はじめに:「六月病」と言う前に、毎月しんどくないか?
「六月病」という言葉があります。
新年度から少し時間が経ち、環境の変化、疲労、評価や賞与への不満、祝日の少なさ、梅雨や気圧の影響などで、仕事や私生活のモチベーションが下がる状態を指す言葉として使われています。
マイナビの調査では、正社員の5人に1人が「六月病」を経験したことがあるとされています。年代別では20代が最も高く、30代も比較的高い傾向でした。
ただし、ここで考えたいのは、
それは本当に6月だけの問題なのか?
ということです。
5月は連休明けでしんどい。
6月は祝日が少なく、評価や賞与への不満が出る。
7月・8月は暑さでしんどい。
9月は夏の疲れが残る。
10月は下期が始まる。
11月は年末前で忙しい。
12月は繁忙期。
1月は正月明け。
2月は寒い。
3月は年度末。
4月は新年度の環境変化。
こう考えると、毎月「〇月病」と呼べてしまいます。
つまり、「六月病」は6月だけの特殊な病気というより、
年中ある労働疲労に、6月という名前札が付いただけかもしれません。
「六月病」は医学的診断ではなく、自己認識ベースの言葉
まず大事なのは、「六月病」は医学的な診断名ではないということです。
マイナビの調査でも、「六月病」は医学的診断ではなく、回答者自身の認識に基づくものとされています。
これは重要です。
つまり、調査で見えているのは、厳密な病気の有病率ではありません。
見えているのは、
- 疲れやすさ
- 仕事へのやる気の出にくさ
- モチベーション低下
- 環境変化への疲労
- 評価や賞与への不満
- 祝日の少なさによる疲れ
- 天候や気圧の影響
などを、本人が「六月病」として認識している状態です。
そのため、「6月特有の病気」として見るよりも、
働く人の疲労・不満・生活リズム・職場環境の問題が、6月に見えやすくなっていると考える方が現実的です。
正社員の5人に1人という数字は、かなり大きい
正社員の5人に1人が経験しているという数字は、かなり大きいです。
これは、「一部の弱い人だけの問題」として片づけるには多すぎます。
もし5人に1人が疲労感やモチベーション低下を自覚しているなら、それは個人の気合いの問題だけではなく、
- 労働時間
- 評価制度
- 報酬
- 職場の人間関係
- 裁量の少なさ
- 休みにくさ
- 新年度の配置・役割変更
- 仕事量と回復時間のバランス
といった、職場設計の問題として見る必要があります。
特に、若い年代ほど高い傾向があるなら、
「若い人が弱い」ではなく、
若い人ほど、環境変化・評価不満・裁量不足・報われなさを直撃しやすいのではないか
と考えることもできます。
「賞与や評価への不満」は病気ではなく、正常な反応かもしれない
六月病のきっかけとして、「賞与や評価への不満によるモチベーション低下」が挙げられています。
これは重要です。
評価や賞与に不満がある。
頑張っても報われない。
物価や税負担は増えている。
労働量に対して給与が見合わない。
残業しても評価に納得できない。
このような状況でモチベーションが下がるのは、かなり自然な反応です。
それをすぐに「病」と呼ぶと、構造が見えにくくなります。
本当は、
報われ感の低下
評価制度への不信
労働負荷と報酬のズレ
休息不足
裁量不足
なのに、「六月病」というラベルにまとめられてしまう。
これでは、本人の不調は見えても、原因の構造は見えません。
毎月不調なら、まず記録を取った方がいい
「六月病かもしれない」と思ったときに、まずやるべきことは、病名を探すことではありません。
まずは記録を取ることです。
不調は、体感だけで見るとかなり曖昧です。
「なんかしんどい」
「会社に行きたくない」
「やる気が出ない」
「眠い」
「疲れた」
「頭が痛い」
「人と話したくない」
これだけだと、原因が分かりません。
しかし、1か月から3か月ほど記録を取ると、パターンが見えてきます。
記録すべき項目
不調ログは、難しくする必要はありません。
最低限、次のような項目で十分です。
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 日付・曜日 | 6月3日 水曜 |
| 睡眠時間 | 5.5時間 |
| 朝の状態 | 眠い、出社したくない |
| 昼の状態 | 少し回復 |
| 夜の状態 | 普通 |
| 気分スコア | 10点中4点 |
| 仕事イベント | 会議、評価面談、上司対応 |
| 残業時間 | 1.5時間 |
| 身体症状 | 頭痛、だるさ、胃の違和感 |
| 天気・気温 | 雨、湿度高い |
| 回復行動 | 散歩、シャワー、昼寝、甘いもの |
