上司は評価権者だから、絶対に従うべきなのか?――「上司を敵に回すな論」の罠

職場ではよく、こう言われます。

読書機能の使い方

聴く:本文を読み上げます。速読:語句を順に表示し、速さを調整できます。語学練習:別の言語版と対訳を読み比べます。保存:このブラウザーにブックマークし、プレイヤーの保存済み一覧から開けます。

この記事をシェア
広告
広告

「上司を敵に回すな」は本当か

職場ではよく、こう言われます。

上司を敵に回していいことはない
評価権者を敵にするな
サラリーマンとして働くなら上司は味方につけろ
上司に嫌われると評価が下がる
上司と戦うなら転職先を決めてからにしろ

これは、短期戦術としては分かります。

上司は評価に影響します。

業務量、優先順位、情報の流れ、異動希望、相談しやすさにも影響します。

だから、無駄に感情的にぶつかることは得ではありません。

しかし、そこから、

評価権者だから絶対に従え
上司を敵に回して良いことは1つもない
合わない上司でも我慢しろ
労働者がうまく適応しろ

まで行くと、かなり危険です。

それはまた、労働者側の自責論に戻っています。


評価権者だからこそ、上司側の責任がある

評価権者である上司を無駄に刺激しない。

これは戦術として分かります。

しかし本来、評価権を持っている側には、それだけ責任があります。

上司には、

  • 好き嫌いで評価しない
  • 感情で業務を歪めない
  • 部下に不利益を与えない
  • 必要な情報を共有する
  • 判断基準を示す
  • 相談できる環境を作る
  • 権限を濫用しない
  • 部下を萎縮させない
  • ハラスメントをしない

という責任があります。

評価権者だからこそ、慎重であるべきです。

それなのに職場論では、

評価権者だから逆らうな
味方につけろ
嫌われるな
うまくやれ

という話になりがちです。

これはおかしいです。

評価権者だから労働者が気を遣え、ではなく、評価権者だからこそ濫用するな、が本来の筋です。


「上司を敵に回すな論」の罠

「上司を敵に回すな論」の問題は、ハラスメント気質の上司にも適用されてしまうことです。

普通の上司なら、関係を悪化させないようにするのは合理的です。

しかし、相手が次のような上司なら話は変わります。

  • 人格攻撃する
  • 不機嫌で支配する
  • 好き嫌いで評価する
  • 報連相を潰す
  • 相談を入口で潰す
  • 責任転嫁する
  • 部下を萎縮させる
  • ミスを公開処刑する
  • 判断しないのに失敗だけ責める
  • ハラスメント気質がある

このような上司に対して、

敵に回すな
味方につけろ
反面教師にしろ
うまくやれ

だけで済ませるのは危険です。

それは、労働者を危険な上司の下に固定する言葉になります。


ハラスメント上司にしがみついて、何が得られるのか

ハラスメントしてくる上司の下にしがみついて、何が得られるのでしょうか。

もちろん、すぐに辞められない事情はあります。

生活費。

家賃。

家族。

ローン。

転職活動の時間。

次の職場への不安。

実績回収。

異動の可能性。

これらがあるので、即辞めろとは言えません。

しかし、ハラスメント気質の上司の下に居続けることで失うものもあります。

  • 神経
  • 睡眠
  • 自尊心
  • 判断力
  • 仕事への意欲
  • 休日の回復時間
  • 転職活動のエネルギー
  • 副業・資産形成の時間
  • 人間への信頼
  • 自分の色

これは、まさに静かなる退色です。

反面教師として学べることはあるかもしれません。

しかし、その反面教師代として、自分の神経を払い続ける必要はありません。


上司を敵に回すことが目的ではない

ここで誤解してはいけないのは、目的は「上司を敵に回すこと」ではないということです。

目的は、自分の神経と生活を守ることです。

だから、感情的に喧嘩する必要はありません。

正面から殴り合う必要もありません。

上司に勝つ必要もありません。

必要なのは、

  • 無駄な正面衝突を避ける
  • でも、削られ続けない
  • ログを取る
  • 相談する
  • 異動を検討する
  • 転職準備をする
  • 自分の責任範囲を明確にする
  • 最低限の業務連絡に絞る

ことです。

つまり、

敵に回すな

ではなく、

正面衝突せず、退避ルートを作れ

です。


「上司を敵に回して良いことはない」は言いすぎ

上司を感情的に敵に回すこと自体は、得策ではない場合が多いです。

しかし、合わない上司や危険な上司から離れることには、明確なメリットがあります。

  • 神経が回復する
  • 反芻が減る
  • 仕事に集中できる
  • 不機嫌に振り回されなくなる
  • 自分の強みが出やすくなる
  • 別の上司なら普通に評価される可能性がある
  • 静かなる退色を止められる
  • 休日を職場に奪われにくくなる

