「大学向けのAIサービス、何か一般人でも使えるものないのかな」と眺めていたら、話が思わぬ方向へ飛んだ。
一般向けのGMO天秤AIを見たら、モデル選択欄にGPT-6 Astraがいる。
いや、いるだけではまだ信用しない。
世の中には「選べそうに見えるけど、押したら課金画面」というゲームの宝箱みたいなUIがある。
そこで実際に選ぶ。
動いた。
しかも無料プランである。
ここで感想はかなり単純だった。
「選択、神すぎる。Astraくんほんまやりたい。」
ただ、データ分析や探索に使おうとすると、すぐ次の問題が出る。
「でも元データ全部を触らせるのは弱くない?」
その疑問まで含めて整理すると、天秤AI FreeのAstraは「巨大データを丸ごと食う計算機」ではなく、1日2回だけ召喚できる研究主任として使うとかなり面白い。
1. 5秒で結論――無料、1日2回、0時リセット
2026年9月時点のGMO天秤AI公式FAQでは、個人向けのFreeプランは1日80クレジット。Plusも同じく80クレジットで、毎日0時にリセットされる。
GPT-6 Astraは「専門」モデルに分類され、1回40クレジット。
したがって、単純計算はこうなる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Free料金 | 0円 |
| 1日のクレジット | 80 |
| Astra 1回 | 40 |
| Astra最大回数 | 2回/日 |
| リセット | 毎日0:00 |
| Freeチャット入力 | 10,000文字/回 |
| Plus料金 | 970円/月(税込) |
| Plusの1日クレジット | 80 |
| Plusチャット入力 | 50,000文字/回 |
つまり、無料でAstraを毎日2発。午前0時に弾薬補給。ただしFreeの投入口は1発1万文字。
月30日なら理論上60回、31日なら62回である。もちろん、途中で他の有料クレジットモデルを使えば、そのぶんAstraへ回せる残量は減る。
複数AIを同時選択した場合は、それぞれの消費クレジットが合算される。
「Astraと他モデルを一斉射撃して比較だ!」と気持ちよく全部押すと、クレジットも気持ちよく消える。
2. PlusにするとAstraが増える?――増えない
ここはかなり大事だ。
個人向けFreeは0円、Plusは月970円。しかし公式比較では、FreeもPlusもAI用クレジットは80/日である。
つまり、Astraだけが目的なら、Plusへ上げても
2発/日 → 2発/日
のまま。
「課金した! これでAstra四連装砲!」にはならない。
Plusで増える主なものは別だ。
- Web検索
- ファイル添付
- Deep Research
- 画像関連機能
- 履歴保持数の拡大
- チャット入力上限が10,000文字から50,000文字へ拡大
FreeはWeb検索とファイル添付がなく、履歴も制限がある。一方Plusではそれらが拡張される。
したがって判断基準は明快で、Astraの回数を増やすためにPlusへ入るのは違う。Astraへ渡せる材料や周辺機能を増やすためにPlusへ入る、である。
3. Astra本体はかなりデカい――105万トークン文脈
OpenAIの公式モデルページでは、GPT-6 Astraは1,050,000トークンのコンテキストウィンドウと最大128,000出力トークンを持つ最上位モデルとして案内されている。
用途も、複雑な推論、コーディング、コンピューター操作、調査、文書作成など、最初の依頼から完成物まで進める難しい仕事向けとされる。
GMO天秤AI側もAstraを、105万トークンの長文脈を扱い、ブラウザ・PC操作を含む多段階作業向けの最上位モデルとして紹介している。
ここだけ見ると、巨大データ分析民の脳内に悪魔がささやく。
「105万? じゃあ全部突っ込めるやん。」
だが、そこには一段階ある。
モデル本体の最大能力と、天秤AIというサービスの入力経路は別物である。
エンジンがF1だからといって、家の玄関からF1マシンが入るとは限らない。
4. Freeの最大弱点――巨大な元データを直接触らせにくい
天秤AI Freeは、公式FAQでファイル添付非対応と明記されている。
