善意で中継しただけなのに、なぜか担当者にされる職場の「責任ロンダリング」

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職場でたまに、かなり意味不明なことが起きる。

たとえば、別部署から問い合わせが来る。

「この契約書、内容が間違っているので修正してほしいです」

その業務は自分の担当ではない。 担当者は別にいる。

ただ、問い合わせが来てしまったので、善意で担当者に共有する。

チャットで依頼内容を送る。 既読もつく。 原紙も担当者の机に置く。

ここまでやれば、少なくとも「依頼を受け取って、担当者に橋渡しする」という役目は果たしている。

ところが数日後、修正版が届いていないと問い合わせが来る。

そしてなぜか、最初に中継した人間がこう言われる。

「どうなってるの?」

「机に置いたから知らない、じゃないんだって」

「君の後輩でしょ?」

「今日いないならLINEで聞いて。そこは目をつぶるから」

いや、待て。

それは本当に、その人の仕事なのか。

これは単なる確認漏れではない。 職場でよく起きる、かなり厄介な構造である。

私はこれを、善意中継の担当者化ロンダリングと呼びたい。


1. みんなが気になる違和感:なぜ、善意で手伝った人が責められるのか

この手の話で一番しんどいのは、本人がサボったわけではないところだ。

むしろ逆である。

本来は自分の担当ではない。 でも、問い合わせが来たから善意で中継した。 担当者にチャットした。 既読もついた。 必要な紙も渡した。

つまり、何もしていないどころか、むしろちゃんとやっている。

なのに後から、なぜかこうなる。

「最後まで見ておくべきだった」

「後輩なんだから確認すべきだった」

「共有しただけで終わりではない」

「LINEで聞いて」

ここで発生している違和感は、かなり重要だ。

それは、“中継した責任”と“業務を完了させる責任”が混ぜられていることである。

この2つは、本来別物だ。


2. 作品内ルールで整理する:担当・中継・管理は別の役割

職場の仕事には、ざっくり3つの役割がある。

担当者

実際にその作業を行う人。 契約書を修正する、発行する、スキャンする、提出するなど、成果物を出す人である。

中継者

依頼を受け取り、担当者へ共有する人。 今回でいえば「Sさんから来た依頼を、担当者にチャットで展開し、原紙を渡した人」である。

管理者

誰が担当か、いつまでにやるか、進捗はどうか、滞っていたらどうするかを確認する人。 リーダー、上司、業務管理者などが本来ここに入る。

問題は、この3つが曖昧な職場では、なぜか中継者に管理者責任が乗ってくることだ。

中継者は、あくまで橋をかけただけである。

橋をかけた人が、橋の上を通る全員の通行管理までやるわけではない。

それなのに、穴あき動物園ではこうなる。

「君が橋をかけたんだから、橋を渡り切ったかも確認して」

「担当者が渡ってなかったなら、君が追いかけて」

「後輩なんだから見てあげて」

「休みならLINEで聞いて」

これは、仕事の役割分担ではない。

ただの責任のにじみ出しである。


3. 現代用語に変換する:これは“責任ロンダリング”である

この構造を別の言葉で言うなら、責任ロンダリングである。

責任ロンダリングとは、本来の責任所在をぼかし、別の人に責任を移し替えることだ。

今回の流れはこうだ。

本来の構造

別部署から修正依頼が来る。
担当者が修正する。
管理者が必要に応じて進捗を確認する。

ロンダリング後の構造

別部署から修正依頼が来る。
善意で中継した人が担当者に共有する。
担当者が対応していない。
なぜか中継した人が「ちゃんと見ておけ」と言われる。

この瞬間、責任がすり替わっている。

しかもすり替え方がかなり巧妙だ。

「君の後輩でしょ?」

この一言によって、業務責任が急に「先輩責任」「教育責任」「面倒見責任」に変換される。

本来は、

「この契約書修正は誰の担当ですか?」

「進捗管理者は誰ですか?」

「未対応時の確認ルートは何ですか?」

という話である。

しかし、そこを整理せず、

「後輩なんだから」

「机に置いたから知らない、じゃない」

「LINEで聞いて」

に変換する。

これはかなり危ない。

なぜなら、業務フローの未定義を、個人の善意と人間関係で埋めようとしているからだ。


4. 私用LINEを使わせる危うさ

さらに問題なのは、「LINEで聞いて」という指示である。

会社の業務連絡には、普通は会社のチャット、メール、電話、業務システムなどの公式ルートがある。

もちろん、緊急時に個人LINEを使う会社もあるかもしれない。 ただ、それは本来、かなり慎重に扱うべきものだ。

なぜなら、私用LINEには次のような問題があるからだ。

  • 業務記録として残りにくい
  • 上司や関係者が見えない
  • 「言った・言わない」が起きやすい
  • 休みの日の私的時間に侵入しやすい
  • 会社の正式な指示なのか、個人のお願いなのか曖昧になる

