【実話】ある結婚式に出席した。最初に頭へ浮かんだのは、かなり俗っぽい計算だった。
祝儀は3万円。料理はしっかりしたコース。飲み物も出る。記念品ももらう。さらに遠方ゲストにはお車代まである。
「これ、祝儀かなり還元されてない?」
ところが会場を見回しているうちに、話が逆向きになった。これだけの料理、人員、建物、衣装、撮影、演出を用意しているなら、むしろ一番しんどいのは主催側ではないか。
祝儀3万円、かなり戻ってきてない?
【データ】ゼクシィが「結婚マーケット調査2025」を基に紹介している婚礼料理の平均は1人1万6000円、飲物は4700円。別のゼクシィの引出物ガイドでは、ギフト全体の1人当たり平均は6000円とされている。
調査条件が完全に同じ数字を単純合算する話ではないが、ゲストの体感としては分かりやすい。料理と飲物だけで2万円を超え、そこへ引出物や引菓子、プチギフトが乗る。さらにお車代が出る人なら、「3万円を包んだのに、現物とサービスでだいぶ返ってきてない?」と思うのも自然である。
ただし、これは返金ではない。料理は現金化できないし、記念品も本人が3万円分の商品を選んだわけではない。あくまで「受け取ったおもてなしの額面を考えると、思ったより大きい」という話である。
でも主催者側は1人3万円どころではなかった
【データ】リクルートブライダル総研の「結婚マーケット調査2025」では、国内で挙式と披露宴・ウエディングパーティーを両方実施した人の費用総額は平均298.6万円だった。招待客人数は平均57.2人。さらに、挙式と披露宴を1回ずつ行った人では、招待客1人当たりの費用平均が7.3万円と報告されている。
ご祝儀制の対象者では、ご祝儀総額の平均が187.1万円、自己負担額の平均が158.9万円だった。
つまり「ゲストが3万円を払うイベント」ではあるが、主催者側から見ると「3万円を受け取れば1人分が黒字になるイベント」ではない。会場全体の費用、固定費、衣装、撮影、装花、演出などを含めれば、1人当たり換算はもっと重い。
ゲスト側で「結構戻ってきてるな」と思った直後に、主催側の数字を見ると急に景色が変わる。
「ブライダル、めっちゃ儲かりそう」の裏側
【一般化】数十人が集まり、1件で数百万円が動く。売上だけ見れば確かに巨大である。
しかしブライダルは、人と建物を大量に使う。
当日はプランナー、配膳、厨房、司会、音響、照明、撮影、美容、衣装、介添えなど多くの人が動く。会場側にはチャペル、披露宴会場、厨房、控室、更衣室、駐車場などが必要になる。しかも「建てたら終わり」ではない。古く見えれば商品価値に響くので、改装や設備更新も必要になる。
さらに需要は土日祝へ偏りやすい。巨大な建物を平日も維持しながら、繁忙日に品質を一気に上げる必要がある。高単価だが固定費も人件費も重い。
【データ】一例として、婚礼事業を主力とするアイ・ケイ・ケイホールディングスの2025年10月期連結売上高は約224.6億円、営業利益は約18.2億円で、単純計算の営業利益率は約8.1%だった。これは会社全体の数字であり、個別会場の利益率ではない。それでも「数百万円の式=そのまま高利益」ではないことは分かる。
売上はデカい。でも建物と人もデカい。全員が「高ぇ!」と言って成立している巨大イベント産業である。
そりゃ「やらない」「小さくやる」選択も出てくる
【データ】「結婚マーケット調査2025」では、2024年4月から2025年3月に結婚した全国20~49歳のうち、挙式・披露宴/ウエディングパーティー・結婚を機とした食事会・写真撮影のどれかを行った人は73.5%。何も実施していない人は26.5%だった。
内訳は、写真撮影61.5%、挙式48.9%、披露宴・ウエディングパーティー43.1%、結婚を機とした食事会33.8%。
つまり「結婚したら大披露宴」が多数派というわけではない。一方で、「結婚に関連して何かはやる」人は今も多数派である。写真だけ、挙式だけ、会食だけ、全部やる、と選択肢がばらけている。
