結婚そのものが幸福を作るのか、それとも良い関係が幸福を作るのか
結婚すると幸福になるのか。
これは一見シンプルな問いに見える。
しかし、実際にはかなり分解が必要である。
結婚している人の幸福度が高いとしても、それが本当に「結婚したから」なのかは分からない。
もともと幸福度が高い人が結婚しやすいのかもしれない。
安定した収入や健康、人間関係を持つ人が結婚しやすいのかもしれない。
あるいは、良いパートナー関係があるから幸福なのかもしれない。
つまり、見るべきは「婚姻届」そのものではなく、次の要素である。
- 良いパートナー関係があるか
- 日常的に気持ちを支えてくれる相手がいるか
- 孤独が減っているか
- 安心できる生活共同体になっているか
- その関係に満足しているか
- 自由や自分で決めることを壊していないか
結婚は形式である。
幸福に効くのは、その中身である。
結婚している人の幸福度は高い傾向がある
内閣府の経済社会総合研究所が公表した桑原進の研究で、日本の2013年の調査を分析した資料では、配偶者がいる人の幸せの平均値は未婚者より高かった。ただし、差の確かさは性別や年代で異なり、これだけで「結婚すれば幸せになる」とは言えない。
これは直感にも合う。
好きな人と暮らしている。
困ったときに相談できる。
一人で抱えなくていい。
日常に会話がある。
帰る場所がある。
こうした要素は、幸福度に効きやすい。
ただし、ここで重要なのは、結婚したことそのものの効果と、関係の質の効果を混同しないことである。
同じ結婚でも、安心できない関係なら、自分は幸せだとは感じにくいと思う。
毎日干渉される。
不機嫌で支配される。
自由を奪われる。
金銭感覚が合わない。
スキンシップが消える。
安心できない。
後出しで責められる。
この場合、結婚は幸せを増やすものではなく、生活全体への負担になる。
同棲と結婚の差を見るなら、関係の中身も考える
英国、豪州、ドイツ、ノルウェーの38~50歳を調べた2019年の研究では、もともとの生活状況や関係への満足度を考慮すると、結婚している人と同棲している人の幸せの差は小さくなった。日本の全世代にそのまま当てはまる結果ではない。
これは重要である。
幸福に効いているのは、単に法的に結婚していることではなく、良いパートナー関係があることの可能性が高い。
もちろん、結婚制度には現実的な利点もある。具体的な扱いは国や制度、本人の状況によって異なる。
- 法的安定
- 家族としての社会的認知
- 税・保険・相続などの制度
- 共に暮らす約束
- 周囲への説明のしやすさ
しかし、これらは幸福の土台を補助する制度であって、それだけで幸福を作るわけではない。
制度は器である。
中身は関係である。
「結婚すれば幸せ」は粗すぎる
よくある誤解は、次のようなものだ。
結婚すれば幸せになる。
子どもがいればもっと幸せになる。
家族を持てば孤独ではなくなる。
しかし、これはかなり粗い。
正しくは、こうだと思う。
良い相手と、良い生活共同体を作れた場合、幸福度は上がりやすい。
悪い相手と、自由や安心を壊す共同体を作った場合、幸福度は下がりやすい。
結婚は、相手の質を増幅する。
良い相手なら、安心が増える。
悪い相手なら、逃げ場が減る。
だから、結婚するかどうかより先に見るべきは、相手である。
幸福に効くのは「好きなパートナーと一緒にいる」こと
自分にとって重要なのは、結婚というラベルそのものではない。
本当に欲しいのは、たぶん次のようなものだ。
- 好きな人と一緒にいること
- 安心できること
- 甘えられること
- 一人時間も尊重されること
- 干渉されすぎないこと
- でも孤独ではないこと
- スキンシップがあること
- 生活を壊されないこと
- 自分の挑戦や自由を邪魔されないこと
これは、結婚で得られることもある。
同棲で得られることもある。
恋人関係で得られることもある。
逆に、結婚しても得られないこともある。
だから問いは、こう変えた方がいい。
結婚するべきか?
ではなく、
自分の幸福度を上げる関係を作れる相手か?
である。
参考資料(2件)
内閣府 経済社会総合研究所:結婚や子どもと、本人が感じる幸せについての調査分析
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000025-I013680007316321Perelli-Harris et al. (2019), “Mind the Happiness Gap: The Relationship Between Cohabitation, Marriage, and Subjective Well-being in the United Kingdom, Australia, Germany, and Norway,” Demography
https://link.springer.com/article/10.1007/s13524-019-00792-4
