仕事で「それ、慣習では?」と思ったときの質問
仕事で違和感が出たら、次の順番で見る。
目的
- この仕事の目的は何か
- 誰の何を良くするのか
- これが終わると、どんな状態になるのか
- そもそもやる必要があるのか
仕事を終える条件
- 最終的に何を出せばいいのか
- Excelなのか、文章なのか、判断材料なのか、作業完了なのか
- どこまで細かく書く必要があるのか
- 何があればOKなのか
判断者
- 誰が承認するのか
- 誰向けの資料なのか
- 誰の判断材料なのか
- 後から別の人が否定しないか
責任範囲
- 自分が決めていいことはどこまでか
- 自分は作業者か、提案者か、判断者か
- 仕事を頼んだり方針を決めたりする側の説明責任まで背負わされていないか
- 他部署や上位者の事情を、自分が勝手に物語化していないか
制約
- 期限はいつか
- 予算はあるか
- 法令・ルール・個人情報は関係するか
- 現場の負担はどれくらいか
- 使える道具や仕組みと、手伝ってもらえる人は何か
最小手数
- もっと少ない手数で目的を達成できないか
- 繰り返す作業を道具に任せられないか
- 毎回同じ形を使い回せないか
- 例外だけ人が見ればよくないか
- 毎回説明するより、手順書やチェックリストでよくないか
「これは土台となる事実で見た方がいい」サイン
次のサインがある仕事は、最初に、何をどこまでやるか確かめた方がいい。
- 依頼文がふわっとしている
- 「いい感じに」「現状と課題を」「とりあえず」が多い
- 誰向けか分からない
- 判断者が見えない
- 期限だけ決まっている
- 目的より先に作業が来ている
- 後出しされそう
- 上の事情を察する必要がありそう
- 自分の責任ではない説明まで求められそう
- 体力や感情が削られそう
こういう案件は、作業前に止める。
止めるといっても、反抗する必要はない。
次のように確認すればいい。
念のため確認です。
今回の目的は、〇〇の判断材料を整理することで合っていますか。
作るものは、A4 1枚程度の概要でよいでしょうか。
判断者は〇〇さん想定でよいでしょうか。
こちらで判断せず、事実整理と選択肢提示までで進めます。
これだけで、後から揉める可能性を下げられる。
肩書きだけで信じていないか、自分に聞く質問
有名人や成功者の言葉を見たときは、次のチェックをする。
- その人が言っていなくても、自分は納得するか
- 反対の立場の人が言っていても、同じように評価するか
- 自分が見てきたことの記録と一致しているか
- その言葉を使うと、具体的に何が変わるか
- 使った結果、自分の暮らしで、得られるものが負担を上回るか
- おかしい部分を切れるか
- その人の他の発言まで正しい扱いにしていないか
- 反例を考えたか
- 自分の条件と、その人の条件の違いを見たか
このチェックを通れば、かなり安全に使える。
「それはおかしい」と言えることが防衛になる
本当に危ないのは、有名人の言葉に納得することではない。
おかしいと思ったときに、おかしいと言えなくなることだ。
「この人は成功者だから、自分の違和感の方が間違っているのかも」
こうなったら危ない。
一方で、こう言えるなら大丈夫だ。
この考えは使える。
でも、この部分はおかしい。
この人の環境では正しいかもしれないが、自分には合わない。
この言葉は気持ちいいが、実際に使える条件がない。
これは自分の暮らしにとって、得られるものより負担が大きいから取り入れない。
これが、自分で考えるということだと思う。
目次に戻る
まとめ:誰が言ったかで入口は変わる。採用は中身で決める
成功者の言葉が刺さること自体は、悪くない。
有名人が言っているから読む。 大勢に広まっているから気になる。 成功者の言葉だから一度見る。
これは普通である。
人間の時間は有限なので、先に読むものを選ぶ手がかりは必要だ。
ただし、採用は別である。
採用するときは、誰が言ったかではなく、次を見る。
- 何を説明できるか
- 自分が見てきたことの記録と一致するか
- どの条件で使えるか
- どの条件で危ないか
- 何をすればよいか具体的に分かるか
- 使った結果、自分の暮らしで、得られるものが負担を上回るか
- おかしい部分を切れるか
これができているなら、成功者の言葉を見ても、信者ではない。
素材として使っている。
確かな事実から考え直す方法も同じだ。
「みんなそうしている」 「前からこうしている」 「社会人なら普通」 「上が言っている」
こういう言葉を、いったん分解する。
目的は何か。 何を作れば終わりか。 判断者は誰か。 制約は何か。 責任範囲はどこまでか。 最小手数は何か。
そうやって、慣習を法則から引き剥がす。
ただし、土台となる事実だけで人間を材料にしない。
必要なのは、
土台となる事実
暮らしで得られるものが負担を上回ること
人間の安全圏
この3点セットである。
言葉は拾う。 人格は崇拝しない。 自分の暮らしで、得られるものが負担を上回るか確かめる。
これが、文章や答えを作る道具が広まった時代・誰でもネットへ投稿できる時代の「自分で考える力」のかなり実用的な形だと思う。
目次に戻る
参考リンク・関連情報
参考リンク
[^musk-first-principles]: イーロン・マスク氏がKevin Rose氏と対談で話した、過去の似たやり方を当てはめるだけでなく、基本的な事実まで分けて考え直すという趣旨を紹介した資料。参考:James Clear - First Principles、Business Insider - Elon Musk first principles、YouTube - The First Principles Method Explained by Elon Musk
[^authority-bias]: 立派な肩書きや権限を持つ人が言ったからと、その意見や判断の影響を受けやすくなる傾向を説明した資料。参考:The Decision Lab - Authority Bias、Korteling et al. 2023, Cognitive bias and how to improve sustainable decision making
関連記事
- 忙しいのに豊かにならない働き方――たくさん働いても、見返りが小さいのはなぜか
- 「上には事情がある」だけでは動けない――若手には、何をどこまでやるか伝えてほしい
- 人が順番に不機嫌になる職場で、担当や手順の問題を考える
- 危うさに気づいたら、すっと離れていい――人の考え方やつらい職場から身を守る
- 「気持ちは分かります」が逆効果になる相手――先に話の争点を整理した方がいいとき
セクションリンク
- 成功者の言葉はなぜ刺さるのか?
- 確かな事実から考え直す方法とは何か?
- 一般人のそれっぽい話に引っかかる理由
- 成功者の言葉を素材にする考え方
- 確かな事実から考え直す方法を実務で使うチェックリスト