なお2025年調査から調査設計が大きく変わっており、公式も過去データとの単純な時系列比較には向かないとしている。そのため、この1年分だけを見て「ナシ婚が何ポイント増えた」とは言えない。
今回はかなり全部盛りだった
【実話】この日の流れは、親族で集まる時間があり、挙式があり、写真撮影があり、その後に披露宴があった。体感としてはかなりのフルコースである。
ただし統計上の「結婚を機とした食事会」は、披露宴とは別のイベント区分である。披露宴で料理を食べたから自動的に「食事会」も実施したことになるわけではない。したがって、挙式+写真+披露宴がそろっていることは確かでも、統計上の4項目すべてを実施したとまでは断定しない。
こういう細かい区分を抜きにした人間の感覚では、十分に「王道全部盛り」である。
それでも、やりたかった本人には意味がある
【実話】主役の一人は以前から「結婚したい」「結婚式をやりたい」と話していた。その本人が実際に式を挙げ、最後には親への感謝を伝えながら泣いていた。
そこで初めて、数百万円という数字とは別の軸が見えてくる。
【データ】同じ2025年調査で、国内挙式を実施した人のうち、「親に結婚して幸せになった姿を見せてあげることができた」に「そう思う」と答えた割合は76.3%。「家族・親族・友人などにこれまでの感謝の気持ちを伝えることができた」は71.0%だった。
これは「だから全員やるべき」という数字ではない。結婚式をした人が、何に価値を感じたかを示すデータである。
高い。でも本人が昔から望んでいたなら、「高価な宴会」だけでは説明しきれない。人生の節目を形にして、親や友人の前で一度きちんと可視化するための費用でもある。
腹いっぱいでポケーとしていたら、急に感動させられた
【実話】披露宴の途中までは、料理を食べて「うまい」「お腹いっぱい」「これ会場いくらするんだろう」とかなり現実的なことを考えていた。
そして満腹になって、頭がほぼ省電力モードへ入った。
そこへ親への感謝が来た。
本人が泣いた。
急に本筋へ引き戻された。
結婚式は不思議である。数分前まで「料理とお車代で祝儀還元されてない?」「この建物維持するの高そう」「ブライダル儲かるのか?」と損益計算していた人間まで、最後にはちゃんと感動させて帰す。
感情の導線まで含めて商品設計されていると言えば身も蓋もないが、それだけでもない。そこに本人の長年の希望と、親へ伝えたい本物の感情が乗った瞬間、演出は演出ではなくなる。
結論
結婚式をゲスト側から見ると、3万円の祝儀に対して料理、飲物、ギフト、場合によってはお車代まであり、「思ったより返ってくるイベント」に見える。
主催側から見ると、平均約300万円規模の費用を抱え、ご祝儀を差し引いても大きな自己負担が残る。「式をやらない」「写真だけ」「会食だけ」という選択が出るのも理解できる。
式場側から見ると、数百万円の売上が立つ代わりに、人と巨大設備を維持する必要がある。
そして本人側から見ると、ずっと望んでいた人生のイベントを実現し、家族へ感謝を伝え、周囲に見届けてもらう日でもある。
結局、同じ結婚式を見ても、ゲストは「3万円」、主催者は「300万円」、式場は「人と建物」、本人は「人生の節目」を見ている。
腹いっぱいでポケーとしていたら、その最後の視点だけ急に直撃してきた。
出典
- リクルートブライダル総研「結婚マーケット調査2025」 https://souken.zexy.net/research_news/marriage-wedding/market.html
- 同・概要報告書 https://souken.zexy.net/data/market2025/market2025_summary.pdf
- ゼクシィ「結婚式の料理」 https://zexy.net/article/app002504010/
- ゼクシィ「結婚式の引き出物」 https://zexy.net/mar/manual/gift_kiso/chapter2.html
- アイ・ケイ・ケイホールディングス「財務ハイライト」 https://www.ikk-grp.jp/ir/finance/businesshighlights.html
