8時間から6時間へ広げるのは「条件を絞る」ことではない
求人を出しても応募が来ない。
そこで、現場へ確認する。
- 8時間勤務が必須なのか
- 6時間または7時間でも運用できるのか
- 必須時間帯はどこか
- 業務を分割できるか
- 週の勤務日数に幅を持たせられるか
これは応募対象を狭める行為ではない。
8時間固定という制約を緩め、応募可能な人を増やす行為である。
ところが、管理者が会話の一部だけを聞き、
「なぜそんなことを聞くのか」
「条件を絞ると人が入らないだろ」
と止める場合がある。
論理が逆である。
8時間固定の方が対象を絞っている。
6時間・7時間を許容できるか確認するのは、母集団を広げるための要件整理である。
身体負荷を伝えるのは、応募者を落とすためではない
仕事の実態として、1日約2万歩の移動があるとする。
過去に歩行量を理由として退職した人が複数いる。
この情報を求人や面談で伝える目的は、候補者を排除することではない。
- 入社後の「聞いていなかった」を防ぐ
- 継続可能性を本人が判断できるようにする
- 配置や業務分担で調整できるか検討する
- 体力を曖昧な印象ではなく、実作業で説明する
- 面接官の主観的な採否を減らす
「体力が必要です」だけでは、何も分からない。
具体化するなら、次を確認する。
- 通常時の歩数
- 繁忙時の歩数
- 連続して歩く時間
- 立ち作業時間
- 階段の回数
- 屋外移動の有無
- 重量物の重量と頻度
- 休憩の取り方
- 移動を分担できるか
- 補助器具や配置変更が可能か
視力も「何となく」ではなく、職務で定義する
看板や表示を確認する仕事があるとする。
そこで確認すべきなのは、漠然とした視力の数値だけではない。
- 何メートル先を見るのか
- 文字の大きさはどの程度か
- 色の識別が必要か
- 動いている状態で見るのか
- どの頻度で確認するのか
- 眼鏡・コンタクトによる矯正でよいか
- 表示の位置や大きさを変更できるか
- 別の確認方法を使えるか
採用要件は、「健康そう」「体力がありそう」「目が良さそう」という印象で決めるものではない。
実際の職務を遂行するために、何が必要かを定義する。
これにより、面接官の不要なNOを減らせる。
Realistic Job Preview:現実的職務情報
採用研究には、Realistic Job Previewという考え方がある。
良い面だけでなく、仕事の負担、難しさ、制約、働き方を事前に伝える。
メタ分析では、現実的な職務情報は、期待の正確さ、組織への誠実さの認知、離職などに影響する。
重要なのは、「厳しい仕事だから覚悟を求める」ことではない。
会社が不都合な情報を隠さず、本人が判断できる材料を出すことである。
応募数だけを最大化し、入社後に辞めるなら、採用は成功していない。
求人要件を具体化するときの3分類
A. 本当に必須な条件
満たせなければ、安全または業務遂行に重大な問題が出る。
例:
- 特定時間帯の配置が法律・安全上必須
- 一定距離の移動が毎日避けられない
- 特定表示を即時に識別する必要がある
- 資格が法令上必須
B. 運用で調整できる条件
仕事の設計、配置、設備、分担で対応できる。
例:
- 8時間勤務を6時間・7時間へ変更
- 歩行量の多い業務を分担
- 表示を大きくする
- タブレットや音声で確認
- 休憩時間を再配置
- 重量物を補助器具で扱う
C. 採否に不要な条件
現場の慣習や面接官の好みで入っているだけ。
例:
- 何となく若い方がよい
- 元気そうな人
- 視力が良い人
- 体力に自信がある人
- フルタイムで当然
- 何でも柔軟にできる人
この3分類をしない会社は、必要な人まで落とし、入社させた人には実態を隠す。
採用難の真因が、人員計画にある場合
次の状態では、求人票だけ直しても解決しない。
- 退職者2人分を補充できていない
- 既存業務は減っていない
- 新規立ち上げを追加した
- 教育担当も不足している
- 採用要件の決定者が不明
- 勤務時間の幅を決めない
- 退職理由を分析しない
- 権限処理が遅い
- 現場と採用側で情報が共有されない
これは採用担当の文章力不足ではない。
人員計画と管理の失敗である。
求人は、壊れた仕事設計へ人を流し込む装置ではない。
求人・面談用チェックリスト
勤務条件
- ☐ 必須勤務時間帯
- ☐ 最短勤務時間
- ☐ 6時間・7時間勤務の可否
- ☐ 週の最低勤務日数
- ☐ 休憩時間
- ☐ 残業の実績
- ☐ 急な勤務変更の頻度
身体負荷
- ☐ 平均歩数
- ☐ 繁忙時歩数
- ☐ 立ち時間
- ☐ 階段
- ☐ 屋外移動
- ☐ 重量物
- ☐ 暑熱・寒冷
- ☐ 保護具
視認・認知負荷
- ☐ 見る対象
- ☐ 距離
- ☐ 文字サイズ
- ☐ 色識別
- ☐ 反応時間
- ☐ 矯正視力の可否
- ☐ 代替確認方法
定着リスク
- ☐ 過去の退職理由
- ☐ 早期離職の共通点
- ☐ 欠員数
- ☐ 教育担当
- ☐ 独り立ちまでの期間
- ☐ 質問先
- ☐ 判断権限
- ☐ 繁忙期の支援