だから巨大なCSV、JSON、Parquet、ログ、tickデータなどを「ほら、全部読んで探索して」と直接渡す運用には向かない。
さらにFreeのチャット入力欄そのものが1回10,000文字までで、超えた部分は自動的にカットされる。Plusは50,000文字までである。
ここはかなり重要だ。105万トークンはAstra本体のコンテキスト能力、1万文字は天秤AI Freeの投入口の上限であり、同じ数字の話ではない。
つまりFreeで探索結果をAstraへ渡すなら、集計表をそのまま貼るのではなく、指示文+探索ログ+集約結果+失敗仮説まで含めた最終研究パケットを1万文字以内へ圧縮する必要がある。1万文字を超えて後ろが自動カットされれば、肝心の反証条件や失敗履歴が消える可能性がある。
頭は体育館サイズ。でも受付窓口は1万文字。搬入前に圧縮梱包が必要である。
Plusではファイル添付が可能になるが、サービス側の上限がある。公式案内では、一度に添付できるのは最大5ファイル。OfficeやPDFは32MBなどの条件があり、CSV・JSON・TXTなど多くの形式は10万文字までとされる。
つまり、数GB〜数十GB級の生データを丸ごと投げる発想はそもそも違う。
105万トークンのAstraに対して、入口でデータセンターの搬入口を期待してはいけない。
Astra「頭には入る」
天秤AI Free「でも入力欄は1万文字、ファイル入口もない」
このコンビ、能力不足ではなく入館ゲート問題である。
5. じゃあデータ分析には微妙?――逆。役割を変える
ここで「じゃあ使えんやん」と切るのは早い。
大規模データ分析で本当に必要なのは、毎回LLMへ生データを全部見せることではない。
生データを扱うのは、Python、SQL、専用バックテスト環境、ローカル処理、クラウド計算、コーディングエージェントなど、データの置き場所に実際に届く実行役に任せればよい。
その実行役から、次のような圧縮済みの情報を返す。
- 市場・期間・条件ごとの集計
- 上位/下位の結果
- 外れ値
- 失敗した仮説
- パラメータ感応度
- 時間帯別・局面別の差
- 取引コストを入れた後の結果
- train / validation / out-of-sampleの差
- コードの要点
- 次に判断が必要な分岐
そしてFreeなら、それらを指示文込みで合計10,000文字以内に再圧縮してAstraへ渡す。
するとAstraの仕事は、計算そのものではなく「次に何を計算すべきか」を決めることになる。
ここで急に強くなる。
Astraくん、計算室ではなく研究主任席へようこそ。
6. 「元データを触れない」を弱点から設計条件へ変える
探索で怖いのは、モデルが賢いかどうかだけではない。
むしろ、
- 同じ仮説を言い換えて何度も試す
- 良かった期間だけ見る
- コストを後付けする
- 変数を増やしすぎる
- 過学習した結果を「発見」と呼ぶ
- 失敗した探索を忘れる
といった研究プロセスの崩れである。
そこで、生データ実行役とAstraを分離する。
実行役は、決められた仕様で全件を走らせる。
Astraは、結果を見て仮説を作り、反証条件を決め、次の探索仕様を書く。
この分離には意外な利点がある。
Astraがその場のノリで「この部分だけもう一回細かく見よう」と生データへ無制限に潜れないので、探索履歴と検証条件を明示しやすい。
しかも1万文字制約がある以上、実行側は「何を残すか」を決めて研究パケットを圧縮する必要がある。上位結果だけを残して失敗例を捨てる圧縮はダメで、反証に必要な負け筋・除外条件・検証範囲は優先して残す。
要するに、研究主任にSQLコンソールを渡さず、1万文字以内の実験報告書と依頼票を書かせる。
少し不便だが、研究としてはむしろ筋がよくなる場合がある。
7. 無料2発なら、この使い方が強い
1発目:探索会議
実行環境から集約結果を貼る。
その前に、Freeでは指示文を含めて10,000文字以内に収める。長い探索履歴は「目的・検証済み事実・失敗仮説・反証材料・未検証分岐・次に判断してほしいこと」の順に圧縮すると、Astraへ必要な文脈を残しやすい。
そして、例えばこう指示する。
以下は既存探索の結果です。再検証済みの事実、未検証の仮説、失敗仮説を分けてください。過学習、データリーク、取引コスト、時間依存、特定局面依存の反証を優先してください。そのうえで、次に試す価値が高い探索を3件だけ順位付けしてください。
