1. 結論
パリストンは会長選に勝ちたかった。しかし、会長として権力を保持し、政策を実行することが最終目的だったわけではない。実際に当選した直後、チードルを副会長へ指名して自ら辞任している。
彼が欲しかったのは、賞品としての会長職よりも、選挙という盤面を長く動かし、十二支んや候補者の反応を引き出し、最後に自分の読みどおりの形で決着させることである。勝利は重要だが、勝利後の地位は不要だった。
ジンもまた、目的地そのものより、そこへ至る道筋、寄り道、仲間、未知の攻略を楽しむ人物である。二人は倫理と対人姿勢が大きく異なるが、結果だけでなく過程を報酬にする点では同類である。
2. パリストンが選挙で欲しかったもの
パリストンの行動は、単純な権力欲では説明できない。
- 最短で会長職を確保するより、投票を何度も繰り返させる
- 対立候補や十二支んの焦りを楽しむ
- レオリオの台頭やゴンの回復まで盤面へ取り込む
- 当選後は即辞任する
この一連の流れから、選挙は「会長になるための手段」ではなく、選挙そのものが遊びだったと分かる。ネテロの副会長を務めた理由についても、パリストンは後に、会長を困らせて遊びたかったという趣旨を語る。愛着のある相手や組織を、守るのではなく傷つけ、その抵抗を見ることで関係を感じる人物である。
3. 想定は最初の十二支ん会議から始まっていた
重要なのは、パリストンの終盤の作戦が、レオリオが有力候補になってから急に生まれたわけではないことだ。
最初の十二支ん会議で、ジンは立候補を表明する。パリストンが重体のゴンを話題にして挑発すると、ジンはゴンが死なないと断言する。後の回想によれば、パリストンはこの時点から、回復したゴンが会場へ現れる展開を想定していた。
つまり彼は、ジンの発言を強がりとして処理せず、ジンが断言するなら、本当にゴンは助かるという前提で選挙を組み立てた。敵として警戒しているからこそ、その判断力を信用している。
当初パリストンが思い描いていたのは、最終的に自分とジンが残り、回復したゴンが現れ、ジン側が勝つ展開だった。実際の盤面ではジンが降り、ゴンを助けたいレオリオが一位になる。しかしゴン本人が会場へ来れば、レオリオの立候補理由は消える。パリストンはそこを利用し、選挙には勝った。
4. 「勝ちたい」と「会長になりたい」は別である
パリストンを理解しにくい最大の理由は、通常なら一体化している二つの欲求が分かれていることだ。
- 選挙ゲームで勝ち、自分の読みを証明したい
- 会長職を保持して働きたい
前者は強い。後者はほぼない。
だから「勝とうとも負けようとも思っていない」というジンの評価と、パリストンが実際に勝ち筋を作ることは矛盾しない。勝敗は遊びを面白くする要素だが、地位を得るための実務的競争ではない。面白い負け方なら受け入れられる一方、退屈な勝利には価値を感じない。
5. ジンとパリストンはどちらも過程型である
ジンは遺跡、ゲーム、仲間集め、探索経路など、「目的の先にあるもの」より、到達するまでに得たものを重視する。パリストンも、結果より盤面の変化と相手の反応を楽しむ。
ただし方向は逆である。
- ジンは未知の問題を見つけ、仕組みを読み、攻略する
- パリストンは人間関係を問題化し、相手を困らせ、解こうとする姿を見る
ジンは面白い問題を解く側で、パリストンは面白い問題を作る側に近い。そのため、パリストンが仕掛け、ジンが即座に構造を読む関係は、互いにとって希少な遊びになる。
6. ジンへの感情は「称賛」だけでなく嫉妬に近い
暗黒大陸渡航準備編で、ジンはレオリオの打撃系能力を一度受けた経験から再現し、さらに本人がまだ見せていない応用まで推測する。しかも、それはジン自身の固有能力ではない。
この場面のパリストンの表情は、単純に「すごい人を見て喜ぶ顔」と読むより、驚き、悔しさ、嫉妬、期待が混ざった顔と読むほうが自然である。
パリストンはジンの底を見たくて場を動かしたのに、ジンは圧倒的な技術を示しながら、本来の能力は渡さない。さらにジンの関心は、パリストンではなくレオリオの才能へ向いている。パリストンにとっては、「やはりジンは面白い」という満足と、「自分の思いどおりにならない」という不満が同時に生じる。
ただし、これは表情と関係性からの解釈であり、原作が恋愛的嫉妬や独占欲を明言したわけではない。確定しているのは、パリストンがジンを強く意識し、負けたくないと考え、ジンに自分と似た思考を見抜かれることを不快かつ楽しみにしている点である。
7. 会長選は、滅多に会えないジンと遊べる機会だったのか
ジンは協会の通常運営へ常駐せず、居場所もつかみにくい。パリストンが会いたい時に呼び出して、継続的に勝負できる相手ではない。
会長選は例外だった。
- ネテロの遺言により十二支んが集まる
- ジン本人が立候補する
- ゴンの生死が選挙と接続する
- パリストンとジンが同じ公開盤面に長く居続ける
したがって、パリストンが選挙を複雑化させた理由の一部に、せっかく現れたジンとの勝負を簡単に終わらせたくない感情があった、と読むことはできる。これは原作で明言された目的ではないが、その後の執着や対抗心とはよくつながる。
ジンが途中で候補から降りたため、パリストンは選挙では勝っても、想定していたジンとの直接決着を得られなかった。その後、ジンが自らビヨンド陣営へ乗り込んでくると、二人の私的なゲームが再開する。
8. 消息不明のハンター18人はどうなったのか
最初の会議でミザイストムは、パリストンが副会長になってから3年間で、ハンター18人が消息不明になったと追及する。以前の平均と比べて約10倍であり、明らかに異常な数字である。
しかし、18人の具体的な運命は現在も本編で説明されていない。
- パリストンが直接殺した
- 協専ハンターや裏組織へ取り込んだ
- 脅迫、拘束、失踪工作を行った
- 別の計画の犠牲になった
どれも可能性にすぎない。東ゴルトーに残された約5000体のキメラアント化した人間とも、作中では直接同一視されていない。
したがって確実に言えるのは、パリストンの副会長期に異常な失踪増加が起き、ミザイストムが彼の責任または関与を疑っていることまでである。「処理された」と考えたくなる描写ではあるが、方法と目的は未回収である。
9. まとめ
パリストンは会長になりたかったのではなく、会長選というゲームに勝ち、相手を動かし続けたかった。ジンはそのゲームを理解し、時には参加しながら、盤面そのものを奪える相手である。
二人はどちらも過程を楽しむ。ただし、ジンは未知を攻略し、パリストンは他人の抵抗を発生させる。だから敵対しているのに、相手の判断を深く信用し、負けたくないのに、相手が期待を超えることも望んでいる。
会長選は政治劇であると同時に、滅多に同じ場所へ現れない二人が、互いを遊び相手として確認した最初の長期戦だった。