これは普通に良いことです。

だから正確には、

上司を無駄に敵に回さない方がいい

であって、

合わない上司の下に居続けるしかない

ではありません。


上司が問題のときのレベル分け

上司が合わない場合は、段階で見た方がいいです。

Lv1:普通に合わないだけ

性格や価値観が合わない。

ただし業務指示はまともで、評価も大きく歪んでいない。

この場合は、最低限の業務連絡で距離を取ればよいです。

Lv2:不機嫌・好き嫌い・入口検閲がある

話しかけるたびに神経を使う。

好き嫌いで対応が変わる。

報告や相談の入口で止められる。

この場合は、口頭を減らし、メール・チャット・メモで記録を残します。

Lv3:評価や業務に実害がある

評価が明らかに歪む。

必要な情報が渡されない。

責任転嫁される。

業務量や優先順位で不利益が出る。

この場合は、時系列ログを取り、信頼できる上位者・人事・別部署に相談します。

Lv4:神経が明確に削れている

出社前から動悸や強い緊張がある。

休日まで反芻する。

仕事への意欲が失われる。

静かなる退色が進んでいる。

この場合は、異動希望・転職準備・有給・休職も含めて退避設計が必要です。

Lv5:ハラスメント・人格攻撃・継続的な不利益

人格攻撃、暴言、継続的な不利益、明確なハラスメントがある。

この場合は、証拠を残し、社内外の相談窓口も検討します。


会社全体が悪いのか、上司個体が悪いのかを分ける

上司がしんどいときは、会社全体がダメなのか、上司個体が問題なのかを分ける必要があります。

会社全体が構造的に死んでいる場合

  • どの部署でも責任転嫁がある
  • ハラスメントが放置されている
  • 人事が機能しない
  • 上位者も話を聞かない
  • 異動しても文化が同じ
  • 長時間労働や好き嫌い評価が全体にある

この場合は、転職が現実的です。

上司個体が問題の場合

  • 他部署にはまともな上司がいる
  • 上位者は話を聞く
  • 人事や相談窓口が機能する可能性がある
  • 異動で改善する余地がある
  • 会社全体の制度はまだ使える

この場合は、異動・配置転換・上位者相談で改善する可能性があります。

局所防衛できる場合

会社全体に穴はあるが、自分の周囲だけは仕組みを作れる。

上位者が話を聞く。

紙で出せば通る。

自分の担当範囲で確認ルールや境界線を作れる。

この場合は、即転職ではなく、局所防衛も選択肢です。


ログを取って、紙で出す

上司が問題の場合、感情だけで相談すると通りにくいことがあります。

相性の問題では? 受け取り方の問題では? もう少し頑張れない? 具体的に何が困っているの?

と言われることがあります。

だから、ログを取ります。

日時:
場所:
発言・指示:
自分の対応:
業務への影響:
再発状況:
相談したいこと:
希望する対応:

これを時系列で整理します。

AIを使ってもいいです。

紙や資料にして、

  • 事実
  • 業務影響
  • 自分の改善点
  • 上司・環境側の問題
  • 希望する対応
  • 異動希望
  • 再発防止案

をまとめます。

まともな上位者なら、感情論よりも動きやすくなります。


現場で使える言い方

1. 感情ではなく業務影響で相談する

個人的な相性だけではなく、業務上の確認や相談がしづらくなっており、手戻りや判断遅れが出ています。

2. 評価権の濫用ではなく、評価基準の明確化として聞く

評価や業務指示の基準を明確にしたいです。現在、どの行動が評価上問題になっているのか確認させてください。

3. 異動希望を出す

現在の上司との関係性により、業務上の相談・確認に支障が出ています。別部署であれば、これまでの経験を活かして貢献できると考えています。

4. ハラスメント性がある場合

継続的な発言・対応により、心理的負荷が大きく、業務遂行にも影響しています。事実関係を時系列で整理しましたので、相談させてください。

5. 正面衝突せず距離を取る

今後は認識違いを減らすため、重要な指示や判断については、メール・チャットでも確認させていただきます。


まとめ

上司は評価権者です。

だから、無駄に感情的に敵に回すのは得策ではありません。

しかし、

評価権者だから絶対に従え
上司を敵に回して良いことはない
ハラスメント気質でも味方につけろ
労働者がうまく適応しろ

という話はおかしいです。

評価権者だからこそ、上司には濫用しない責任があります。

好き嫌いで評価しない。

感情で業務を歪めない。

必要な情報を共有する。

判断基準を示す。

部下を萎縮させない。

それが上司側の責任です。

労働者側は、感情的に喧嘩する必要はありません。

しかし、神経を削られ続ける必要もありません。

必要なのは、

  • ログ
  • 相談
  • 異動
  • 転職準備
  • 最低限運用
  • 局所防衛
  • 責任分界

です。

上司を敵に回すことが目的ではありません。

ハラスメントしてくる上司の下にしがみつき、自分の色を失わないことが目的です。

正面衝突ではなく、退避設計。

それが職場サバイバルです。


PRこのテーマの本を探す

この記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。 広告について Amazonのアソシエイトとして、mendoi-appsは適格販売により収入を得ています。

広告

今日これ読んで

この記事を読んだ人の次の疑問に、それぞれ答える記事です。

すべての記事から探す「職場の人間関係」の記事をもっと見る

他の記事を探す

すべての記事

めんどいちゃん

この記事を書いた人

めんどいちゃん

仕事や日常の「めんどい」を構造化して、次に動きやすくする記事を書いています。

このサイトについて
広告

新着記事

  1. 1『氷の城壁』『氷の城壁』小雪は冷たいんじゃないの。中で味噌が発酵してるのよ――「分かるわお姉さん」と読む反芻・脳内予想・境界線
  2. 2面接で「圧が強い人がいても大丈夫?」を3回聞かれたら、もう会社説明になってない?
  3. 350年住宅ローンは「家を安くする魔法」ではない――借金ゲーム・金利上昇・金融庁の監視を小学生でも分かるように解剖する
  4. 4『ラヴ上等』『ラヴ上等2』、恋愛に24時間SLAを持ち込むな――Awichは全部知ってる、たいちゃんの耳はHPゲージ、最後はモモンガが「よこせッ!」
  5. 5『ちいかわ』装備:モモンガ、属性:六角堂帰り――人類は他人の「設定資料集」を勝手に書く
広告