□ 自分の強みが今の役割に合っているか
□ 苦手な空気読みを仕組みで補っているか
□ 評価される場所に自分を置いているか
ここで重要なのは、自責に落ちることではない。
自分が変えるべき点
と
変えても無駄な環境要因
を分けることが目的である。
11. 転職や異動で本当に畑を変えるチェックリスト
「他の畑に行っても変わらない」と言う前に、本当に畑を変えるなら、次を確認する。
□ 業界が変わるか
□ 職種が変わるか
□ 会社規模が変わるか
□ 地域が変わるか
□ 評価制度が変わるか
□ 上司の考え方が変わるか
□ 実際に作ったものや出した結果で評価されるか
□ 裁量があるか
□ 権限と責任が一致しているか
□ 年功序列ではないか
□ 長時間労働が前提ではないか
□ 改善提案が歓迎されるか
□ 自分の強みが直接使えるか
□ 何でも引き受ける係にならないよう、誰が何をするか決まっているか
□ 面接で評価基準を確認できるか
畑を変えるとは、会社名を変えることではない。
何を見てどう採点するかが変わる場所へ行くことである。
まとめ
今いる会社で評価されないことは、無視してよい話ではない。
自分の動き方、見せ方、成果の出し方、求められている結果とのズレは確認するべきである。
しかし、
その会社で評価されない = ほかの職場からも求められない
とは限らない。
会社の評価は、その会社が何を見てどう採点するかによって決まるだけである。
昔ながらの日本の会社で評価される人が、別の環境では低評価になることもある。 逆に、今の会社で浮いている人が、採点の決め方が違う場所では強みを発揮することもある。
「他の畑に行っても変わらない」と言うなら、畑を本当に変えたのか確認する必要がある。
業界、職種、会社規模、地域、評価制度、上司の考え方、やり方を自分で選べるか、作ったものや出した結果で評価されるか。 これらを変えていないなら、採点の決め方が同じ場所への横移動かもしれない。
また、自分を普通だと思っている側も、普通に飛躍する。
「評価されていない = イマイチ」と決めつけるのも、間にある事情を見ない二択である。
必要なのは、本人だけを責めることでも、環境だけを責めることでもない。
本人の課題と環境の課題を分けること。
今いる会社の評価と、ほかの職場からどれくらい求められるかを混同しないこと。
評価される場所に自分を置くこと。
これが大事である。
今の檻の採点表を、世界標準だと思わなくていい。
