伏黒甚爾は「夫にしたい」より、危険な大人の男として欲望されやすい

伏黒甚爾は、直哉とは人気の質が違う。

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甚爾は、直哉より直接的に性的魅力へ接続する

伏黒甚爾は、直哉とは人気の質が違う。

公式アニメサイトでは、禪院家出身で「術師殺し」の異名を持ち、呪力を全く持たない代わりに超人的な身体能力を備える人物として紹介されている。[4]

甚爾の魅力は、身体と実力が画面上で証明されることにある。

  • 大柄で鍛えられた身体
  • 超人的な速度と力
  • 武器を扱う技術
  • 強敵を倒す実績
  • 危険な状況でも崩れない余裕
  • 無口で説明しすぎない
  • 権威や名家へ従属しない
  • 成人男性としての完成された身体性
  • 子安武人の低い声
  • 傷、黒い服、武器などの視覚記号

直哉の魅力が「顔のいいドブカスを観察する」に寄りやすいのに対し、甚爾は、

危険で強い大人の男に身体的に圧倒される

という、より直球の性愛ファンタジーを作りやすい。

海外ファンダムで “husband,” “daddy,” “he can ruin my life” のような言葉が出るのも、この身体性との相性がよい。

ただし、それらの言葉は必ずしも字義どおりの結婚希望ではない。

英語圏の「夫」「Daddy」「人生を壊して」は誇張された欲望表現でもある

ファンダムで使われる「夫」「妻」は、法的・生活的な配偶者適性の評価ではない。

しばしば次の意味を含む。

  • とても好き
  • 性的に魅力的
  • 自分の推しである
  • 独占したい
  • この危険さを画面越しに楽しみたい
  • 冗談として最大級の好意を表したい

“He can ruin my life” も、

実際に失業、借金、暴力、育児放棄を受けたい

という契約ではない。

破滅的な魅力がある
理性では危険だと分かるが、性的には刺さる
現実の損失を負わない場所で、危険へ近づきたい

というファンダム的誇張である場合が多い。

結婚という語を使っていても、共同生活の適性を語っているとは限らない。

現実の共同生活では、かなり厳しい

甚爾を生活相手として採点すると、評価は反転する。

  • 安定した職業生活ではない
  • 危険な殺しの仕事をする
  • 賭け事をする
  • 金銭管理に不安がある
  • 家を空ける
  • 他者と長期的に協力する姿が乏しい
  • 子どもとの関係を断つ
  • 感情や計画を共有しない
  • 突然死する可能性が高い

この人物と、住宅、家計、家事、育児、病気、老後を共同運営したいか。

多くの人にとって、答えは否になる。

しかし、フィクション上で求められているものは、共同運営能力ではない。

  • 圧倒的な身体
  • 力
  • 危険
  • 自由
  • 余裕
  • 非日常
  • 自分では制御できなさそうな存在感

が中心になる。

だから、

結婚したい男性像の真逆ではないか

という指摘は正しい。

そして、真逆だからこそ、日常の外側に置くファンタジーとして強いとも言える。

バッドボーイへの擬似恋愛は、刺激と遊戯的恋愛観に結びつく可能性がある

2024年の小規模研究では、映画やドラマの「バッドボーイ」を好きな女性47人を対象に、恋愛的パラソーシャル関係を調べた。

結果として、遊戯的で非拘束的な恋愛態度を表すルダスと、刺激追求が、バッドボーイへの恋愛的パラソーシャル関係を予測した。

また、関係の強さは、視聴後に想像を発展させることや、力を感じる感覚と関連した。[5]

ただし、この研究は次の限界を持つ。

  • 47人と小規模
  • 相関研究
  • 対象者の回想に依存
  • 刺激追求尺度の信頼性が低め
  • 因果関係は分からない
  • アニメキャラクターに限定していない

したがって、

悪い男を好きな女性は刺激中毒である

とは言えない。

それでも、

現実の安定した関係ではなく、物語の中で強い刺激や冒険を味わう

という説明を考える材料にはなる。

甚爾のような人物は、まさに刺激密度が高い。

「自分だけが彼の人間性を取り戻す」余白

甚爾は、完全な無感情の機械としては描かれていない。

作品には、過去の家族関係、妻との関係、息子の名、最後の確認など、人間性を想像させる隙間がある。

この隙間は、恋愛ファンタジーに強い。

本当は愛情を持っていた。
環境が彼を壊した。
正しい相手と出会えば違った。
自分には少しだけ優しいかもしれない。
自分なら彼の孤独を理解できる。

全部が原作で保証されているわけではない。

しかし、断片があるため、ファンは補完できる。

悪い男キャラが恋愛人気を得るには、悪さだけでなく、

まだ人間性が残っているかもしれないという隙間

が重要になる場合がある。

完全に魅力のない加害者では、想像を差し込む場所がない。

甚爾には、身体的強さと破綻の間に、わずかな愛情の痕跡がある。

そのため「自分だけは」という物語を作りやすい。

甚爾の欲望は「守られたい」だけではない

強い男を好きになるとき、しばしば、

守ってもらいたい願望

だけで説明される。

しかし、それだけではない。

甚爾へのファンタジーには、

  • 圧倒されたい
  • 危険へ近づきたい
  • 日常から外れたい
  • 強い身体を鑑賞したい
  • 自分が選んだ危険を自分で管理したい
  • 強者を小型化し、グッズとして所有したい
  • 自分の妄想の中では主導権を持ちたい

も入り得る。

パラソーシャルな相手は、現実の強い男と違い、読者へ命令できない。

読者は、再生、停止、想像、グッズ購入、二次創作を選べる。

表面上は甚爾が圧倒的に強い。

しかし関係の制御権は、ファン側にある。

強い男に支配される想像を、自分が完全に制御している。

この二重構造が安全である。

甚爾を一文で言うなら

甚爾は、

安心して長期生活を任せられる夫

として魅力的なのではない。

現実の生活費、育児、暴力リスクを引き受けずに、圧倒的な身体、強さ、危険、喪失、わずかな人間性を欲望できる存在

として強い。

現実の婚活プロフィールなら避ける。

画面に出れば見る。

グッズは欲しい。

性的には刺さる。

この四つは、同時に成立する。

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