1. 「無制限オートハック」を入れた。これで勝ったと思った
PRAGMATAで一番だるかったもの。それは敵ではない。
ハッキングである。
避ける。撃つ。敵を見る。位置を取る。そこまでは主人公のおじさんの仕事なので分かる。
ところが突然、相棒のディアナが担当しているはずの電子戦まで、こちらの左手とマウスに降ってくる。
おじさん「戦闘します」
ディアナ「ハッキングするね」
ゲーム「ではプレイヤーさん、盤面を解いてください」
俺「なんで?」
そこで「Unlimited Auto Hack」という名前のMODを導入した。
名称だけ読めば、もう勝ちである。
俺「ディアナに外部脳を増設しました」
ところが最初の一回は一瞬で終わったように見えたのに、その後は普通に手動ハッキングへ戻った。
外部脳、試用期間一回。
Luaを確認すると理由は単純だった。このMODは「勝手にオートハックを発動する」ものではなく、ゲーム本来のオートハッキングを使ったときのゲージ消費値をほぼゼロにするものだった。[1]
要するに、名前から想像したのは
「ディアナが全部やる」
だったが、実物は
「ディアナがやるときの経費をほぼゼロにする」
だった。
総務と現場くらい違う。
2. 欲しかったのは無料化ではない。「ディアナの自立」である
ここで要求仕様が明確になった。
欲しいのはゲージ無限ではない。
敵を見つけたら、ディアナが勝手にハッキングしてほしい。
なぜなら主人公とディアナは別個体だからである。
主人公のおじさんの担当は、走る、避ける、撃つ。
ディアナの担当は、電子戦。
なのにプレイヤーが両方を同時に処理すると、組織図だけ分業して実務は一人に全部載っている会社になる。
役割分担とは。
調べると、完全放置型の定番MODは見つかりにくい一方、「Maverick's Hacking Matrix」のように盤面を簡略化し、オートハッキングを強くするMODは存在する。[2]
さらにトレーナー系では無制限オートハック、ハッキングノード無限、弾薬、ダメージ倍率、各種所持品編集まで用意されている。[3]
PCゲーマーの歴史は長い。
誰かが「これ毎回やるの、だるくない?」と思う。
その数日後には、知らない誰かがだいたい消している。
3. 周回もしたくない。なら収集量も増やす
ハッキングを外注したら、次に気になったのが収集である。
ゲーム「強くなりたければ集めてください」
俺「一周で終わりたいです」
ゲーム「では探索を――」
俺「倍率を上げます」
Lunafilament Multiplierは拾得量を1~100倍まで変更できる。[4]
さらにPRAGMATA Trainerでは、LunafilamentだけでなくUpgrade Components、Pure Lunum、Cabin Coinsなどの所持数・倍率編集も扱える。[3]
これがいい。
999個直接入れると探索自体が死ぬ。
しかし「一個見つけたら五個扱い」「一個見つけたら十個扱い」なら、探索の意味は残る。
発見する喜びは残す。周回だけ殺す。
これはチートというより、俺専用就業規則である。
4. PCゲームの本当の強さは、面倒だけ解雇できること
家庭用ゲーム機では、開発者の設計とかなり正面から付き合うことになる。
開発「このテンポで遊んでください」
俺「ここだけ面倒です」
開発「仕様です」
終了。
PCでは違う。
俺「ここだけ面倒です」
知らない外国人「消しといたぞ」
俺「ありがとう」
この差は大きい。
難易度を下げたいわけではない。
面白くない工程を減らしたい。
ハッキングはディアナに渡す。収集量は倍率を上げる。周回要求は一周に圧縮する。
作品のコンセプトを全部ありがたく履修する必要はない。
美術、世界観、キャラクター、物語、戦闘の気持ちいい部分だけ残せばいい。
開発「二人を同時に操る革新的アクションです!」
俺「分業します」
5. 16時「プール行くか」→20時「おはよう」
ゲームの面倒を削っていたら、現実世界ではもっと大胆な最適化が起きた。
昼まで寝た。
夕方になった。
16時「プール行くか」
少し横になった。
20時「……おはようございます」
三時間半以上、完全に寝た。
プールは消えた。
運動計画は消えた。
残ったのは睡眠だけだった。
しかし仕事へ行く必要がない長期休暇中だと、これが驚くほどノーダメージである。
普通の平日なら、20時起床は事件だ。
長期休暇中なら、
「じゃあ今からイオン歩くか」
で処理できる。
プールによる有酸素運動は失敗したが、猫としての完成度は上がった。
6. 有給休暇、猫に給与明細を持たせる制度
さらに強いのが、有給休暇である。
厚生労働省は年次有給休暇を、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するための休暇で、取得しても賃金が減額されないものと説明している。[5]
つまり制度上、
寝る。 起きる。 給与は出る。
