異世界で勇者をやっていた主人公が日本に帰ってくる。
すると、日本にもダンジョンができていた。
主人公はその経験値と戦闘力を活かして、探索者として、あるいはインフルエンサーとして生きていく。
こういう「異世界帰還×現代日本ダンジョン」系の漫画や小説は、かなり気軽に読める。
異世界で強くなった主人公が、日本でも無双する。
配信でバズる。
ダンジョン素材で稼ぐ。
モンスターを倒す。
レベルが上がる。
普通ならそれだけで楽しい。
しかし、そこに現代日本が混ざると急に空気が変わる。
レベルが上がるごとに一億円稼いだ扱いにします。
課税します。
探索者制度を作ります。
免許制です。
危険なので管理します。
配信収益は申告してください。
草なのだ。
いや、草なのだよ。
異世界では「成長」なのに、日本では「課税イベント」になる
ファンタジー世界でレベルが上がることは、基本的に喜ばしい。
強くなる。
HPが増える。
魔法が使える。
スキルが増える。
より強い敵を倒せる。
仲間を守れる。
冒険の自由度が上がる。
ところが、現代日本に戻ってきた瞬間、レベルアップが「経済的価値の発生」として見られる。
レベルが一つ上がる。
戦闘力が上がる。
希少なスキルが手に入る。
それによって収益力が増す。
では、その価値は所得ではないのか。
課税対象ではないのか。
こういう発想が出てくる。
もちろん、現実の税制上、本当に「レベルアップそのもの」に課税できるかは別問題である。レベルという概念が法制度に存在しない以上、現実ならかなり整理が必要になる。
しかし、作品内の日本政府がそういう制度を作ろうとする感じは、妙にリアルである。
異世界では「成長」。
現代日本では「捕捉可能な経済価値」。
冒険者としては、かなり夢がない。
日本ダンジョンの敵は、スライムではなく制度である
ダンジョンができたら、本来はこう考えてもよさそうである。
新しい資源だ。
新しい産業だ。
未知の医療素材があるかもしれない。
エネルギー問題が解決するかもしれない。
探索者、装備産業、教育、保険、物流、配信、観光、研究が一気に伸びるかもしれない。
つまり、ダンジョンは巨大な成長産業である。
しかし、日本が舞台になると、先に来るのはだいたい管理である。
危ないので登録してください。
勝手に入らないでください。
ドロップ品の持ち出しには許可が必要です。
探索者ランクを設けます。
高レベル者は監視対象です。
配信にはガイドラインがあります。
素材売却益は申告してください。
死亡事故が起きたので規制します。
これも分かる。
ダンジョンには事故がある。未成年が入ったら危ない。魔物素材の密輸も起きる。強い探索者が犯罪に走れば治安リスクになる。外国勢力への技術流出もあり得る。配信で危険行為を煽る人も出る。
だから、制度化や安全管理は必要である。
ただ、日本らしい嫌さは、そこである。
挑戦できるように整える制度ではなく、
挑戦を止めるための制度になりがちに見える。
「みんなのため」で止めてくる
日本ダンジョンものの嫌なリアリティは、単に税金が出てくることではない。
「みんなのため」という顔で止めてくるところにある。
安全のため。
公平性のため。
社会秩序のため。
周りが困らないように。
制度が整うまで待ってください。
前例がないので慎重に。
責任が取れないので。
これらは一見まともである。
実際、必要な場面もある。
だが、問題はその言葉が、動ける人を止めるために使われる時である。
強い人がいる。
速く攻略する人がいる。
改善する人がいる。
稼ぐ人がいる。
新しいやり方を見つける人がいる。
すると、その人に合わせて制度を作るのではなく、その人を止める方向に行く。
「みんなのため」と言いながら、実態は、声の大きい人、不安な人、嫉妬している人、責任を取りたくない人に合わせる。
これがきつい。
嫉妬や不安が「公共性」の顔をする
本当にみんなのためなら、やるべきことは明確である。
危険を減らす。
挑戦者を守る。
成果を社会に還元する。
遅い人も参加できるようにする。
