結論
王位継承戦は情報戦として非常に面白い。
しかし読者が「話が進んでいない」と感じやすいのも当然である。
ブラックホエール1号が出航したNo.359「出航」は2016年。
2026年には現実時間で約10年が経過した。
その間、船内では膨大な事件が起きている。
問題は、事件が解決して収束する速度より、新しい人物・能力・推論・勢力が増える速度の方が速いことだ。
50話以上進んでも、まだ船である
出航後だけでも50話以上が積み重なった。
しかし大きなゴールを見ると、
- 暗黒大陸そのものへの本格上陸
- 王位継承戦の決着
- クラピカの緋の眼問題
- 旅団とヒソカの決着
- ビヨンド側の真意
など、まだ途中のものが多い。
「何も起きていない」のではない。
むしろ逆だ。
起きすぎている。
ヨークシンは枝が幹に戻ってきた
ヨークシン編も登場人物は多い。
しかし中心には、
クラピカと幻影旅団
という非常に太い対立軸があった。
ヒソカ、マフィア、ゾルディック家、ゴンとキルア。
枝は増えるが、最後には中心軸へ戻ってくる。
一方、王位継承戦は、
- 王子
- 王妃
- 私設兵
- 念獣
- 念講習
- マフィア
- 旅団
- ヒソカ
- ビヨンド
- ハンター協会
と横方向へ広がり続ける。
さらに各人物が「この情報から自分ならどう推理するか」を長く考える。
一つひとつは面白い。
しかし全体の進行速度は遅くなる。
「小説を削ってほしい」の正体
文章量が多いこと自体が悪いわけではない。
問題は、漫画でしかできない圧縮より、内面の説明が勝つ場面が増えたことだ。
ヨークシンでは、
- 一つの表情
- 短い会話
- 能力の一手
- 相手の推理
だけで大きな情報戦を成立させていた。
現在は複数の陣営が同時に推理するため、前提条件を文章で保持しないと成立しにくい。
その結果、「漫画を読んでいる」というより「図の少ない戦略小説を読んでいる」感覚になるページがある。
削るべきなのは設定そのものではない。
重複する前提確認や、脇の人物まで全員が行う詳細な推論を圧縮することだと思う。
カラー版が追いついてくる異常事態
2026年7月3日にはカラー版38巻とモノクロ39巻が同日に発売された。
カラー版が単行本の最新ラインにかなり近づいたことになる。
通常なら後から追うはずのカラー作業が、長期休載を挟む原作へ追いついてくる。
これは作品の制作史としてかなり特殊な光景だ。
No.414でゴンとキルアが久々に同一話へ
2026年7月掲載のNo.414では、ゴンとキルアが久々に同じ話の中へ登場した。
長くクラピカ中心だった現在の物語に、かつての主人公コンビが再び接続されたこと自体が大きい。
ここで期待されるのは、単なるファンサービスだけではない。
ゴンは一度、念と成長のルートを大きく壊した。
キルアは「ゴンについていく」だけではなく、アルカを守るという自分の目的を持った。
だから再び二人が物語の中心へ戻るなら、
昔のゴンとキルアの続きではなく、それぞれが一度別の人生へ進んだ後の再成長
を描ける。
これは非常においしい。
読者が見たいのは「冒険するHUNTER×HUNTER」でもある
王位継承戦の政治劇や心理戦が好きな読者と、暗黒大陸やゴン・キルアの冒険を待つ読者は両立する。
問題は時間だ。
ブラックホエール出航から現実で約10年。
ここまで来ると、
王位継承戦をきちんと畳んでほしい。
旅団とヒソカも見たい。
そのうえで、本当に暗黒大陸へ行ってほしい。
そして成長したゴンとキルアも見たい。
という欲求が強くなるのは自然だ。
HUNTER×HUNTERには、情報戦だけでなく、
知らない場所へ行くこと、能力を覚えること、以前できなかったことができるようになること
という冒険と成長の快感があった。
10年船に乗った後だからこそ、その成分をもう一度見たくなる。
