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自走人材を求める会社が見落としがちな矛盾。自分で考えて動ける人ほど、会社の都合だけでなく自分の人生全体でも合理的に判断する。 - tags:
自走人材, 若手離職, 会社員OS, 採用, エンゲージメント
会社はよく「自走できる人がほしい」と言う。
自分で考えて動ける人。 指示待ちではなく、主体的に動ける人。 改善提案ができる人。 論理的に物事を考えられる人。
一見、すごく良い人材像に見える。 ただ、ここには大きな矛盾があります。
本当に自走できる人は、会社の中だけで自走するわけではありません。 自分の人生全体でも自走します。
つまり、こう考えます。
- この仕事は自分の人生に合っているか
- この上司の下で伸びるか
- この残業は将来回収できるか
- 改善しても楽にならないなら損ではないか
- 他社の方が年収・裁量・成長機会があるのではないか
- 自分の市場価値を上げるなら、ここに残るべきか
会社側は「会社のために自分で考えて動いてほしい」と思っているかもしれない。 でも、労働者側が本当に自分で考えた結果、会社から離れることもあります。
それは反抗ではありません。 自分の人生に対する当事者意識です。
会社に都合のいい自走人材という幻想
会社が期待しがちな自走人材は、少し都合がよすぎることがあります。
- 指示しなくても動く
- でも上司の方針には逆らわない
- 改善提案はする
- でも責任範囲や評価には口を出さない
- 残業もしてくれる
- でも処遇は大きく求めない
- 主体的に動く
- でも会社の外の選択肢までは考えない
しかし、それは本当の自走ではありません。 それは「会社に都合よく自走してくれる人」です。
本当に論理的に動ける人は、リソース配分を考えます。 時間、体力、収入、成長、市場価値、健康、家庭、自由。 その全部を見たうえで、どこに時間を投下するかを考えます。
だから、会社が本当に自走人材を求めるなら、次の問いに答える必要があります。
- 何を任せるのか
- 何を学べるのか
- どの技術や現場に触れられるのか
- どこまで裁量があるのか
- 誰が育てるのか
- どう評価されるのか
- 改善したら本人や現場は楽になるのか
- 失敗した時に守られるのか
ここを定義せずに「主体的に動いてほしい」と言っても、優秀な人ほど冷静に見ます。
「この会社で自走する意味はあるのか」と。
若手は楽をしたいだけではない
若手が仕事よりプライベートを重視している、という言い方はよくあります。 でも、それだけでは少し浅い。
若手は、納得できる成長機会があれば仕事に前向きになる一方で、ワークライフバランスも前提にしているという調査もあります。20代求職者の多くは、仕事と私生活の両立を前提にしつつ、成長機会があるなら一時的に仕事を優先する姿勢も見せています。
つまり、「楽をしたい」だけではない。
納得できるならやる。 でも、納得できない消耗には乗らない。
これはかなり合理的です。
会社に全賭けしにくい時代
今は、会社に長く勤めれば必ず守られる、という前提も弱くなっています。
70歳までの就業機会確保は努力義務として制度化されています。 国民負担率は令和8年度見通しで45.7%とされています。 2025年の実質賃金は前年比マイナス1.3%で、4年連続マイナスという整理も出ています。 黒字企業でも早期・希望退職を募る事例があり、2025年度の上場企業の早期・希望退職募集では、直近決算で黒字の企業が約7割だったという集計もあります。
この環境で、若手にだけ「会社のために当事者意識を持て」と言うのは難しい。
会社には会社の都合がある。 なら、労働者にも労働者の人生の都合があります。
自走人材を採りたいなら、会社側も変わる必要がある
自走人材がほしいなら、会社側が用意すべきものは精神論ではありません。
必要なのは、環境です。
- 目的が明確であること
- 役割と責任範囲が明確であること
- 優先順位が決まっていること
- 上司が話を聞くこと
- 改善した成果が本人や現場に返ること
- 学べるものがあること
- 成長導線があること
- 無駄な残業が減ること
- 失敗しても学べる受け皿があること
主体性は、性格だけで発生するものではありません。 主体性を発揮してもよい環境があって、初めて出てくるものです。
会社が「自走できる人がほしい」と言うなら、まず会社自身が問うべきです。
その人は、なぜこの会社で自走したいと思うのか。
この問いに答えられないまま採用活動をしても、優秀な人は振り向きません。 仮に採れても、いずれ外へ自走していく可能性があります。
