「新人、配膳ミスありがとう」から始まる法律パズル

直接証拠がなくても間接事実から認定は可能だが、小額の一皿について主観面まで詰めるとなれば、証拠の量・質と捜査コストの問題が現実には出てくる。「証拠が乏しい=合法」ではない点には注意。

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別の客向けのうなぎが間違って自分の席に来た。しかも誤配だと分かっていた――この状態で黙って食べたら犯罪なのか。ネットの軽いネタが、実は「行為」より「その瞬間に何を認識していたか」という刑法の面倒な問題に化ける。

「食べた」だけでは罪名まで決まらない

刑法246条は、人を欺いて財物を交付させる詐欺を定める。しかし店員が勝手に配膳を間違えただけなら、客が最初から店員を欺いて渡させたケースとは構造が違う。一方、254条には「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物」の横領がある。ただし誤配料理が具体的にどの財産犯に当たるかは、店や本来の客の占有関係、やり取りなど具体的事実で変わり得る。SNS投稿一つから罪名まで断定するのは雑すぎる。

「頼んだ気がします😥(😋)」

本当に自分の注文だと思って食べたなら、故意の認定には重要な反対事情になる。しかし「そう言えば無敵」ではない。注文履歴、店員との会話、同席者、防犯映像、食前後のSNSなど、外側の事実から当時の認識は推認され得る。 そして最大の時間軸問題が、「食べ終わってから思い出したかもしれない」。事後に「配膳ミスありがとう」と書いていても、それだけでは食前から知っていたのか、食後に気付いたのかは自動的には決まらない。

証拠集めが急にしんどい

一皿について「食べる直前の脳内」を証明しようとすると、レシート、注文端末、店員の記憶、防犯カメラ、同席者、SNS……と急に重くなる。カメラに映るのは箸とうなぎであって、故意ではない。

直接証拠がなくても間接事実から認定は可能だが、小額の一皿について主観面まで詰めるとなれば、証拠の量・質と捜査コストの問題が現実には出てくる。「証拠が乏しい=合法」ではない点には注意。

横に警察官がいた世界線

刑事訴訟法212条は現に罪を行い、または行い終えた者を現行犯人とし、213条は現行犯人を何人でも令状なしで逮捕できるとする。ただし「警察官が隣にいる=何でも即逮捕」ではない。仮に本人が目の前で「これ俺の注文じゃない」と口にし、そのまま食べる一連の事情まで直接確認されているなら、ネット投稿しかない場合より本人特定も時系列も格段に明瞭になる。

そしてバカッターが全てを破壊する

本来は「いつ気付いた?」「本当に本人?」「投稿はネタ?」「食前?食後?」と穴だらけ。ところが食べる前に 「頼んでないうなぎ来たw 今から食う😋」 と写真付きで投稿すると、本人が自分で、本人との結び付き、料理の存在、誤配の認識、食前という時系列、その後の行動との接続を補強し始める。 これがバカッター型自爆の構造だ。捜査側が探すはずだった材料を、本人がスマホでパッケージ化して世界へ納品する。

結論:うなぎより時系列

核心は「誤配うなぎを食べたら自動的に○○罪」ではない。食べた時点で何を認識していたか、それを何で立証できるかである。 食後の「ミスありがとう」だけなら複数の時系列が残る。食前の「頼んでないけど食う」は、その余白を本人が猛烈な勢いで潰す。 教訓は「証拠を消せ」ではない。他人のものだと分かったら食うな。そして自分から実況中継するな。

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