1. 22分で宇宙を作った。頭の中では
誰でもサイト上で絵を描き、巨大な共有ガチャへ放り込める。ほかの人が引くとその絵は在庫から消え、世界でもう二度と出ない。引いた絵はコレクションへ。作者はSNSで「俺の絵、引かれたやんw」と発見できる。
しかも投稿が増えるほどガチャマシン自体が巨大化する。部屋、ビル、地球、太陽系、銀河、宇宙。宇宙より巨大なガチャを回して出てくるのが、誰かが5秒で描いた謎の丸。壮大さとしょうもなさの落差がいい。
この発想から、広告、データ保存、荒らし防止、無料枠の保護、SNS共有、企画用AIへの研究指示、デザイン、動画、開発、テスト、公開まで発注仕様を整理するのに約22分。22分で完成したのはゲームそのものではなく、開発を依頼できる仕様書だ。 ここが最初のオチである。
2. かわいいガチャの裏に、厄介なサーバーがいる
お絵描き画面だけなら比較的単純だ。問題は「1枚の絵が世界で1回しか当たらない」こと。
同時に二人が同じ絵を引いたら? 作者別ガチャと全体ガチャが同じ在庫を奪い合ったら? 抽選途中に通信が切れたら? Botが同じ落書きを10万枚投入したら? 保存容量がいっぱいになったら?
画面の裏には、二重抽選を防ぐ在庫管理、通報、容量整理、取得者の保存、広告、監視が必要になる。単なるホームページではなく、ちっちゃなWebサービスだ。
しかも運営費は絶対無料にしたい。Cloudflare Workers Freeには1日10万回のリクエスト上限があり、D1の無料データベースも読み書き上限に達すれば処理が止まる。[3][4] 無料を維持するなら、先回りして投稿を制限する仕組みもいる。ガチャは宇宙まで膨らむが、請求額は膨らむな。 無茶な指示としては完成している。
3. 人間に頼むと何日で何円?
ここで「もし人間に企画から全部頼んだら?」という疑問が発生した。公開相場から見た、この企画向けの概算は次の通り。実際の発注見積もりではなく、範囲を変えた仮の試算である。
| 作るもの | 期間の目安 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| お絵描きと抽選の簡易デモ | 数日〜数週間 | 数万〜数十万円 |
| 投稿・抽選・保存が動く小さな公開版 | 1〜3か月 | 100万〜500万円 |
| 宇宙演出・SNS・広告・通報・自動管理まで | 3〜6か月程度 | 500万〜1,500万円 |
企画、デザイン、画面開発、サーバー開発、テスト、公開など、4〜7人が時期を分けて関わる可能性がある。全員がずっとフル稼働という意味ではない。
参考までに、Findyの2026年調査ではフリーランスエンジニアの平均月単価は約80.8万円。[1] 別の開発会社の公開資料も、試作品から中規模アプリまで数十万円〜1,500万円という広い幅を示す。[2] 「高っ!」と言いたくなるが、発注書の中にいつの間にか小さな開発会社が一社入っている。
4. 「1,000円で作りますよ!」だったら草
Web制作に興味のある人へ、実際に依頼するつもりはなく「このサイトを作るなら何日で何円くらいですか?」と聞いてみたくなった。質問は一個で十分。相手はまだ面接も見積もり競争もしていない。
ところが万一、「1,000円で作りますよ!」と返ってきたら?
銀河系、1,000円で納品。 予算が宇宙のインフレについていけていない。安すぎて興味本位で本当に依頼してみたくなる。
もっとも、1,000円で現実的なのは練習用の1画面や簡単なデモだろう。本人が納得して挑戦するなら面白い。仕事にする場合は、何を作るか、完成条件、修正回数、公開後の責任をそろえる。雑談がいつの間にか無限修正契約に変わるのは、別種のホラーゲームだ。
5. Claude Code VS 人間は、本当に見てみたい
同じ企画書を、AIに任せる側と自分で制作する側へ渡したら、何が完成するのか。コードを書けない人がAIを指揮する場合と、制作を学んだ人間が自分の判断で作る場合の対決である。
勝ち負けは速度だけでは決まらない。人間がガチャの演出を妙に面白くするかもしれない。AIがサーバーの在庫処理を正確に仕上げるかもしれない。逆だってあり得る。画面の美しさと「世界に一回」の保証は、そもそも違う技術だ。
比べるなら、同じ仕様、同じ期限、同じ公開条件にして、完成したものを実際に回す。制作時間、金額、楽しさ、スマホ操作、二重当選、バグ、運用まで見る。
AIが必ず速いとも限らない。METRの2025年実験では熟練開発者の特定の仕事が、当時のAIツールを使うと平均19%遅くなった。2026年の追跡調査は参加者の選ばれ方に偏りがあり、新しいAIの速度効果の断定は難しいと研究者自身が説明している。[5] この数字で宇宙ガチャの完成日を予言はできない。
「AIなら半日〜2日でできるかも」は仮説。製品が動いて初めて検証できる。
6. コードを書けないのに、結構なサイトを運営する逆転
記事が中心の個人サイトでも、検索、多言語、各種Webツール、記事公開処理、障害監視を積み上げれば、中身はそれなりに高度になる。見た目は記事サイト、裏側は小さな情報システムだ。
AIへ仕事を正確に頼むのが得意な人と、自分の手で画面を描いて作る人では、能力の種類が違う。「手で書いていないから価値ゼロ」も「AIが書いたから全部完璧」も雑すぎる。
アイデアを作る、良い体験にする、コードの誤りを見つける、公開後に壊れたら直す。その全部がWeb制作だ。サイトの規模やコード量だけでは、実際の使いやすさも信頼性も決まらない。
7. 22分から始まった本当の見どころ
考えていたのは宇宙サイズのガチャだったはずなのに、いつの間にか「人間に外注したらいくら」「AIと人間、どちらが作るのが上手い」へ話が進んでいた。
本当に面白いのは優劣の決着よりも、同じ無茶な注文を受けた二者が、どこに面白さを見つけ、何を省き、何を守るかだ。人間の予想外のデザインも見たいし、AIの異常な実装速度も見たい。
そして本当に「1,000円で宇宙まで作ります」と言う人が現れたら、まず納品範囲を確認したい。
ガチャより見積書のほうがSFなの、どういうことだよ。
参考資料
[1] Findy 2026年市場調査: https://findy.co.jp/3922/ [2] DearOne アプリ開発費用ガイド(2026年更新): https://moduleapps.com/mobile-marketing/app-dev-cost/ [3] Cloudflare Workers公式制限: https://developers.cloudflare.com/workers/platform/limits/ [4] Cloudflare D1無料枠の制限適用: https://developers.cloudflare.com/changelog/post/2026-09-01-d1-free-tier-limit-enforcement/ [5] METR 2026年AI開発生産性調査の更新: https://metr.org/blog/2026-02-24-uplift-update/
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