鹿児島、岐阜に見える。九州初上陸で「なんもねえ」になった話

九州に初めて足を踏み入れる。

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5秒で結論: 念願の九州に着いた。ところが車窓に流れるのは、ファミマ、高速道路、車、草、家、田んぼ。遠くまで来たはずなのに「ここ岐阜です」と言われても信じそうなくらい普通の日本だった。鹿児島らしさを探した結果、桜島と方言が急に重要になる。なお「行くきゅう!」「ここで降りるぎふ」は実在の方言ではない。

1. 念願の九州に踏み入れた。なのに画面が変わらない

九州に初めて足を踏み入れる。

もっとこう、空港を出た瞬間から「九州です!」と世界が主張してくると思っていた。

ところが、見えるものを順番に並べるとこうなる。

  • ファミマ
  • 高速道路
  • 車
  • 道
  • 家
  • 草
  • 田んぼ

全部知っている。

見たことがある。

というか、岐阜でも成立する。

頭の中で急に鑑定人が出てくる。

「これ、岐阜です(猫猫)」

違う。鹿児島県である。

地図上ではかなり遠くまで来たのに、生活圏の見た目は驚くほど日本のままだった。

2. 「遠くへ行けば景色も全部変わる」は勝手な期待だった

もちろん鹿児島と岐阜が同じ土地という話ではない。

気候も地形も歴史も食文化も違う。

ただし旅行者がバスの窓から一瞬で見るものは、その土地の全情報ではない。

全国チェーンのコンビニ、舗装道路、住宅、軽自動車、田畑、ガードレール。こういう「日常を成立させる部品」は、日本全国でかなり似た形をしている。

その結果、

地図上の距離は大きいのに、目に入る日常の部品は近い。

という妙なことが起こる。

旅行で期待していたのは「異世界」だったのに、最初に出てきたのは「日本の郊外・鹿児島支店」だった。

3. ジョイフルまである。だが、そこだけは少し九州ポイントが高い

さらにジョイフルが見える。

「いや、ジョイフルまであるやん。もうどこでも一緒やん」

となる。

しかし、ここには小さな逆転がある。

ジョイフルは1979年に大分市でファミリーレストラン1号店を開き、その後、九州を中心に全国へ広がった会社だ。[1]

つまり全国チェーン化した今では「どこにでもある感」を出してくるが、出自だけを見るとむしろ九州側の店である。

九州らしさを消しているように見えた店が、実は九州生まれ。

旅行はこういう変な罠を置いてくる。

4. 脳内BGMが『ヤニねこ』の「なんもねえ」になる

景色があまりに普通なので、脳内で『ヤニねこ』のオープニングテーマ「なんもねえ」が流れ始める。

これは妄想の曲名ではない。2026年のアニメ『ヤニねこ』のオープニングテーマは、忘れらんねえよの「なんもねえ」である。[7]

歌詞を引用する必要すらない。

タイトルだけで今の車窓に合いすぎる。

念願の九州。

遠い鹿児島。

そこまで来て視界に入るものが、

ファミマ。

草。

家。

道路。

田んぼ。

脳内BGMとの同期率だけが異常に高い。

5. 「日焼けしている人が多く見える」は地域判定には使えない

人を見て「こっちの人、日焼けしている人が多く見えるな」と感じる瞬間はある。

ただし、これは旅行者の一時的な観察にすぎない。

日焼けは仕事、外にいる時間、趣味、季節、年齢、服装、個人差などの影響が大きい。数人を見た印象から「鹿児島県民はこうだ」と一般化する根拠にはならない。

だから地域当てゲームで使うなら弱すぎる。

人の肌色より電柱を見る方がまだ強い。

この時点でGeoGuessrが急に正気ではないゲームに見えてくる。

6. GeoGuessrガチ勢は「草」ではなく電柱を見ている

では、鹿児島と岐阜がこんなに似て見えるなら、GeoGuessrの上級者はどうやって日本国内を見分けるのか。

答えは、景色全体の雰囲気だけではない。

日本向けのGeoGuessrガイドでは、地域判定の材料として、電柱のプレート、電柱上部の形、支線、反射材、電話番号、市外局番、道路標識などが整理されている。[6]

つまり上級者の視線はこうなる。

普通の旅行者: 「山あるな。田んぼあるな。岐阜っぽいな」

GeoGuessr勢: 「待て。あの電柱の金属板は何型だ」

見ている世界が違う。

岐阜は主に中部電力圏、鹿児島は九州電力圏なので、電柱などの地域差を学んだ人にはヒントが増える。

旅行者が「全部同じやん」と見ている景色にも、ガチ勢には細かい住所ラベルが大量に刺さっている。

7. バスの人、標準語じゃなくて方言を使ってくれ

次の不満が出る。

バスの人まで普通の標準語寄りで話している。

せっかく鹿児島まで来たのだから、観光客としては勝手にこう思う。

もっと鹿児島を浴びさせてくれ。

鹿児島には実際に分かりやすい方言がある。

県の資料では、薩摩・大隅地方の歓迎の言葉として「ゆくさ おさいじゃした」が紹介されている。[2]

鹿児島空港の足湯名にも使われる「おやっとさぁ」は、「お疲れさま」「ご苦労さま」という意味。[3]

県外支援者向けの鹿児島弁資料には、

  • わっぜ = ものすごく
  • ぬっか = 暑い
  • ひんだれた = 疲れた

などが載っている。[4]

さらに「じゃっど」は「そうだ」の意味で使われる鹿児島弁として県立学校の資料でも紹介されている。[4][8]