ここでは「アイデア100個」より、次にやる3個を削り出す方が価値が高い。
2発目:実行指示書へ変換
1発目の結論を受けて、次はこうする。
1位の探索を実行担当AI/コード環境へそのまま渡せる仕様書にしてください。入力、対象範囲、除外条件、特徴量、評価指標、手数料・スリッページ、時系列分割、リーク防止、成功条件、失敗条件、保存する中間結果、再現性チェック、終了条件まで固定してください。追加確認で止まらず、合理的な既定値を明示して完遂可能な形にしてください。
これでAstraの2発が、
「考える」→「実験を発注する」
になる。
無料枠の使い切り方としてかなりきれいだ。
8. 0時リセットは地味に強い――日付境界コンボ
クレジットは毎日0時に80へ戻る。
だから、その日の残りを23時台に使い、日付が変わった後に翌日分を使うことはできる。
例えば、
23:50 探索会議
23:58 実行仕様書
00:05 実行結果を再評価
00:15 次の指示書
という、合法的な日付変更4連コンボも成立する。
もちろん翌日分を前借りしているだけなので、永久機関ではない。
午前0時は魔法の泉ではなく、単なるデイリー更新である。
でも「今夜まとめて研究会をしたい」場面ではかなり使いやすい。
9. 多モデル選択は神UI、ただしクレジット算数を忘れない
天秤AIの面白さは、同じ質問を複数モデルへ同時に投げて比較できるところにある。
実際、モデル選択画面でAstraまで並んでいるとテンションが上がる。
「AI界のキャラ選択画面、SSRしかおらんやん」状態である。
ただし同時実行では消費が合算される。
無料80クレジットをAstra2回に全振りするなら、他の有料モデルへ散らさない方がよい。
逆に、安いモデルで事前整理して、最後の難しい判断だけAstraへ投げるのも合理的だ。
雑用を全員ラスボスに頼まない。
Astraへ「このCSVの列名を整えて」は、無料2発の使い方として贅沢すぎる。
10. ChatGPT本家のAstraと「同じモデル」でも、同じ環境ではない
ここも混同しやすい。
OpenAI本家ではAstraは、ChatGPT WorkやCodex、対象プランのGPT-6 Proなど、ファイル・アプリ・コンピューター操作を含む環境で使われる。
天秤AIでAstraを選ぶことは、Astraというモデルを使えるという意味ではあるが、ChatGPT本家のMemory、Work、Codex、各種接続、利用枠、ツール環境まで同じになるわけではない。
同じエンジンでも、積んでいる車体と工具箱が違う。
だから比較するときは、
モデル性能
と
サービスがそのモデルへ渡せる道具・データ・権限
を分けて考える必要がある。
データ分析ではこの差がかなり大きい。
11. 結論――無料Astraは「生データ処理機」ではなく「1日2回の研究主任」
最初は「無料でAstra使えるの? ええやん」で終わる話に見えた。
実際、そこだけでも十分ええ。
ただ、データ分析・探索の用途まで考えると、もっと使い道がはっきりする。
- Freeで80クレジット/日
- Astraは40クレジット/回
- 最大2回/日
- 毎日0時リセット
- Freeのチャット入力は10,000文字/回、超過分は自動カット
- Plusのチャット入力は50,000文字/回
- PlusにしてもAIクレジットは80/日のまま
- Freeはファイル添付・Web検索なし
- 巨大な生データは別の実行環境で処理
- Astraには集約結果・失敗履歴・コード要約を指示文込み1万文字以内に圧縮して渡す
- Astraは仮説生成、反証、優先順位、次の実行指示を担当
この役割分担なら、Freeの制約が致命傷にならない。
むしろ毎日2回、1回1万文字という制約があるから、Astraへ投げる前に材料を整理する。
その結果、
「全部見てなんか見つけて」
ではなく、
「ここまで分かった。次に何を潰すべき?」
という研究らしい問いになる。
無料2発のAstraは、データセンターではない。
朝夕2回だけ会議室に降臨する、やたら頭のいい研究主任である。しかも会議資料は1万文字以内。
それなら、十分すぎるほど使い道がある。
