※この記事は『ファイナルファンタジーVI』およびピクセルリマスター版のネタバレを含みます。
FF6の魔導工場、普通にえぐい。
プレイ中は、まず攻略面で忙しい。
ベルトコンベアが多い。
一方通行が多い。
敵が硬い。
エドガーのドリル、マッシュの鳳凰の舞、真空波、セリスの魔法で押し切る。
そして奥まで進むと、シヴァとイフリートが出てくる。
ここだけ見ると、いつものRPGのボス戦に見える。
「お、イフリートとシヴァ来た」
「倒したら魔石になるのか」
「マディンも来た」
「ビスマルク力+2強い」
「セリスはマディン、マッシュもマディンでいいな」
みたいな感じで、急に育成ゲームが始まる。
でも、少し冷静に考えるとかなり重い。
魔導工場は、宝箱のあるダンジョンではなく収容施設
魔導工場で手に入る魔石は、ただの便利アイテムではない。
そこにいたのは、帝国に捕まって力を吸われていた幻獣たちである。
イフリート。
シヴァ。
ユニコーン。
カーバンクル。
ビスマルク。
ファントム。
カトブレパス。
そしてマディン。
ゲーム上は「魔石を入手した!」という明るい通知で処理されるが、物語上はかなりひどい。
帝国は幻獣を捕獲し、魔導工場で魔力を抽出し、魔導アーマーや魔導兵器、魔導戦士の研究に使っていた。
つまり魔導工場は、ファンタジー世界の神秘を電池化する場所である。
やっていることはだいたいこう。
幻獣を捕まえる
↓
施設に閉じ込める
↓
魔力を吸う
↓
兵器や人体改造に使う
↓
残った意志や力が魔石になる
えぐい。
イフリートとシヴァをよく捕まえたな、人間
特に思うのが、イフリートとシヴァである。
普通のFF感覚だと、イフリートとシヴァはかなり格のある召喚獣だ。
炎の幻獣。
氷の幻獣。
シリーズを代表する存在。
それを帝国が捕まえて、魔導工場の奥で力を吸っていた。
人間、よく捕まえたな。
もちろん、正面から皇帝ガストラがイフリートに殴り勝ったというより、罠、兵器、数、魔導技術、研究施設、拘束装置などを総動員したのだと思う。
それでも怖い。
魔法を失ったはずの人類が、科学と軍事と帝国組織によって、神秘の側を捕まえて利用している。
FF6の帝国は、単なる悪の王国というより、近代国家の暴力と研究機関の怖さを持っている。
剣と魔法の世界というより、軍事研究で神秘を家畜化する世界である。
マディンは“ティナのお父さん”なのに、すぐ育成アイテムになる
そして一番温度差がすごいのがマディンである。
マディンはティナの父親だ。
幻獣界で人間の女性マドリーヌと出会い、ティナが生まれた。
しかし帝国が幻獣界に侵攻し、ティナは連れ去られ、マディンたち幻獣も帝国に捕まる。
そして魔導工場で再会した時点で、マディンはもうかなり限界に近い。
ティナに会えた。
でも、生身の父親として一緒に生きることはできない。
最後に力を託す形で、魔石になる。
普通に悲しい。
なのにゲーム上は、その直後にこうなる。
マディンを入手した!
