結論――ポックルから得たのは念そのものではなく、念を説明するための知識
キメラアント編の序盤には、念覚醒の手順がかなり丁寧に描かれている。
ラモットは最初から念能力者だったわけではない。
ゴンの念攻撃を受けたことで精孔が強制的に開き、身体からオーラがあふれ出す。
そこからラモットは念を使えるようになる。
この流れだけを見ると、キメラアントも人間と同じで、
生命エネルギーとしてのオーラは持っているが、精孔が閉じているため、そのままでは念を操作できない
ように見える。
ところが、その直後に誕生したネフェルピトーは違う。
ピトーはポックルを発見する前から、ラモットの野心を一瞬で消すほど巨大なオーラを放っている。
その後、隠れていたポックルを見つけ、脳を刺激して念の六系統や修行法を聞き出す。
つまり順序は、
ピトー誕生
↓
すでに莫大なオーラを使える
↓
ポックルを発見
↓
念の分類や水見式などの理論を得る
である。
ポックルがピトーを念能力者にしたわけではない。
ポックルが提供したのは、ピトーがすでに持っていた力を分類し、体系化し、伸ばすための説明書に近い。
レベル1の生物が教科書を読んで強くなったのではない。
レベル100の肉体が生まれ、あとからチュートリアルを読んだ。
ここが異常である。
念は生命エネルギーなので、念能力者を食べなければ存在しないわけではない
日本テレビ公式の用語解説では、念は人間が身体から発する生命エネルギーであり、それを自在に操作する能力が念能力と説明されている。
この定義なら、ピトーがオーラそのものを持っていることは不自然ではない。
キメラアントも生物である以上、生命エネルギーはある。
問題は、
なぜ生まれた瞬間から精孔が開き、巨大なオーラを制御できたのか
である。
王直属護衛軍は、普通の兵隊蟻とは生産目的が違う。
女王が王を守るために、膨大な栄養と優れた遺伝的資質を集中させて生み出す特別個体である。
そのため、
- 精孔が最初から開いている
- オーラ総量が桁違い
- オーラを本能的に操作できる
- 学習速度が人間の修行体系を無意味にするほど速い
という特別仕様だった、と読むことはできる。
ただし、これは作中描写から組み立てた説明である。
原作には、
「護衛軍はこの理由で生まれつき精孔が開いている」
という明確な生物学的説明はない。
女王が別の念能力者を食べていた可能性はあるが、証明されていない
NGLにはゴンたち以外にも複数のハンターが入っていた。
その中に念能力者がいて、女王の餌になった可能性はある。
キメラアントは摂食交配によって、捕食した生物の身体的特徴、知能、性格、記憶の断片などを次世代へ反映する。
したがって、
女王がすでに念能力者を捕食しており、その資質が護衛軍へ濃縮された
という補完は成立する。
しかし、原作は、
- どの念能力者が食べられたのか
- その個体の資質がピトーへ入ったのか
- 念能力者を食べたことが出生時念覚醒の必須条件なのか
を示していない。
自然な推測ではある。
確定設定ではない。
ラモットとピトーの差は「通常個体」と「王専用の完成品」の差
ラモットは、通常の兵隊蟻が外部刺激によって念へ覚醒した例である。
ピトーは、王を守るために最初から完成品として生産された護衛軍である。
両者を同じ成長手順で考えると矛盾して見える。
しかし作中の扱いは、
通常兵
外部から念攻撃を受ける
↓
精孔が開く
↓
念を覚える
王直属護衛軍
出生時点で肉体・知能・オーラが完成
↓
知識を得る
↓
すぐに応用能力を作る
に近い。
それでも、
なぜ女王が念の構造を知らないのに、念を制御できる完成品を出力できたのか
という疑問は残る。
ここは演出としては強い。
設定の接続部としては説明が薄い。
ピトーは固有能力まで完成した状態で生まれたわけではない
ピトーは生まれた瞬間から莫大なオーラを使える。
しかし、ドクターブライスやテレプシコーラまで最初から持っていたわけではない。
カイトとの戦闘を経験し、
もう一度戦いたい
という欲求から、死体を修復し操る方向へ能力が伸びていく。
つまりピトーは、
完成済みの発を持つキャラクター
ではなく、
異常な出力、資質、学習速度を持ち、経験から発を即座に作れるキャラクター
である。
人間側では、能力設計は長い修行と自己理解を要する。
ピトーは欲求が生まれた直後に、必要な能力を形にしてしまう。
この成長速度の方が、単純なオーラ量より怖い。
アニメ版は原作後期の可愛いピトーを最初から採用している
原作初登場時のピトーは、後期より面長で、目つきも不穏で、猫耳の美少女というより異形の人形に近い。
連載が進むにつれ、輪郭は丸くなり、目は大きくなり、猫らしい無邪気さと可愛さが強くなる。
2011年版アニメは、その後期デザインを初登場時から基本形として採用している。
その結果、アニメのピトーは最初から、
- 丸い顔
- 大きな目
- 柔らかい髪
- 猫らしい動き
- 可愛い声
- 無邪気な表情
で統一される。
原作初期の不気味さをそのまま再現するより、
可愛い外見の存在が、人間の脳をいじり、カイトの首を持って笑う
というギャップを強めた形である。
服まで着て生まれたように見える問題には説明がない
ピトーは登場時からシャツ、短パン、靴下のような服装をしている。
プフも正装風の衣装で現れ、ユピーも腰回りが完成したデザインになっている。
しかし原作には、
- 繭の中で服まで生成された
- 誕生後に兵隊蟻が着せた
- 服に見える部分が外骨格や体毛である
という説明はない。
ピトーの衣服は後に普通の服として扱われるため、すべて皮膚の模様と考えるのも無理がある。
作中世界で補完するなら、巣には人間から奪った衣服があり、誕生後すぐに身につけた可能性はある。
ただし初登場の演出は、
猫型の怪物が幼児服一式を装備して完成状態でスポーンした
ようにしか見えない。
ここは生物学的設定より、読者が一目でキャラクターを識別できる漫画上のデザインが優先された部分だろう。
ピトーの出生は、設定の空白を残しながら絶望を最短で伝える
ピトーの出生について確定しているのは、次の範囲である。
- ポックルから念を聞き出す前からオーラを使える
- 護衛軍として、通常の兵隊蟻とは比較にならない資質を持つ
- 念の理論を知ると、短時間で応用へ進む
- 固有能力は経験と欲求を通じて後から形成される
確定していないのは、
- 誰の遺伝情報によって念資質を得たのか
- なぜ精孔が最初から開いていたのか
- 衣服をどこで入手したのか
である。
設定を完全に閉じるより、
生まれた瞬間から、熟練ハンターが逃げるべき怪物だった
という恐怖を優先した登場である。