が成立する。
もちろん永続する仕組みではない。有給は有限であり、普通は仕事へ戻る。
それでも長めにまとめて使うと、制度の異常な強さを体で理解する。
猫なのに給与明細だけ人間。
これは強い。
7. もっと面白かったのは「職場の反芻が消えた」こと
長く寝たことより重要だったのは、頭の中から職場が消えたことである。
「あれどうなった」
「明日これを処理しないと」
「あの発言は何だった」
「次は何を言われる」
そういうバックグラウンド処理が、ほぼ走っていない。
すると空いた場所へ何が入ったか。
どこ遊びに行こうかな。
これだった。
心理学では、勤務時間外に仕事から心理的に切り離されることを「psychological detachment」と呼ぶ。研究レビューやメタ分析では、仕事から切り離せることは、疲労の少なさ、生活満足度、幸福感、睡眠などと関連している。[6][7]
だから「仕事を考えなくなったら、脳が遊び先を探し始めた」という変化は、少なくとも回復研究の方向とは矛盾しない。
脳内で重い常駐ソフトが止まった。
空いたメモリで起動したのが、
旅行検索。
人間、分かりやすい。
8. 「仕事自体ない方がいいかも」は、何を意味するのか
ここで自然に出てくる。
「仕事自体、ない方がいいのでは?」
ただし、ここは少し分けた方がいい。
今の快適さは単なる無職状態ではない。
仕事との接触が薄い。
生活費の不安がすぐには来ない。
次の予定もある。
自由時間がある。
つまり、かなり条件の良い「労働だけ一時停止」状態である。
だから結論は、必ずしも「一生何もしないのが最適」ではない。
むしろ見えてきたのは、
仕事に生活を支配されたくない。
仕事を頭の中まで持ち帰りたくない。
時間の使い方を自分で決めたい。
という方かもしれない。
ここは「働くか、働かないか」の二択より、労働を必須イベントから任意クエストへ落とせるかの問題である。
9. そこで登場する「俺専用ATM」
労働を任意クエストにするには何が必要か。
答えはとても上品に言えば「経済的自立」である。
もっと正確に、そして正直に言えば、
俺専用ATMがほしい。
毎月、生活費を出してくれる。
会社へ行かなくても出してくれる。
プールへ行こうとして寝ても出してくれる。
イオンを歩いていても出してくれる。
この「ATM」を資産運用で作る場合、取り崩し率には前提が必要になる。Morningstarの2025年末研究では、30年間・資金残存確率90%・実質支出を一定にする前提で、開始時の安全取り崩し率を3.9%としている。[8]
ただしこれは30年モデルであり、若い時期から何十年も使う人にそのまま当てはめられる保証はない。税、インフレ、資産配分、暴落、支出変動もある。
つまり現実のATMは、コンビニのATMほど確実ではない。
たまに暴落という名の「ただいまメンテナンス中」が来る。
それでも欲しいものの正体は分かりやすい。
「金持ちの称号」より、
時間の所有権。
10. 「まあ、みんなそうです」――それはそう
ここまで真面目に分析して最後に出てくる結論が、
「働かなくても金が出て、好きに遊べたらいいな」
である。
そりゃそうだ。
人類史を何だと思っている。
ただし全員が完全無職を望むわけではない。仕事に意味、所属、達成感、人間関係を感じる人もいる。
一方で、
生活のために嫌でも働かなければならない状態
と
金は足りているけど面白いから働く状態
は全然違う。
欲しいのは「何もしない権利」というより、
やるかどうかを自分で決める権利
なのかもしれない。
だから「俺専用ATMがほしい」は、怠惰の告白というより、自由時間の買収計画である。
11. ゲームと人生、やっていることが同じだった
ここで急に全部つながる。
PRAGMATAでは、
ハッキングが面倒。
→ ディアナに外注したい。
収集が面倒。
→ 倍率を上げたい。
周回が面倒。
→ 一周で終わらせたい。
現実では、
仕事の反芻が面倒。
→ 仕事から切り離したい。
生活費のための労働が面倒。
→ 資産に外注したい。
全部同じである。
俺が嫌いなのは高難度ではない。
価値を感じない反復工程である。
ゲームでも人生でも、そこを削ると空いた時間に「何をしたいか」が出てくる。
今回出てきたのは、旅行、散歩、プール、ゲーム、睡眠。
非常に健全である。
プールだけ毎回睡眠に負ける可能性がある。
12. 結論:ディアナ、ハッキングして。資産、払って。俺は遊ぶ
最終的な理想構成はこうなった。
ディアナ
電子戦担当。自立してください。
MOD
面倒な周回と収集を圧縮してください。
資産
可能なら生活費を担当してください。
俺
ゲームします。歩きます。旅行します。プールにも行くつもりです。
そして16時になったら、
寝ます。
「俺専用ATMがほしいんだよーっ!」
難しい経済用語を全部捨てると、最終的にこれだった。
そしてたぶん、多くの人が心のどこかで同じことを言っている。