| 回復後の変化 | 午後は復活、夜は普通 |
| メモ | 朝だけかなりしんどい |
これを続けると、たとえば次のようなことが見えてきます。
- 月曜朝だけ落ちる
- 睡眠6時間未満で崩れる
- 会議前に気分が落ちる
- 評価面談後にモチベーションが下がる
- 残業が続くと3日後に落ちる
- 雨の日に頭痛が出やすい
- 午前はしんどいが午後に回復する
- 散歩やシャワーで回復しやすい
- 人混みの後に疲れが出る
ここまで見えると、「六月病」という雑なラベルより、かなり具体的な対策ができます。
「6月だから不調」なのか、「毎月不調」なのかを分ける
記録を取ると、次のように分けられます。
1. 本当に6月にだけ落ちる
新年度の疲れ、祝日の少なさ、梅雨、気圧、賞与評価のタイミングなどが重なっている可能性があります。
この場合は、6月前後に意識的に休みを入れる、睡眠を増やす、業務量を調整するなどが有効です。
2. 毎月落ちているが、6月に名前が付いただけ
この場合は、季節病というより、慢性的な労働疲労の可能性があります。
必要なのは、6月対策ではなく、働き方・休み方・評価・人間関係・睡眠の見直しです。
3. 特定のイベントで落ちている
評価面談、会議、上司対応、締切、繁忙期など、特定のイベントで落ちている場合があります。
この場合は、イベント前後の回復行動や、業務調整が重要です。
4. 朝だけ落ちて、午後は回復する
この場合は、人生全体が終わっているのではなく、朝の神経ゲージが低いだけかもしれません。
朝の状態だけで、退職や転職や人生判断をしない方がいい場合もあります。
企業側が見るべきこと
企業側が「6月はメンタル不調の相談が増える」と感じているなら、単に従業員にセルフケアを求めるだけでは不十分です。
見るべきは、次のような点です。
- 新年度の配置や役割変更に無理がないか
- 評価や賞与への納得感があるか
- 業務量と人員が合っているか
- 残業が常態化していないか
- 休みを取りやすいか
- 上司との面談が詰問になっていないか
- 若手が相談しやすいか
- 報われ感があるか
- 裁量と責任のバランスが取れているか
「六月病ですね」で終わらせるのではなく、
6月に不調が増える職場設計になっていないかを見る必要があります。
「季節病ラベル」で構造を隠さない
5月病、六月病、夏バテ、年末疲れ、年度末疲れ。
こうしたラベルは、状態を説明するのに便利です。
しかし、便利なラベルは、原因を隠すこともあります。
本当は、
- 長時間労働
- 評価不満
- 賞与不満
- 人間関係
- 裁量不足
- 休めない文化
- 属人化
- 上司との相性
- 通勤ストレス
- 睡眠不足
が原因なのに、「六月病」で片づけられてしまう。
これでは、問題が個人のメンタルに寄せられすぎます。
もちろん、個人の体調管理は大切です。
必要なら医療機関や相談窓口につながることも重要です。
ただし、個人の問題だけにしすぎると、職場構造の改善が進みません。
不調ログは、自分を責めるためではなく、守るために取る
記録を取る目的は、自分を責めることではありません。
「また落ちている」
「自分は弱い」
「ちゃんとできていない」
と責めるためではありません。
記録は、自分を守るために取ります。
- 何で落ちるのかを知る
- いつ回復するのかを知る
- どの行動が効くのかを知る
- 無理な予定を避ける
- 休むタイミングを作る
- 相談時に説明しやすくする
- 職場環境の問題を見える化する
記録があると、「なんとなくしんどい」が「睡眠不足と会議が重なると落ちる」に変わります。
これはかなり大きいです。
まとめ:「六月病」ではなく、労働疲労の定点観測不足かもしれない
正社員の5人に1人が「六月病」を経験しているという数字は、かなり大きいです。
しかし、それを「6月特有の病」としてだけ見ると、本質を見誤る可能性があります。
実際には、
- 新年度の疲れ
- 評価や賞与への不満
- 報われ感の低下
- 祝日の少なさ
- 梅雨や気圧
- 睡眠不足
- 残業
- 人間関係
- 休息不足
が重なり、6月に見えやすくなっているだけかもしれません。
大事なのは、ラベルを貼ることではありません。
まず記録を取ることです。
睡眠、曜日、残業、会議、評価、気温、気分、身体症状、回復行動。
これらを1か月から3か月ほど記録すると、不調のパターンが見えてきます。
「6月だから不調」なのか。
「毎月不調」なのか。
「朝だけ落ちる」のか。
「会議や評価で落ちる」のか。
「睡眠不足で崩れる」のか。
それが見えるだけで、対策はかなり変わります。
「六月病」と名付ける前に、まず記録を取る。
それが、自分を責めずに、自分の状態と働き方を見直す第一歩です。