特に危ないのは、上司が「目をつぶる」と言うパターンである。

この言い方には、妙な上下関係がある。

本来、私用LINEで業務連絡をすること自体が微妙なら、管理者が正式ルートを整えるべきである。

それなのに、

「今回は目をつぶるから、君がLINEで聞いて」

と言われると、なぜか中継者が“許される側”になる。

これはおかしい。

善意で中継した人は、別に悪いことをしたわけではない。 むしろ、公式チャットで担当者に共有し、既読も確認し、原紙も渡している。

それなのに、未対応の穴を埋めるために私用LINEまで使わされる。

これは、非公式LINE黙認型・先輩責任ロンダリングである。

穴あき動物園が、ついに私用LINEまで穴埋め導線にしてくる状態だ。


5. つまりこういうこと:橋をかけた人を、橋の管理会社にするな

この問題を一言で言うなら、こうである。

善意で橋をかけた人を、後から橋の管理会社にするな。

中継した人は、中継した人である。

担当者ではない。 管理者でもない。 教育係でもない。 後輩の保護者でもない。

もちろん、職場では助け合いも必要だ。 自分の担当外でも、状況によってはフォローすることもある。

しかし、それはあくまで一時的な協力であって、あとから無限に責任を乗せていい理由にはならない。

「善意で手伝った人」が責められる職場では、人はだんだん手伝わなくなる。

なぜなら、手伝うたびに担当者にされるからだ。

これが続くと、職場全体にこういう空気が生まれる。

「下手に拾うと自分の仕事になる」

「関わると責任を押し付けられる」

「見なかったことにした方が安全」

「善意を出すと損をする」

そして最終的に、誰も自発的に動かなくなる。

それを見た上司が、またこう言う。

「主体性がない」

いや、違う。

主体性がないのではない。

主体性を出した人を、責任のゴミ箱にしてきた結果である。


6. 巻き込まれないための対策:証跡・範囲・確認者を残す

このタイプの責任ロンダリングに巻き込まれないためには、性格を変える必要はない。

必要なのは、境界線を文面に残すことだ。

対策1:共有した事実を残す

口頭だけで渡さない。 チャット、メール、タスク管理ツールなど、後から見える形で残す。

たとえば、こう書く。

本件、〇〇さん宛に共有しました。原紙は机上に置いています。

これだけでも、後から「共有していない」とは言われにくくなる。

対策2:自分の役割を明記する

一番大事なのは、「自分はどこまで対応したのか」を書くことだ。

私の方では、依頼内容の共有と原紙の引き渡しまで対応済みです。

これにより、自分が担当者ではなく、中継者であることを明確にできる。

対策3:進捗確認者を曖昧にしない

次回からは、こういう一文を入れると強い。

本件の進捗確認は、担当者または管理者からお願いいたします。

少し硬く感じるかもしれないが、これを入れないと、後から進捗確認まで自分の仕事にされることがある。

対策4:個人宛ではなく、関係者が見える場所に置く

担当者が個別チャットを無視しがちな場合、個別だけで送るのは危ない。

なぜなら、また「聞いたけど返ってこない」という状態を自分だけが抱えるからだ。

その場合は、関係者が見える業務用グループに送る方がいい。

たとえば、こうだ。

6/1に共有していた〇〇の件について、修正版未着との確認がありました。現在の対応状況を教えてください。6/1時点では、チャットで修正内容を共有し、原紙は机上に置いています。

この文面なら、責めていない。 謝っていない。 事実が残る。 進捗確認だけしている。

個別無視への対策にもなる。

対策5:謝らない

ここでうっかり、こう言ってはいけない。

私の確認不足でした。

これはかなり危険である。

本当に自分の担当で、自分が確認すべきだったなら謝るべきだ。

しかし、担当外の業務を善意で中継しただけなら、ここで謝ると、次から正式に自分の責任として扱われる。

謝るのではなく、事実を置く。

6/1時点でチャット展開・既読確認・原紙の引き渡しは完了しています。現在、担当者へ対応状況を確認中です。

これで十分である。


7. 会社側が本当にやるべきこと

この問題は、個人の気合いで解決するものではない。

会社側が本当にやるべきことは、次のようなことだ。

担当者を明確にする

誰が作業するのか。 誰が承認するのか。 誰が提出するのか。

これを曖昧にしない。

期限を明確にする

「対応お願いします」だけではなく、いつまでに対応するのかを決める。

進捗確認者を明確にする

担当者が対応していない場合、誰が確認するのか。 上司なのか、リーダーなのか、依頼元なのか。

ここを決めておかないと、なぜか気づいた人・善意で拾った人に負担が飛んでくる。

私用LINEを業務フローに組み込まない

緊急時の連絡手段として使うことがあるとしても、常態化させるべきではない。

業務連絡は、できる限り会社の公式ルートに残すべきである。

「後輩でしょ」で業務責任を上書きしない

後輩であることと、業務の責任者であることは別である。

先輩だから、すべての進捗を背負うわけではない。

教育係でもない人に、後輩管理責任を後出しで乗せるのは、かなり雑なマネジメントである。


8. まとめ:善意を出した人を罰する職場は、いずれ誰も助けなくなる

職場で一番危ないのは、善意で動いた人を罰することだ。

自分の担当ではないけれど、依頼を拾う。 担当者に共有する。 原紙を渡す。 状況をつなぐ。

こういう人がいるから、職場はなんとか回っている。

しかし、その人に対して、後から

「最後まで見ておけ」

「後輩でしょ」

「LINEで聞け」

「目をつぶる」

とやってしまうと、善意は消える。

人は学習する。

「あ、手伝うと損なんだ」

「拾うと担当にされるんだ」

「関わらない方が安全なんだ」

そうして、職場はどんどん冷たくなる。

だから必要なのは、個人の善意に頼ることではない。

担当者、期限、進捗確認者、連絡ルートを明確にすること。

そして、善意で中継した人を、後から担当者にしないこと。

橋をかけた人を、橋の管理会社にしてはいけない。

それをやり続ける職場は、穴あき動物園になる。

穴を塞げる人にだけ、水漏れの責任が飛んでくる。

でも本当に直すべきなのは、その人ではない。

穴の空いた業務フローそのものである。

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