『HUNTER×HUNTER』キメラアント編の場面について考える。以下の人物の気持ちや戦いの見方は、描写からの解釈である。
王本人の願いと、理想の王の姿が食い違う
合理性だけで考えれば、コムギはキメラアント王国にとって危険である。王の判断を乱し、弱者への関心を生み、支配者としての一貫性を崩す。プフはまさにこの論理を採用し、コムギを消し、王の記憶回復を妨げようとする。
しかしピトーは、王が負傷したコムギを抱え、敵の前で隙を晒してまで治療を命じた瞬間を見た。そこで理解したのは、コムギの戦略的価値ではなく、王にとって彼女を失うことが耐え難いという事実である。
ピトーの忠誠は、王の地位や種族全体の利益だけへ向いていない。「今ここにいる王が本当に望んでいるもの」を守る。だからゴンに殺される危険があっても、治療を中断しない。コムギ本人への普遍的な慈愛というより、王の心を守るためにコムギを守っている。
プフは王を深く愛しているが、その愛は、王を自分の理想へ戻そうとする形でも表れている。王がどう変わりたいかより、自分が信じる完全な王へ戻そうとする。王本人より「王であるべき姿」に仕えている。
ユピーは人間との戦闘で、敬意、約束、誇り、見逃すという非効率な選択を獲得した。だからピトーの変化を見たとき、ただ命令に従うのとは違う思いが、王への尽くし方を変えたと理解したように見える。自分にも同じ変化が起きていたからである。
見た目が最も人間に近いプフが、人間的な揺らぎを拒絶する。見た目が最も怪物的なユピーが、敵の心を理解する。ピトーはその中間で、王の感情を自分の行動へ引き受ける。護衛軍三人の違いは、忠誠の強弱ではなく、愛する対象をどこまで本人のまま受け入れるかにある。
