1. なぜ原因や役割を分けるのは難しいのか
人は現象を見ると、すぐ一つの物語へまとめたがる。
欠勤した
→常識がない
職場が荒れている
→管理者が悪い
家族関係が悪い
→本人が自立していない
だが現実の問題は、複数の事情が同時に関わっている。
- 本人の性格、技能、体調
- 相手の行動、要求、感情
- 二者間の役割と境界
- 組織の制度、人員、権力差
- 過去から学習した反応
- その時点の緊急性
- 問題を変更できる権限の所在
原因や役割を分けるのが難しいのは、原因を作った人、被害を受けた人、責任を負う人、対処する人が同じ人物とは限らないからである。
2. 五つの箱へ分ける
自分
技能、休息、物事の受け取り方、期待、意思表示、受診、相談など。
相手
暴言、後出し、相手に不安や怒りをぶつけること、支配、脅し、無視、責任転嫁など。
関係
どちらが決めるか、誰が感情処理を担うか、断ったとき何が起きるか、接触頻度、依存度など。
環境・制度
人員、手順、情報、評価制度、権限、勤務時間、休職制度、代替要員など。
時間・緊急度
平常時に扱える問題か、今すぐ安全確保が必要か。限界状態の人へ、長期的に自分を振り返ることを求めても、取り組む余裕がない場合もある。
3. 原因、責任、対処する人、変えられる人は別
たとえば、家庭問題を考えるときの整理例は、
- 原因:親が不安や怒りをぶつけること
- 被害:子ども
- 成人後の境界設定:本人
- 二次負担を拒否する権利:恋人
- 必要な支援:第三者や専門家
となる。
たとえば、職場の欠勤問題を考えるときの整理例は、
- 原因:本人の不調、職場負荷、過去の性格傾向など複合
- 本人の役割:体調を知らせること、受診、最低限の連絡
- 管理者の役割:安全配慮、業務調整、責めない連絡
- 組織の役割:休職制度、代替要員、連絡手順
- 医療の役割:診断、治療、働けるかどうかの医学的な意見
となる。
誰か一人へ全部を載せると処理できない。
4. 原因や役割を取り違える例
| 起きていること | 的外れな対応 | 確かめること |
|---|---|---|
| 手順が複雑 | 本人を注意する | 手順・作業のそろえ方 |
| 情報がない | 意欲を問う | 情報の伝え方 |
| 権限がない | 当事者意識を求める | 権限・組織 |
| 人員不足 | 忍耐を称賛する | 人員・経営 |
| 上司が後出しする | 部下の説明力を鍛える | 相手・評価制度 |
| 動悸や吐き気がある | 根性を求める | 身体・医療 |
| 親族の希望が流れ込む | 恋人の理解を求める | 家族境界 |
| 被害者が反撃した | 双方を同じ責任だと決めつける | 原因と反応の時間順 |
5. 答えを教えるだけでは足りない
正解を教えるだけなら、「この場合はA」と覚えさせられる。しかし現場では条件が変わる。必要なのは、
何が起きているか
どの人や仕組みの問題か
どの情報が足りないか
誰が変更できるか
何を記録すべきか
を自分で考える力である。
教育では、メンバーのアイデアをすべて記録し、問いを投げて深掘りし、後からチームへ返すことが重要になる。半年後には、細部を覚えていない人もいる。一言のメモが別の問題の解決につながることがあるからだ。
6. 原因や役割を分けるための手順
- 現象を評価語なしで書く
- 時系列を並べる
- 自分・相手・関係・環境・緊急度に分ける
- 原因と反応を分ける
- それぞれで変更できる人を確かめる
- 安全にできる範囲で、小さい変更から試す
- 効果がなければ接触削減・配置変更・退出へ進む
「誰が悪いか」だけでなく、「どこを変えれば同じ問題を減らせそうか」を問うのが原因や役割を分けて考える方法である。