速い人のやり方を学び、全体の生産性を上げる。
つまり、本当の公共性は「できる人を止める」のではなく、「できる人の成果を全体が使える形にする」ことだ。
しかし、クソな公共性は違う。
できる人がいると不安になる。
自分が置いていかれる気がする。
自分だけ損している気がする。
自分のやり方が古く見える。
自分が比較される。
その不快感を、こう包装する。
公平性がない。
みんなが困る。
勝手にやるのはよくない。
組織としてどうなのか。
前例がない。
ルールを整えてから。
こうして、嫉妬や不安が「みんなのため」の顔をする。
これが一番だるい。
職場でも同じ構造がある
これは、なろう系やダンジョンだけの話ではない。
職場でも同じである。
AIを使えば速くなる。
VBAで自動化できる。
Excelを整理すればミスが減る。
手順書や動画を作れば教育が楽になる。
PCで改善すれば、みんなの仕事が軽くなる。
本来なら、これは評価されるべきである。
だが、環境によっては逆になる。
勝手に変えるな。
みんなが使えないから。
属人化するから。
前例がないから。
機密が怖いから。
まず相談して。
でも成果は出して。
失敗したら責任取って。
成功したら便利屋化。
草なのだ。
改善したい人からすると、報酬系が死ぬ。
改善すること自体は楽しい。
PCを触って仕組みを直すのは楽しい。
しかし、改善した瞬間に「止める人」「心配する人」「嫉妬する人」「責任を取りたくない人」が寄ってくると、やる気が消える。
敵は作業そのものではない。
敵は、作業の前後に発生する人間と制度である。
家庭や恋愛でも同じ構造がある
さらに、この構造は家庭や恋愛にも出る。
子どもはどうするの。
家は買わないの。
投資は危ないんじゃないの。
週4勤務なんて大丈夫なの。
普通はこうじゃないの。
親が心配している。
家族のために。
将来のために。
これもまた、「みんなのため」顔で入ってくる。
特に義母のような外部評価者が夫婦の意思決定に常駐すると、かなり危ない。
夫婦二人で決めるべきことが、親族会議になる。
本人たちの合意より、外部の「普通」が強くなる。
しかも、直接うるさい人より厄介なのは、それを相手が夫婦内に持ち込むことだ。
お母さんも心配してる。
普通はこうらしい。
親にも納得してもらわないと。
こうなると、人生が三人以上の評議会になる。
日本ダンジョンの「課税します」と同じで、本人が獲得した自由や成果に、外部の制度・家族・世間の目が入り込んでくる。
税金が悪いのではなく、動く人を止める空気が嫌なのだ
誤解してはいけないのは、税金そのものが悪いわけではないということだ。
社会インフラにはお金がいる。
安全管理にもお金がいる。
ダンジョンで稼いだ人が税金を払うのも、普通に考えれば自然である。
現実の所得税でも、所得は区分され、事業所得、雑所得、一時所得などに分けて扱われる。国税庁も、所得を複数の区分で整理しているし、雑所得は他の所得区分に当たらない所得として説明されている。副収入についても、ネット取引や人的役務の提供などが一般に雑所得として扱われる例が示されている。
だから、「稼いだら申告」は現実には当然である。
問題はそこではない。
問題は、制度が挑戦者を支える方向ではなく、挑戦者を止める方向に働く時である。
稼げる人を増やす。
安全に挑戦できる仕組みを作る。
成果が出た人をモデル化して、他の人も参加できるようにする。
この方向ならいい。
しかし、
目立つ人を止める。
できる人を遅くする。
不安な人に合わせる。
嫉妬を公平性として扱う。
責任を取りたくないから禁止する。
こうなると終わる。
それは「みんなのため」ではない。
動かない人の安心のためである。
日本ダンジョンで一番強い魔物は行政
日本ダンジョンものが面白いのは、ファンタジーを現代日本に接続した瞬間、敵が変わるところである。
異世界なら、敵は魔王である。
ダンジョンなら、敵はモンスターである。
でも日本では、敵がこうなる。
税制。
許認可。
ガイドライン。
申請書。
炎上。
コンプラ。
