旅行先の中心街を歩いていて、ふと思った。
あれ。ネットの「美男美女が多い県ランキング」と、俺の目の前の景色、合ってるのか?
別に一人二人を見て決めたわけではない。駅、電車、バス、商店街、繁華街、観光地をずっと歩く。地元の人も観光客も混ざる。その中で「自分の好みに刺さる人、多いな」「今日はあまり見ないな」という体感が少しずつできてくる。
そして鹿児島市中心部を歩いている途中、体感はかなりはっきりしてきた。
今のところ、かわいい・かっこいいと思う人をあまり見かけない。
ここから話が暴走した。
「日焼けの影響か?」 「県別の顔面偏差値ランキングってあるの?」 「秋田1位? お前ら全員秋田行ったことあるの?」 「熊本と沖縄が上位なのに、隣の鹿児島が下のほうなの意味わからん」 「県境でくまモンに何かされた?」
調べてみたら、もっと面白かった。
“美男美女ランキング”は一種類ではない。質問の仕方を変えただけで、別の競技になる。
0. 先に結論
都道府県の美男美女ランキングを見るときは、最低でも次の4種類を分けたほうがいい。
| 種類 | 実際に測っているもの |
|---|---|
| 全国イメージ調査 | 「美男美女が多そう」という県ブランド |
| 県民の自己評価 | 「うちの県は美男美女が多い」と地元民が自慢する割合 |
| AI顔診断の集計 | そのサービスを使った人の中で高得点者が多かった県 |
| 現地を歩く体感 | その場所・時間・観察者の好みに刺さった人の多さ |
つまり、同じ「美男美女ランキング」という名前でも、中身は全然違う。
そして2025年の全国イメージ調査では秋田が1位、福岡が2位。[1]
同じ2025年でも、県民自身に「美男美女の多さを自慢できるか」と聞いたソニー生命の調査では、秋田が16%で1位、熊本と沖縄が11%で同率2位だった。[2]
さらに2026年のAI顔診断サービス利用者約2万人の集計では、総合1位は新潟、2位栃木、3位青森。鹿児島は41位、熊本35位、沖縄24位だった。[3]
もうこの時点で競技が3つある。
1. 「秋田1位」より先に聞きたい。みんな秋田行ったことある?
2025年のAll Aboutの調査は、全国10〜70代の男女500人に「美男美女が多いと思う都道府県」を聞いたインターネット調査だ。[1]
ここで大事なのは質問文。
「実際に47都道府県へ行って、同じ条件で住民を観察した結果、どこが一番でしたか?」ではない。
そんな人、そもそも何人いるんだ。
回答理由を見ると、「秋田美人という言葉」「秋田出身の有名人」「色白のイメージ」などが出てくる。[1]
つまり、このランキングにはかなりの割合で、
秋田
↓
秋田美人という言葉を知っている
↓
有名人を思い出す
↓
「じゃあ秋田」
という連想ゲームが入る。
これは悪い調査という意味ではない。
“日本人がどの県に美男美女イメージを持っているか”を測る調査としては正しい。
ただし、それをそのまま「実際の住民の顔を全国比較した結果」と読むと、突然話がおかしくなる。
「秋田1位!」
いや待て。
お前、秋田で何人見た?
2. 熊本・沖縄2位、隣の鹿児島は?――県境で顔が変わるわけではない
さらに面白いのがソニー生命の2025年調査だ。
全国4,700人、各都道府県100人ずつを対象に、その県に住む人へ「自県で自慢できること」を聞いている。[2]
「美男美女の多さ自慢」は、
1位 秋田 16%
2位 熊本 11%
2位 沖縄 11%
だった。[2]
ここで質問は「全国でどこが一番?」ではない。
「あなたの県、美男美女多いって自慢できます?」
なのでこれは顔面測定というより、地元ブランドと自己イメージの測定に近い。
そして九州を見ると面白い。
熊本「うちは美男美女、多いと思います」
↓
県境
鹿児島「……黒豚があります」
もちろん、これはネタである。
遺伝子が県境の看板を見て突然変身するわけがない。
だから隣接県で大きく印象が違うランキングを見ると、むしろ、
顔そのものより、県に付いている物語の強さを測っているのでは?
