中間管理職という防波堤の限界と、上位層がつくる沈黙
良い直属上司だけでは足りない
有能な部下を理解する直属上司がいたとします。
- 話を聞く
- 強みを認める
- 任せる
- 不要な圧を止める
- 上へ説明する
それでも、さらに上位の管理者が、
- そんな問題を出すな
- 会社には言えない
- 若手に余計なことを言わせるな
- 波風を立てるな
- 今まで問題なく回っていた
- お前の管理が悪い
と返せば、直属上司は防波堤になります。
部下を守るたびに、自分が上から攻撃されます。
中間管理職は、上を説得する前に「風を読む」
組織研究では、中間管理職が重要な問題を上層部の議題へ載せようとする行動を、イシュー・セリングと呼びます。
1997年の研究では、中間管理職が問題提起を行うかを判断するとき、
- 上層部が聞く姿勢
- 支援的な文化
- 否定的結果への恐怖
- 不確実性
- 自分のイメージへの危険
を見ていました。[11]
つまり、問題を上へ出す前に、
この会社で言って安全か
を判断しています。
直属上司が優秀でも、上位層が聞かないなら、提案は止まります。
参加型経営が中間管理職の地位を揺らすこともある
2023年の縦断的事例研究では、現場社員を戦略形成へ広く参加させる過程が、中間管理職の従来の「戦略を考える人」という立場を揺らし、その地位を維持しようとする動きを生むことが示されました。[12]
これは、中間管理職が全員悪いという話ではありません。
役割設計が曖昧なまま、
現場の声を増やす
管理職は支援に回る
とだけ言えば、管理職は、
自分の存在価値が消えるのではないか
と感じる可能性があります。
参加型施策を成功させるには、管理職の価値を、
答えを独占する人
から、
情報を統合し、判断を整え、実行を支える人
へ再定義する必要があります。
防波堤が壊れる三つの経路
1. 上への適応
直属上司が部下を守るのをやめ、上位層の期待へ合わせます。
2. 下への圧の転送
上から受けた圧を、指示、説教、追加業務として部下へ流します。
3. 自身の離脱
異動、休職、退職、心理的撤退へ進みます。
良い管理者を置くだけでは、組織は変わりません。
良い管理者を、上位層から守る制度
が必要です。
組織が変えるべき評価指標
管理者評価に、業績数字だけでなく次を入れます。
- 部下の発言後に何を返したか
- 不採用理由を説明したか
- 悪い情報を上へ出したか
- 部下の成果を自分の成果として奪っていないか
- 役割と権限を明確にしたか
- 会議で決定と担当を残したか
- 同じ管理者の下に離職・休職・異動希望が偏っていないか
- 他部署から見た情報共有と協働の質
- 上位者へ異論を出した管理者が不利益を受けていないか
米国の公的機関が示す支援的リーダーシップ
米国NIOSHは、上司支援、仕事の裁量、過負荷、対人葛藤などを職場ストレス要因として扱い、支援的なリーダー行動を改善する研修が、健康、コミュニケーション、仕事の進め方、離職意向などへ有益な影響を持ち得ると整理しています。[13]
重要なのは、管理者へ「もっと優しくしろ」と言うだけではないことです。
- 上司自身の業務負荷
- 判断権
- 上位層の聞く姿勢
- 悪い情報を出した際の保護
- 管理研修
- 多方向評価
を含めた設計が必要です。
結論
有能な部下を活かすには、本人の能力と直属上司の理解だけでは足りません。
必要なのは、
部下の能力
+ 直属上司の理解
+ 上位層から潰されない後ろ盾
です。
防波堤を個人の勇気だけで維持させる会社は、いずれ良い管理者から失います。