世間の目。
審議会。
安全配慮義務。
「みんなのため」。
草なのだ。
スライムより先に税務署が来る。
魔王より先に制度設計が来る。
勇者の剣より先に確定申告が来る。
ファンタジーなのに、一番強い魔物が行政になる。
このリアリティが、日本ダンジョンものの面白さであり、嫌さである。
現代日本で勇者がインフルエンサーになる理由
元異世界勇者が、日本で探索者兼インフルエンサーになるのはかなり合理的である。
ただダンジョンに潜るだけでは、制度に捕まる。
素材を売るだけでは、流通や許認可に絡め取られる。
探索者として強いだけでは、監視対象になる。
そこで配信である。
自分の物語を自分で発信する。
人気を取る。
スポンサーをつける。
視聴者を味方につける。
収益化する。
税理士をつける。
事務所化する。
これが現代日本の勇者ルートである。
剣一本で自由に冒険するより、メディアと制度を使った方が強い。
もはや勇者に必要なのは、聖剣だけではない。
カメラ。
編集力。
SNS運用。
税務知識。
契約書。
炎上対策。
草なのだよ。
動いた結果が返ってくる場所に行け
結局、ここで見えてくるのはかなりシンプルである。
人は、動いた結果が返ってくる場所では元気になる。
PCで改善する。
コードを書く。
記事を書く。
アプリを作る。
投資する。
動画化する。
手順化する。
こういうものは、動いた結果が返ってくる。
成果が残る。
自分の資産になる。
次に使える。
報酬系が動く。
逆に、止めてくる人が多い場所では、やる気が消える。
みんなのため。
公平性のため。
心配だから。
前例がないから。
責任が取れないから。
こういう言葉で止められると、強い人ほど削られる。
だから、自分の人生では「止めてくる人」を近くに置かない方がいい。
職場でも、家庭でも、恋愛でも、友人関係でも同じである。
意見をくれる人はいい。
相談した時に情報を出してくれる人はいい。
でも、頼んでもいないのに、心配や正義の顔で止めてくる人は危ない。
まとめ:日本課税、草なのだ
日本にダンジョンができたら、たぶんかなり早い段階で制度ができる。
探索者登録。
ダンジョン税制。
素材売却の申告。
高レベル者の監視。
配信ガイドライン。
危険区域の許認可。
魔物素材の流通管理。
全部ありそうである。
それ自体は必要な部分もある。
ただ、そこで大事なのは、制度が挑戦を支える側に回ることだ。
挑戦者を止めるための制度になったら終わりである。
なろう系の日本ダンジョンものが面白いのは、異世界能力が日本社会に接続された瞬間、冒険が急に税金・許認可・炎上・コンプラになるところだ。
魔王を倒した勇者が、次に戦う相手が税務署。
小説としては草。
現実としては、かなり嫌。
でも、そこに日本社会のリアリティがある。
日本課税、草なのだ。
この記事の公開メモ
- 公開可否:公開可
- 注意点:特定作品名を出さないなら安全。出す場合はネタバレ範囲と作品名を明示する。
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- 異世界帰還 日本 ダンジョン
- レベルアップ 課税 草
- なろう系・現代ダンジョンものが好きな人
- 日本社会の「制度で止める感じ」にモヤる人
- 仕事や家庭で「みんなのため」に削られたことがある人
参考資料(4件)
- 国税庁「所得の区分のあらまし」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1300.htm - 国税庁「雑所得」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1500.htm - 国税庁「一時所得」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1490.htm - 国税庁「給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1906.htm
