不安で合理的選択ができなくなる人たち:短期の安心が、長期の関係を壊す

不思議な人がいる。

読書機能の使い方

聴く:本文を読み上げます。速読:語句を順に表示し、速さを調整できます。語学練習:別の言語版と対訳を読み比べます。保存:このブラウザーにブックマークし、プレイヤーの保存済み一覧から開けます。

この記事をシェア
広告
広告
title: "不安で合理的選択ができなくなる人たち:短期の安心が、長期の関係を壊す"
description: "『なんでできてないの』『普通はこう』と言う人も、本人なりにストレスを抱えている。だが、その不安処理を相手に外注すると、短期的には安心しても、長期的には家庭や職場が冷える。"
category: "mental-load"
tags: ["不安", "コントロール", "メンタルロード", "要求撤退パターン", "家庭", "職場"]
status: "draft"
published: false

本人もストレスを抱えているのに、なぜまたコントロールするのか

不思議な人がいる。

いつもイライラしている。
家事や仕事に追われている。
「私ばっかり」と言っている。
「なんでできてないの」と言っている。
「普通はこうでしょ」と言っている。

本人もストレスを抱えている。

それなのに、さらに周囲をコントロールしようとする。

外から見ると、かなり意味不明である。

なぜ、ストレスの発生源になっている行動を続けるのか。

答えはシンプルで、コントロールすると一瞬だけ不安が下がるからである。

合理性の対象がズレる

不安が強い時、人は合理的に考えられなくなる。

ただし、完全に非合理になるというより、合理性の対象がズレる。

本来見るべきなのは、こういうものだ。

  • 長期的に関係が良くなるか
  • 家庭や職場が冷えないか
  • 相手が撤退しないか
  • 自分も相手も消耗しないか
  • 作業の実害は何か
  • 本当にそこまでやる必要があるか

しかし、不安が強い人は、これではなく、

今この瞬間、自分の不安が下がるか

を優先してしまう。

不確実性への不耐性、つまり曖昧な状態や分からない状態に耐えにくい傾向は、不安や心配と深く関係する要因として研究されている。[3]

つまり、本人にとっては、

  • 相手に任せること
  • 自分の基準と違うやり方を許すこと
  • 完了条件が曖昧なまま置くこと
  • 多少ズレても放っておくこと

が耐えにくい。

そこで、相手を動かす。

ちゃんとして。
普通こうでしょ。
なんでそこまでやってないの。
そこまでやってくれると思ってた。
もっとこうして。

相手が動く。
本人の不安が一瞬下がる。
その一瞬の安心が、次のコントロールを強化する。

短期安心、長期破壊

このループは、短期的にはうまくいく。

相手を詰める。
相手が動く。
自分の不安が下がる。

だから本人は、「言えば動く」「私が言わないと回らない」と学習する。

しかし、長期的には逆効果である。

相手はだんだん冷える。

  • やっても不合格
  • 基準が後出し
  • 聞くと怒られる
  • どうせまた文句を言われる
  • なら関わらない方がいい

こうなる。

家庭なら、愛情が冷える。
職場なら、心理的安全性が下がる。
同棲なら、「この人と結婚して大丈夫か」となる。
結婚後なら、「なんでこの家庭はこんなにしんどいのか」となる。

カップル研究では、片方が要求し、もう片方が引く要求‐撤退パターンが、関係満足度の低下や葛藤と関係することが報告されている。[4]

つまり、本人は家庭や職場を守っているつもりで、実際には関係を冷やしている。

不安の外注

この現象の本体は、不安の外注である。

本来、向き合うべきなのは本人の中にある。

  • 自分の不安
  • 自分の完璧主義
  • 自分の不確実性耐性の低さ
  • 自分のメンタルロード
  • 自分の家庭内マイルール
  • 自分の「ちゃんとしてる感」への執着

しかし、本人はそこを直接処理しない。

代わりに、近くにいる人を動かす。

あなたがちゃんとすれば、私は安心できる。
あなたが私の基準で動けば、私は落ち着く。
あなたが察してくれれば、私は苦しくない。

こうして、自分の不安を相手の義務に変える。

しかし、これは長期的にはかなり危険である。

相手は、自分の人生や時間を、他人の未処理不安の下請けにされたくない。

「アホみたいな細部」で家庭を冷やす

極端に言えば、こうである。

タオルの畳み方は、結婚生活より大事なのか。
冷蔵庫の並べ方は、相手の愛情を削ってまで守るものなのか。
布団の干し方は、家庭の空気を悪くしてまで徹底するものなのか。
入社日の聞き方のメンツは、実務を遅くしてまで守るものなのか。

もちろん、衛生・安全・健康・納期・法令に関わるものは重要である。

しかし、それ以外の多くは、好み・不安・安心感・家庭内美学である。

それを守るために、相手の自律性や関係性を壊すなら、本末転倒だ。

なぜ本人はやめられないのか

本人もストレスを抱えているのにやめられない理由は、主に5つある。

1. 不確実性が苦手

曖昧な状態が不安なので、細部を管理して安心したい。

2. 短期報酬がある

怒る。相手が動く。不安が下がる。
この一瞬の安心が、行動を強化する。

3. 「ちゃんとしてる自分」を守っている

家事や管理が、単なる作業ではなく、アイデンティティになっている。

4. 他者向け完璧主義

自分だけでなく、相手にも自分の基準を求める。他者向け完璧主義は、対人関係の問題と結びつく傾向がある。[5]

5. 長期コストを見ていない

今の不安を下げる行動が、長期的に関係を壊していることを見られていない。

これは、単純な知能の問題というより、メタ認知と長期コスト計算の問題である。

結論:ストレスを減らすための行動が、ストレスの発生源になっている

この現象を一文で言うなら、こうである。

本人はストレスを減らすためにコントロールしている。
しかし、そのコントロールが周囲を削り、相手を撤退させ、結果的に本人のストレスも増やしている。

短期の不安低減を優先しすぎて、長期の関係コストを見失っている。

だから、周囲から見るとこうなる。

それで家庭冷やしてるの、見えてないのか。
それで職場が遅くなってるの、分かってないのか。
自分の不安は自分で処理してくれ。
こっちを巻き込むな。

かなり厳しい言い方をすれば、これは自分のメンタル管理不足を、他人に外注している状態である。

この記事が役に立ったら、応援できます。 応援する

広告

もう1個、なんか面白いのない?

読み終わったついでに。近い話と、ぜんぜん違うけど面白い話を少しずつ。

  1. 近い話キルアはなぜラモットを一瞬で殺せたのか「ころすよ」が気持ちいい理由
  2. なぜ人間は「出そうと思えば快感が出る」ように作られていないのか
  3. ぜんぜん違うけど『てーきゅう』の曲はなぜサビが強いのかCM刷り込みと、本当に老いたインターネット老人会
  4. なぜガソリンスタンドの価格表示は赤く点滅するのか?赤い数字・広告ルール・看板費用まで調べた
  5. 火力は消えたのではなく、出力先が変わった約86日で1,225本を生んだ一人編集部
  6. DeNAのスマホゲームに15億円支援?税金を使うなら“国民向けのレシート”を出してほしい

今日これ読んで

この記事を読んだ人の次の疑問に、それぞれ答える記事です。

すべての記事から探す「人間関係」の記事をもっと見る

他の記事を探す

すべての記事

めんどいちゃん

このサイトの運営者

めんどいちゃん

仕事や日常の「めんどい」を構造化して、次に動きやすくする記事を書いています。