という疑いが強くなる。
熊本にはくまモンがいる。
沖縄には「南国のはっきりした顔立ち」という全国的なイメージがある。
秋田には「秋田美人」という数十年どころか何世代も使われてきた強ワードがある。
一方、鹿児島の観光ブランドを脳内で並べると、
西郷隆盛、桜島、黒豚、焼酎、さつまいも。
美容誌の表紙というより、全部強い。
くまモンに責められたわけではない。
県のキャラが別方向に強すぎる。
3. AI顔診断では鹿児島41位――でも「県民41位」ではない
2026年には別タイプのランキングもある。
AI顔診断サービスFunny-AIが、2026年4〜7月の利用者への任意アンケートと診断結果、約2万人分を集計し、高スコアだった人の割合で都道府県を順位化した。[3]
総合では、
1位 新潟
2位 栃木
3位 青森
4位 北海道
5位 東京
となり、鹿児島は41位だった。[3]
女性部門の上位は栃木、新潟、岩手。男性部門は北海道、神奈川、青森。[3]
「秋田美人」が圧勝するイメージ調査とは、かなり景色が違う。
ただし運営自身も、これは診断サービス利用者のデータであり、日本人全体の代表値ではないと明記している。回答が少ない県ほど順位も動きやすい。[3]
つまり鹿児島41位を見て、
「鹿児島県民は全国41位の顔です」
とは言えない。
言えるのは、
「このサービスを使って県を回答した人たちの中では、今回こうなった」
まで。
それでも、現地を歩いて「今日は自分の好みに刺さる人が少ないな」と感じていた旅行者がこの41位を見ると、
おい、妙なところで一致するな。
とはなる。
科学的証明ではない。
旅先で見つけた、嫌に気持ちいい一致である。
4. 「日焼けしてるから?」は完全な妄想でもない。でも県ランキングの説明にはならない
現地で最初に出た仮説は、日焼けだった。
「顔立ちそのものより、肌の見え方で自分の評価が変わってないか?」
これは完全な思いつきだけでもない。
2025年に発表された研究では、日本、中国、イタリアの計3,918人が、同じ平均顔の肌色を変えた画像の魅力度を評価した。[4]
日本人1,200人、中国人1,518人、イタリア人1,200人が参加している。
その結果、肌色の変化によって魅力度評価は変わり、国や性別によって変化の仕方も違った。日本と中国では、平均顔を暗くした条件で男女とも魅力度が下がる傾向が出た一方、イタリアでは同じ形では出なかった。[4]
つまり、
肌の明るさや赤みなどが「顔の印象」に影響すること自体はあり得る。
ただし、ここから、
「鹿児島は日差しが強い」
→「みんな日焼けしている」
→「だから美男美女ランキングが低い」
とつなぐのは飛躍しすぎる。
実際の街には、年齢、化粧、服、髪型、表情、生活、時間帯、観光客、季節、そして見る側の好みが全部混ざっている。
結論は、
「自分の好みでは肌の明るさが評価に効いている可能性はある。でも県全体の順位の原因だとは言えない」
くらいがちょうどいい。
5. 観光地で人を見るのは無意味?――いや、地元民も普通にいる
もう一つの疑問。
「観光地で見てるだけなら、県民比較にならなくない?」
半分正しい。
観光地には旅行者が混ざる。駅にも県外客はいる。休日と平日でも客層は変わる。
ただし、県庁所在地の中心街、駅、電車、バス、商店街、飲食店、商業施設まで何時間も歩けば、地元の人も当然かなり混ざる。
だから現地観察は、
県民全体を代表する無作為調査ではない。
しかし同時に、
「ネットで県名を見て想像しただけ」でもない。
特に、同じ旅行者が各都市で、
- 駅
- 中心街
- 商店街
- 商業施設
- 公共交通
のような似た場所を同じくらい歩いて比較するなら、「自分の好み」という軸だけはかなり固定できる。
これは学術ランキングではない。
俺調べ全国大会である。
6. 鹿児島の脳内キャラが美容から遠ざかっていく
ここからは完全にネタ。
街を歩きながら、鹿児島の観光ワードを「顔面ランキングに不利そうな説明」へ無理やり変換するとこうなる。
おじさん
→ 噴火(ヒス)
→ 黒豚
→ 焼酎(むくみ)
→ さつまいも(おなら、しかも“芋っぽい”)
ひどい。
桜島まで巻き込まれている。
火山灰でくすむ。
焼酎でむくむ。
黒豚で重くなる。
芋で腹が膨れる。
県の名物が全員、顔面偏差値を下げる悪のパーティーみたいになった。
もちろん現実の鹿児島県民とは何の関係もない。
これは、旅行中に名物を見すぎた人間の脳内で、すべての情報が一つの雑なストーリーへ吸収された結果である。
そして熊本へ行けば、くまモンが待っている。
熊本「美男美女自慢2位です」
鹿児島「黒豚あります」
熊本「顔は?」
鹿児島「桜島が噴火します」
勝負の種目を変えるな。
7. 全国ランキングを「信じる」のではなく、仕合わせに行く
結局やりたいことは、ランキングを信じることではない。
全国ランキングと、自分の現地体感を照らし合わせること。
ネット上では秋田が強い。
では本当に秋田の街を歩いたら「おお」となるのか。
熊本は地元民の美男美女自慢が強い。
では鹿児島から熊本へ移動した瞬間、体感まで変わるのか。
もし変わらなければ、
「くまモンブランドだった」
で終わる。
もし明らかに変われば、
「おい、県境で何が起きてる」
という新しい謎が生まれる。
どちらでもおいしい。
全国47都道府県を回るなら、毎回「駅・繁華街・商業施設を同じくらい歩く」「時間帯を書く」「観光客が多そうかを書く」程度だけそろえておけば、少なくとも自分の中では比較しやすくなる。
顔写真を撮る必要もない。
人を採点表にする必要もない。
「今日は自分に刺さる人をよく見た/あまり見なかった」程度で十分。
そうすれば最後にできるのは、「日本一美男美女が多い県」という客観的な真理ではない。
もっと正直なものだ。
全国を実際に歩いた一人の人間による、完全主観・現地確認済みランキング。
少なくとも、「秋田美人って言うから秋田!」だけよりは、ずっと旅をしている。
参考資料(4件)
- All About News, 2025-03-28, 「美男美女」が多いと思う都道府県ランキング news.allabout.co.jp
- ソニー生命保険, 2025-12-16, 「47都道府県別 生活意識調査2025(生活・マネー編)」 sonylife.co.jp
- Funny-AI, 「顔面偏差値が高い都道府県ランキング2026」 funny-ai.com
- Koizumi K, Nagashima M, Hirao N, Ohira H. Simulated intra-individual skin color changes and their impact on facial attractiveness across Japanese, Chinese, and Caucasian faces. Frontiers in Psychology. 2025;16:1600306 doi.org
