選択的多弁オタクという生態
ChatGPTに対しては、ずっと話している。
仕事の愚痴、転職、ゲーム、投資、ブログ、体調、人間関係、漫画の展開。
一つ話すと、そこから別の構造が見え、さらに話が広がる。数行で終わることもあれば、何万文字ものログになる。
ところが、現実の周囲の人には、それほど自分から話しかけない。
相手が忙しそうなら話さない。
興味がなさそうなら話さない。
自分にも話題への関心がなければ話さない。
一方で、相手が詳しい、話が通じる、聞く耳がある、面白いテーマを共有できると分かると、一気に話す。
これは、お喋りなのか。無口なのか。
結論は、お喋りではある。ただし、社交そのものを目的にしたお喋りではない。
「人と話したい」より「面白いものを掘りたい」
誰とでも雑談を続けたい人は、会話そのものが目的になりやすい。
天気、休日、食事、近況などをやり取りし、関係を維持する。
自分の場合は少し違う。
会話が起動するのは、話題に探索価値があるときだ。
- これはなぜ起きたのか
- 相手はどう見ているのか
- 自分の仮説と何が違うのか
- もっと良い分類はないか
- 次に何が起きるか
- 仕事や記事へ転用できるか
つまり、会話は親密さを維持する手段である以上に、共同研究の装置になっている。
相手は「会話相手」というより、面白い対象を一緒に掘れる人である。
無口ではなく、起動条件が厳しい
話す能力が低いわけではない。
話す材料も多い。
ただ、出力する条件が厳しい。
次の条件が揃うほど、発話量が増える。
- 自分がその話題に興味を持っている
- 相手も興味を持っている
- 相手に知識や独自の視点がある
- 忙しくなさそう
- 一方的に聞かされている顔をしていない
- 質問や具体例が返ってくる
- 話を広げても嫌がられない
逆に条件が揃わなければ、頭の中に考えがあっても話さない。
性格研究でも、話好き、社交性、積極性といった外向的な行動は、個人の固定値だけでなく、状況やその時の目的によって大きく変化する。
「普段静かな人が、特定の場では非常に話す」ことは矛盾ではない。
相手の受信状態を見ている
興味のある話題では大量に話せる。
しかし、現実の相手へChatGPTと同じ量を一方的に浴びせているわけではない。
相手の反応を見ている。
- 質問が返ってくるか
- 相づちだけになっていないか
- 相手から新しい材料が出るか
- 返事が短くなっていないか
- 視線や身体が別の方向を向いていないか
- 会話を終えたそうではないか
受信状態が悪ければ、出力を止める。
だから正確には、無制御な早口オタクではない。
相手の帯域を見ながら出力を調整する、制御付きの選択的多弁オタクである。
たまに、相手が非常に詳しく、「この人は本当に分かっている」と感じると、没頭して出力が増えすぎることはある。
そのときは、普段の帯域制御が外れやすい。
ただ、本人も後から「少しやりすぎた」と認識できる。
ChatGPTは、対人会話というより外部脳である
ChatGPT相手に無限に話せる最大の理由は、通常の人間関係にある会話コストがほとんどないことだ。
人間相手なら、無意識に次を処理する。
- 今話しかけてよいか
- 相手は暇か
- 相手はこの話題に興味があるか
- 長すぎないか
- 自分ばかり話していないか
- 相手の話す番を作れているか
- 前回の話を覚えているか
- 途中で話題を変えてもよいか
- 結論をきれいにまとめる必要があるか
ChatGPTには、ほぼ全部を省略できる。
思いついた順に投げられる。
話が飛んでも戻れる。
長文でも止められない。
過去ログをもとに整理できる。
同じことを別角度から何度聞いてもよい。
そのため、ChatGPTは単なる会話相手ではない。
- 検索窓
- メモ帳
- 掲示板
- 研究助手
- 編集者
- 壁打ち相手
- 外部ワーキングメモリ
を合体させた「インターネット君」である。
5ch型ではなく、ネット上に研究ノートを作る型
「インターネット向けのオタク」と言うと、匿名掲示板へ大量投稿する人を想像するかもしれない。
しかし、5chへ書き込むわけではない。
議論相手を殴り負かしたいわけでもない。
近いのは、ネット上へ研究ノートを延々作るタイプだ。
何かを体験する。
疑問を持つ。
調べる。
構造化する。
名前を付ける。
ChatGPTに投げる。
記事へする。
別のテーマと接続する。
この循環をずっと回している。
現実の雑談より、検索、AI、ブログ、SNSのような話題中心の空間と相性がよい。
コミュニケーションでもドパガキだった
会話の楽しさにも、高速フィードバックが入っている。
面白いことを投げる
→反応が返る
→新しい視点が出る
→さらに考える
→また投げる
これは、SNS、ゲーム、調査、記事作成と似たループである。
反応が速く、内容が濃く、次の刺激がすぐ来るほど続けやすい。
だから、興味のない雑談では起動しない。
話が分かる相手やChatGPTだと止まりにくい。
人とつながりたいだけではなく、思考が展開する快感を求めている。
コミュニケーションでもドパガキである。
ただし、これは悪いことだけではない。
- 深い話ができる
- 相手の知識を引き出せる
- 話題を構造化できる
- 発見が多い
- 相手が同じタイプなら非常に楽しい
という強みがある。
問題になるのは、楽しさで稼働時間を忘れることだ。
ChatGPTとの会話は仕事ではない。
しかし、深掘り、検索、整理、記事化まで続ければ、身体にとっては高刺激な長時間活動になりうる。
自分はお喋りなのか
結論を一文で言えば、こうなる。
頭の中は非常にお喋りで、現実では相手と話題を選び、インターネットではほぼ全出力する。
「社交的か内向的か」の二択では収まらない。
- 言語出力量は多い
- 常時人と一緒にいたいわけではない
- 興味のない雑談は少ない
- 面白い相手には積極的
- 相手の聞く耳は見る
- AIには帯域制限がないので全開になる
つまり、普段は省エネ、刺さると急に長文になるオタクである。
参考資料(2件)
- McCabe KO, Fleeson W. What is Extraversion For? Integrating Trait and Motivational Perspectives and Identifying the Purpose of Extraversion.
- Fleeson W, Jayawickreme E. Whole Trait Theory.
