この記事の要点
- FF6ピクセルリマスター版のオペラ座は、歌唱と演出の強化がかなり大きい。
- SFC版で脳内補完していた「セリスの歌」が、だいたい公式歌唱として答え合わせされた感覚がある。
- ただし、セリスがうますぎる。元帝国将軍の即席代役とは思えない。
- さらに、歌詞選択後の花束パートがだるい。暗転や演出のせいで「もうムービーかな」と思わせておいて、まだ操作させるのが罠。
- SFC版でこの後のオルトロス戦や飛空艇イベントを何度もやり直した記憶がある人ほど、ここは普通にトラウマ再燃ポイントになる。
ピクセルリマスター版のオペラは、普通にすごい
FF6ピクセルリマスター版のオペラ座は、かなり大きく変わっている。
スクウェア・エニックス公式でも、ピクセルリマスター版『FINAL FANTASY VI』ではオペラシーンが「7言語の歌唱」で新生し、日本語・英語・フランス語・イタリア語・ドイツ語・スペイン語・韓国語の歌唱が、ゲームの言語設定に合わせて再生されると案内されている。
SFC版では、もちろん本物の歌声はない。
でも当時プレイしていた側の脳内では、なぜかちゃんと歌っていた。
ドット絵。 擬似歌唱っぽいメロディ。 短い歌詞。 舞台上のセリス。 プレイヤーが選ぶ台詞。
それだけで、頭の中ではちゃんとオペラになっていた。
だからピクセルリマスター版で本当に歌が入ったとき、感覚としては「新しい演出」というより、
あ、昔の自分の脳内補完、だいたい合ってたんだ。
という安心感がある。
RPG Siteのインタビュー記事でも、植松伸夫氏が「オリジナル版には歌唱がなかったので、実際に歌を入れられたらいいと思った」という趣旨の話をしている。 まさに、昔のプレイヤーの脳内で鳴っていたものを、あとから公式が音源化したような場面になっている。
ただし、セリスがうますぎる
問題は、セリスがうますぎることだ。
本来の状況はこうである。
セリス:元帝国将軍
役割:急きょオペラ女優マリアの代役
目的:セッツァーを釣るための囮
準備:ほぼ即席
普通に考えたら、かなり無茶な作戦である。
軍人が急に舞台に立ち、台本を覚え、観客の前で歌い、誘拐される予定の人物になりきる。
なのにピクセルリマスター版のセリスは、普通に歌がうまい。
いや、うますぎる。
もう「代役で必死にやっている元将軍」ではなく、普通に劇場で成立する歌唱になっている。
感動はする。 でも同時に思う。
セリス、お前どこで声楽やってたんだよ。
この違和感は悪い意味だけではない。
セリスがマリアになりきる名シーンとしては強くなっている。 ただ、キャラクター設定から見ると、ちょっとプロすぎる。
SFC版の脳内補完では、「きっと不慣れだけど必死に演じているんだろう」という余白があった。 ピクセルリマスター版は、その余白をかなり豪華な歌唱で埋めてきた。
その結果、名シーンとしては強化された。 一方で、「即席代役感」は少し減った。
問題は花束QTEである
ここまではいい。
歌が入った。 演出が強くなった。 セリスがうますぎる。 それは好みの問題で済む。
しかし、花束パートは普通にだるい。
オペラの前半は、歌詞選択が中心だ。
1回目:いとしの……
2回目:かなしいとき……
3回目:のぞまぬちぎり……
ここまでは「歌詞を選ぶイベント」だと思う。
ところが、その後に急にプレイヤー操作が入る。
花束を拾う。 階段を上がる。 バルコニーへ行く。 タイミングを合わせる。 間に合わないと失敗。
攻略情報でも、オペラ座では歌詞選択、ドラクゥへの追従、花をバルコニーへ運ぶ操作、さらにオルトロス阻止までが一連の失敗判定に含まれ、うまくいかないとやり直しになると説明されている。
この設計自体は、SFC時代の「プレイヤーが舞台に参加する」演出としては理解できる。
問題は、ピクセルリマスター版では演出が豪華になりすぎて、逆に操作要求が見えにくくなっていることだ。
暗転する。 歌が続く。 演出が流れる。 画面がムービーっぽくなる。
すると、プレイヤーは思う。
あ、ここからはもう見るだけのシーンかな。
しかし実際には、まだ操作が必要である。
これが罠すぎる。
「セリスの失敗」ではなく「俺の親指の失敗」になる
この場面のだるさは、単に難しいからではない。
失敗したときの感情が、物語ではなく操作ミスに向いてしまうからだ。
本来、オペラ座はセリスの名シーンである。
帝国の将軍だったセリスが、ロックたちと行動する中で、マリアとして舞台に立つ。 自分自身とは違う役を演じながら、どこか自分の心情とも重なるような歌を歌う。
ここは本来、セリスを見る場面である。
ところが、花束パートで失敗すると、意識はこうなる。
セリス:完璧に歌っている
俺:花束を持って階段を上がるのに失敗
ゲーム:間に合わなかった
俺:は?
セリスの感情ではなく、プレイヤーの操作ミスが前面に出てしまう。
しかも失敗すると、同じ歌唱や流れを何度も見ることになる。
これは名シーンの再鑑賞ではない。
舞台AD試験の再受験である。
4回聞かされるのは、さすがにきつい
オペラ座は、失敗してもすぐ終わりではない。
Final Fantasy Wikiでは、オペラで失敗しても興行主からさらに3回チャンスが与えられ、それも失敗するとゲームオーバーになると説明されている。
つまり、場合によっては同じ場面を何度もやる。
これがかなりきつい。
歌は良い。 演出も良い。 セリスも良い。
でも、同じ箇所で何度も失敗すると、感動より先に疲労が来る。
1回目:おお、歌ってる!