魔力+1
ファイラ習得
ブリザラ習得
サンダラ習得
急に実用情報になる。
しかもプレイヤーはすぐ考える。
「セリスにマディンでいいな」
「ティナにもマディンだな」
「マッシュも鳳凰の舞と真空波が魔力系だからマディンだな」
つまり冷静に言うと、
ティナのお父さんを装備して、セリスとマッシュの魔力を上げている。
かなり業が深い。
マッシュに至っては、見た目は完全に筋肉格闘家なのに、マディンで魔力を育て、後衛から鳳凰の舞や真空波を撃つ。
ティナ父、娘だけでなく筋肉魔導士の教育係までやっている。
FF6の魔石システムは便利だが、物語的には怖い
FF6の魔石システムは、攻略上はとても便利だ。
魔法を覚えられる。
召喚できる。
レベルアップ時にステータスボーナスが入る。
マディンなら魔力。
ビスマルクなら力。
ユニコーンやカーバンクルなら便利魔法。
育成としては楽しい。
ただ、物語として見ると怖い。
魔石とは、幻獣の命や意志の残りのようなものだからだ。
プレイヤーはそれをアクセサリーのように付け替える。
セリスにマディン。
ロックにビスマルク。
マッシュにマディン。
エドガーにビスマルク。
便利魔法を覚えたいからカーバンクル。
ケアルラが欲しいからユニコーン。
ゲームとしては正しい。
でも、物語としてはかなり重い。
FF6はこの温度差がすごい。
悲劇を見せた直後に、システム画面で「魔力+1」と表示する。
帝国の非道を見せた直後に、プレイヤーにも魔石運用をさせる。
命の残滓を、攻略資源として扱わせる。
この淡々とした感じが、むしろ怖い。
ガストラおじいちゃん、丈夫すぎる
あと、ガストラ皇帝もよく考えると丈夫すぎる。
16年前に幻獣界へ侵攻し、幻獣を捕まえ、ティナを連れ去り、その後も帝国を拡大し、今も皇帝として現役で動いている。
見た目は完全に「悪いおじいちゃん」なのに、行動量がすごい。
ただ、設定上の年齢は50歳らしい。
50歳。
思ったより若い。
「おじいちゃん」というより、世界征服に元気すぎる中年である。
しかしドット絵と威厳ある立ち位置のせいで、どう見ても年季の入った皇帝に見える。
しかもやってきたことが濃い。
帝国を拡大する
幻獣界に侵攻する
幻獣を捕獲する
ティナを兵器として利用する
魔導工場を作る
ケフカやセリスのような魔導戦士を生み出す
魔導アーマーを運用する
世界支配を狙う
行動力が高すぎる。
ファンタジーの悪役というより、国家予算と研究所と軍を持った最悪のプロジェクトマネージャーである。
ケフカより怖いのは、帝国の仕組みかもしれない
ケフカはわかりやすく怖い。
毒を撒く。
逃げる。
人の心がない。
笑いながら壊す。
でも、魔導工場を見ると、FF6の怖さはケフカだけではないと思う。
本当に怖いのは、帝国という仕組みである。
ケフカ一人なら、マッシュやカイエンやシャドウで倒せそうに見える。
しかし帝国は違う。
幻獣界へ侵攻する。
幻獣を捕獲する。
施設を作る。
魔力を抽出する。
兵器に転用する。
人体改造する。
それを国家レベルで運用する。
これは一人の悪党の狂気ではなく、組織化された暴力だ。
だから魔導工場は怖い。
工場という名前がついているせいで、余計に怖い。
神秘を処理するライン。
命を資源化する施設。
幻獣を電池にする帝国。
FF6の前半で、帝国の正体がかなりはっきり見える場所だと思う。
まとめ:魔導工場は、攻略上はうれしい。物語上はかなりえぐい。
魔導工場は、攻略的には大きな転機である。
シヴァとイフリートが手に入る。
マディンが手に入る。
ビスマルクも手に入る。
魔法習得とステータス育成が一気に広がる。
プレイヤーとしてはうれしい。
しかし物語として見ると、かなりえぐい。
そこにあったのは、帝国が幻獣を捕まえ、力を吸い、兵器に変換していた現場だった。
イフリートもシヴァも、ボスとして強いから出てきたのではない。
捕まって、弱らされて、最後の力で協力してくれた。
マディンも、ただの魔石ではない。
ティナの父親であり、帝国に奪われた家族であり、最後に娘へ力を託した存在である。
それを装備して、セリスやマッシュを育てる。
FF6は、やっぱり温度差がすごい。
「マディン魔力+1つよい」と思う一方で、
「これティナのお父さんなんだよな」とも思う。
その両方が同時に成立するのが、FF6のえぐさである。