これを知ると、標準語だけで進む車内が急に惜しく感じる。

8. ただし「どん」は万能語尾ではない。そこで「行くきゅう!」を捏造する

観光客の脳内鹿児島弁は、すぐ暴走する。

「カード決済どんか?」 「いけるどん!」

だが、これは本物の鹿児島弁として使うものではない。

「西郷どん」の「どん」は、何にでも付ければ鹿児島になる魔法の語尾ではない。鹿児島県観光サイトでも「せごどん」は鹿児島弁で「西郷さん」と説明されている。[5] そして「じゃっどん」は実在し、意味は「けれども」「〜だが」。語尾に適当に「どん」を足したものではない。[9]

そこで、もう事実を捨てて観光用の架空方言を作る。

九州: 「このバス行きますか?」 「行くきゅう!」

岐阜: 「ここで降りますか?」 「ここで降りるぎふ!」

鹿児島: 「カード使えますか?」 「じゃっど!」

もはや言語学ではない。

県名を語尾につければ旅行者が現在地を見失わない制度である。

9. 結局、桜島が鹿児島感をほぼ一人で背負っている

ファミマは全国にある。

道路もある。

家もある。

田んぼもある。

ジョイフルも全国へ広がった。

接客では標準語寄りになることもある。

そうなると、旅行者の目に一撃で「鹿児島」を叩き込んでくる存在として桜島が強すぎる。

桜島が見えた瞬間だけ、

「はいはい岐阜ね」

という脳内判定が壊れる。

いや、これは鹿児島だ。

桜島が地域ブランドの仕事を一人でやりすぎている。

「鹿児島の郊外」と「岐阜っぽい日本の郊外」の区別がつかなくなっても、背景に火山が入った瞬間にゲームが終了する。

10. 6〜7万円払って「岐阜です」は、そりゃ複雑である

ここで旅行費が6〜7万円くらいになってくると、感情が少し変わる。

「念願の九州に来た」という達成感はある。

しかし第一印象が、

ファミマ! 道! 家! 草! 田んぼ! これ岐阜です!

だと、

「これに6〜7万円か……」

となるのも自然である。

旅行は、距離に比例して景色の違いが増える商品ではない。

高い交通費を払って遠くへ移動しても、現地の普通の暮らしは驚くほど普通だったりする。

だが、これは完全な失敗とも言い切れない。

「九州はもっと全部が違う場所だと思っていた」

という自分の中の地図が、実物を見たことで修正されたからだ。

遠くの土地も、そこで生活している人にとっては普通の日常である。

それを身体で知ること自体は、ネットの写真だけでは意外と得にくい。

11. 結論:九州初上陸で得たものは「異世界」ではなく「日本、広いのに似てる」だった

九州初上陸。

期待していたもの: 南国感、方言、土地の違い、鹿児島特有の景色。

最初に出てきたもの: ファミマ、高速、車、草、道、家、田んぼ、ジョイフル。

そして脳内では『ヤニねこ』の「なんもねえ」。

その結果生まれた結論は、

日本、思ったよりどこへ行っても日本。

ただし細部を見ると違いはある。

ジョイフルは大分発祥。

鹿児島弁には「じゃっど」「わっぜ」「おやっとさぁ」がある。

GeoGuessr勢は電柱を見る。

そして桜島が出た瞬間だけ、鹿児島の主張が圧倒的に強くなる。

だから今回の九州初上陸を一文にするとこうなる。

「これ、岐阜です(猫猫)」

じゃっどん、

桜島が出たらその判定は終了である。

参考資料(9件)

  1. ジョイフル公式「沿革」— 1979年、大分市にファミリーレストラン1号店
    https://corporate.joyfull.co.jp/history
  2. 鹿児島県「今から使える鹿児島の方言講座」— 「ゆくさ おさいじゃした」など
    https://www.pref.kagoshima.jp/kohokocho/kouhoushi/kohosi/gurakago/h30/documents/65593_20180626170635-1.pdf
  3. 鹿児島県観光公式「鹿児島空港天然温泉足湯 おやっとさぁ」— 「おやっとさぁ」の意味
    https://www.kagoshima-kankou.com/guide/13165
  4. 鹿児島県「県外支援者のための鹿児島弁ミニ講座」— 「わっぜ」「ぬっか」「ひんだれた」など
    https://www.pref.kagoshima.jp/ae07/seishin/dpat/documents/63969_20200114230224-1.pdf
  5. 鹿児島県観光公式「西郷隆盛 歴史トリビア」— 「せごどん」は「西郷さん」
    https://www.kagoshima-kankou.com/feature/toribia/saigo
  6. Plonk It「Japan」— GeoGuessr日本地域判定の電柱・道路設備などのガイド
    https://www.plonkit.net/japan
  7. TVアニメ『ヤニねこ』公式 — オープニングテーマ「なんもねえ」
    https://yanineko-anime.com/111/
  8. 鹿児島県立楠隼中高一貫教育校「鹿児島弁講座」— 「じゃっど」など
    https://www.edu.pref.kagoshima.jp/sh/nansyun/docs/2018012900049/
  9. 鹿児島弁ネット辞典「じゃっどん」— 「けれども。〜だが」
    https://kagoshimaben-kentei.com/jaddo/%E3%81%98%E3%82%83%E3%81%A3%E3%81%A9%E3%82%93%E3%83%BB%E3%81%98%E3%82%83%E3%81%A3%E3%81%A9%E3%82%93%E3%81%8B%E3%82%89%E3%82%93/

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