2回目:まあ、次は行ける。
3回目:花束どこまで行けばいいんだよ。
4回目:もういい。くたばれ。
名シーンなのに、プレイヤーの気持ちがどんどん荒れていく。
これはかなりもったいない。
SFC版で飛空艇イベント落ちしていた人には、さらに刺さる
個人的に一番きついのは、SFC版の記憶と結びつくところである。
SFC版で、オペラ後のオルトロス戦や飛空艇イベント周辺で何度も止まっていた人にとって、この区間はもともとトラウマ地点だったりする。
オペラ成功
↓
オルトロス戦
↓
飛空艇イベント
↓
フリーズ
↓
またオペラ
↓
またオルトロス
↓
また飛空艇
このループを経験していると、ピクセルリマスター版のオペラでも心拍が上がる。
「今回は落ちないよな?」 「また同じところやらされないよな?」 「このあと飛空艇、大丈夫だよな?」
そんな気持ちで進めているところに、花束QTEで失敗させられる。
これは普通にしんどい。
もちろん、これは全プレイヤー共通の仕様ではなく、あくまで当時の実機環境や個人の体験に由来する記憶かもしれない。
でも、ゲーム体験とはそういうものでもある。
攻略本や公式設定には残らなくても、
あの場面で何回も落ちた。
という記憶は、プレイヤーの中に残る。
だからピクセルリマスター版で同じ場所に来ると、単なる懐かしさではなく、過去のフリーズ霊との再戦になる。
良いリメイクと、余計な操作は別問題
誤解したくないのは、ピクセルリマスター版のオペラ演出そのものはかなり良いということだ。
7言語歌唱。 新しい舞台演出。 本当に歌うセリス。 SFC版の脳内補完への答え合わせ。
これは素晴らしい。
Nintendo Lifeでも、FF6のオペラ座は「カットシーンをプレイできる」ようなインタラクティブな場面として語られており、ピクセルリマスター版ではHD-2D的な再構成や歌唱追加によって、より現代的な演出になったことが論じられている。
ただし、「演出を強化すること」と「操作の分かりづらさを増やすこと」は別である。
むしろ演出が豪華になるほど、プレイヤーは画面を鑑賞モードで見てしまう。
だからこそ、操作が必要なら、もっと明確にしてほしかった。
例えば、こういう改善があればかなり印象は変わったと思う。
・花束パート開始前に明確な操作説明を出す
・制限時間を見える形で表示する
・失敗したら花束パートから再開する
・2回目以降は歌唱パートをスキップできる
・バルコニーの目的地を光らせる
・暗転後に操作が必要なら、入力待ちUIを強く出す
これだけで、「名シーン」から「だるいミニゲーム」への転落はかなり防げたはずだ。
オルトロス戦も、昔の記憶があると別の敵になる
オペラ座の後には、オルトロス戦がある。
普通に見れば、いつものギャグ寄りのタコである。
しかし、昔ここで何度もやり直した人にとっては、オルトロスはただの中ボスではない。
オルトロス:ゲーム内の敵
フリーズ記憶:プレイヤー側の敵
この2体が合体している。
戦闘自体はそこまで難しくない。 でも、再挑戦の記憶があると、画面に出てきた瞬間に「またお前か」となる。
オルトロスは悪くない。 いや、作中では悪い。 でもこの件に関して一番悪いのは、当時のフリーズと、再挑戦導線の重さである。
それでも突破した瞬間は気持ちいい
何度か失敗して、花束を持って、バルコニーまで行って、ようやく突破する。
その瞬間は普通に気持ちいい。
感動というより、勝利である。
はい勝った。
くたばれ。
名シーンに対して言う言葉ではない。
でも、実際の感情としてはそれに近い。
セリスの歌に感動している自分と、花束QTEにキレている自分が同時にいる。
これがピクセルリマスター版オペラ座の不思議なところだ。
美しい。 すごい。 懐かしい。 でも、だるい。
全部同時に成立している。
まとめ:名シーンは強化された。でも花束QTEは要らん
FF6ピクセルリマスター版のオペラ座は、間違いなく特別なリメイクである。
SFC版で脳内補完していた歌が、本当に歌になった。 舞台演出も豪華になった。 セリスの名場面としての力も増した。
ただし、花束QTEと見えない制限時間は、かなり人を選ぶ。
特に、昔SFC版でこの後のオルトロス戦や飛空艇イベントを何度もやり直した記憶がある人にとっては、ここは単なる名シーンではない。
過去のトラウマ地点である。
だから結論はこうだ。
ピクセルリマスター版オペラの歌唱追加:すごい
セリスの歌:うますぎる
脳内補完の答え合わせ:最高
花束QTE:だるい
暗転後の操作要求:罠
4回聞き直し:きつい
オルトロス再戦:昔の亡霊込みで重い
FF6のオペラ座は、今でも名シーンだ。
でも、ピクセルリマスター版をやって思った。
名シーンだからこそ、操作ストレスで邪魔しないでほしい。
セリスは完璧に歌っていた。
失敗していたのは、俺の花束配送だった。
それが一番納得いかない。
