『HUNTER×HUNTER』キメラアント編のゴンとキルアについて考える。以下の気持ちや関係の読み取りは、作中の描写からの解釈である。
大切だからこそ、冷静な役を引き受けていると読める
カイト再会後、ゴンとキルアが彼と過ごした時間はほぼ同じである。逃がされたのも、救出のために修行したのも、討伐へ戻ったのも一緒だ。キルアはその過程でオロソ兄妹のダーツ能力により失血死寸前まで追い込まれ、イカルゴに救われ、その後も宮殿へ突入する。
そのキルアへ、ゴンは「冷静でいられるのは関係がないから」という趣旨の言葉を投げる。
事実としてはかなり理不尽である。
ゴンの言葉を、「カイトは自分の人生の原点であり、自分のせいで死なせたという痛みは同じではない」という思いの表れとして読むことはできる。しかし実際の言い方は、キルアが払った時間、危険、カイトへの思い、ゴンを守る努力まで部外者扱いする。
キルアはカイトよりゴンを見ている
キルアの冷静さを、カイトへの感情がない証拠とは決めつけられない。ゴンまで危うくなるのを防ごうとしている、とも読める。
ピトーに敵意がなく、治療へ全能力を使っている。今攻撃すれば、カイトを戻せるかもしれない唯一の手段も失う。コムギを殺せば交渉も崩れる。誰かがこの状況を見て、次の動きを考えなければならない。
ゴンが感情担当になったため、キルアは状況を考え、話し合いを助け、無茶を止め、逃げ道を確保する役を一人で引き受ける。その上で、最も守りたい本人から「関係ない」と切られる。
ゴン
カイトへの感情で取り乱すことができる
キルア
カイトへの問題も抱える
+ゴンを失いたくない
+自分まで取り乱すと全員が死ぬ
↓
冷静でいるしかない
だからキルアは、戦況には乾いているのに、友情にはしっとりしている。
ゴンは友情を当然と思い、キルアは保とうとする
キルアにとってゴンは、初めて自分で選んだ親友である。関係が壊れる可能性、対等でいられるか、自分は何者なのかを何度も考える。
一方のゴンは、キルアを強く信頼しているが、その信頼があるからこそ関係を保つための配慮を、強く意識していないように見える。自分が無茶をしてもキルアが来る、自分が進めば横にいる、ひどい言葉を言っても絆は残るという前提で動く。
愛情が弱いのではない。愛情が当然すぎて、相手の負担へ目を向けにくくなっているように見える。
この非対称性が、キルアの「しっとり」を生む。
