逃げにくい人ほど、条件を悪くされやすい
企業が社員を安く使えるかどうかは、能力だけで決まらない。
社員がどれだけ退出しにくいかでも決まる。
- 生活費の余裕がない
- 他社で通用する自信がない
- 家族事情で勤務地を変えられない
- 社内の人間関係を失いたくない
- 長く勤めすぎて外へ出るのが怖い
- 退職を失敗や裏切りと考える
- 健康が落ち、転職活動をする力がない
退出しにくい人には、会社が条件改善をしなくても残ってもらえる。
すると、同じ能力でも、次が起きやすい。
- 賃上げを後回しにされる
- 担当が増える
- 緊急対応を頼まれる
- 断りにくい仕事が集まる
- 「あなたしか分からない」で囲われる
- 威圧で動かされる
これは、能力が低いから安いのではない。
逃げにくいから、値切られている。
退出可能性は、労働条件を決める資産である
退出可能性は、必ず退職することではない。
次の状態を持つことだ。
- 外部で使える技能を保つ
- 職務経歴を言語化する
- 貯蓄を持つ
- 他社の相場を見る
- 異動経路を知る
- 健康が壊れる前に距離を取る
- 人事評価と自己価値を分ける
退出可能性がある人は、初めて「断る」「交渉する」「離れる」を現実的な選択肢にできる。
会社を辞めるかどうかより、会社が唯一の生存経路ではない状態が重要である。
会社が60点でも、残る理由はありうる
職場は、0点か100点ではない。
まともな同僚、頭のよい管理職、話を聞く上司、安定した給与、通勤、休暇、仕事の面白さがある会社もある。
一方で、文化の源流に威圧、後出し、長時間拘束があり、配属先の上司によって40点にも80点にもなる。
このような会社を、総合60点と評価することはありうる。
重要なのは、平均点より分散である。
- 異動先で文化を遮断できる上司がいるか
- 上位者の圧から物理的・制度的に距離を取れるか
- 良い上司が異動しても安全性が残るか
- 欠勤、休職、退職が管理職評価へ反映されるか
- 会社の良さが、特定の善人の自己犠牲に依存していないか
良い人がいることと、良いシステムであることは別である。
70歳まで働くなら、同じ会社へ70歳まで捧げる必要はない
長く働く社会では、一社への忠誠より、働き続けられる条件を選ぶ力が重要になる。
- 会社を変える
- 部署を変える
- 職種を変える
- 勤務時間を変える
- 雇用形態を変える
- 一時的に休む
- 副収入や資産を作る
これらは、逃げではない。
人生全体の労働可能性を守るためのポートフォリオ管理である。
一つの会社で限界まで安く稼働させられ、壊れた時点で労働市場から退出するより、早めに条件を変える方が、本人にも社会にも合理的である。
個人が背負わなくてよい責任
社員には、改善提案をする自由がある。
しかし、文化の源流を矯正する義務はない。
次のことを、無期限に続ける必要はない。
- 上司の人格を変える
- 経営者へ理解させる
- 会社のエンゲージメントを一人で上げる
- 休職者が出る部署を自分の善意で支える
- 機嫌を読み続ける
- 記録も権限もない中で全責任を持つ
社員ができるのは、事実を残し、境界を引き、選択肢を作り、限界前に移動することまでである。
会社が学ぶかどうかは、会社の課題である。
