リズム天国シリーズは、かわいい顔をしている。
音楽に合わせて、ボタンを押す。操作はシンプル。公式にも『リズム天国 ミラクルスターズ』は「リズムに合わせてボタンを押すだけ」の簡単操作で遊べるゲームとして紹介されている。新作はNintendo Switch向けに2026年7月2日発売、オール新作80種類以上のリズムゲームが入っているらしい。
ただし、冷静に設定を見るとだいぶおかしい。
いや、かなりおかしい。
リズムは楽しい。キャラもかわいい。音も気持ちいい。
でも、状況だけ抜き出すと、
「その世界、まず行政指導入れろ」
となる。
ペットボトルに縄跳びを要求するな
SNSでバズっていた絵で、ペットボトルに縄跳びをさせて、ミスると圧をかけてくるお姉さんがいた。
たぶん『リズム天国 ミラクルスターズ』の「PETとなわとび」系のネタだと思う。
この構造がまず理不尽すぎる。
お姉さんは当然のようにペットボトルへ縄跳びを要求する。
ペットボトルは、跳ぶ。
プレイヤーがミスると、ペットボトルが失敗する。
すると、お姉さんが圧をかけてくる。
いや、まず対象物を見てほしい。
ペットボトルである。
脚がない。
関節もない。
そもそも縄跳びをするように設計されていない。
にもかかわらず、世界観側は「できるよね?」という顔をしてくる。
これがリズム天国の怖いところだ。
前提は狂っているのに、リズム要求だけは正確。
「対象物の性能を無視して要求しているのはそっちなのに、なぜこちらが詰められているのか」みたいな気持ちになる。
しかも、攻略サイトの難関ステージランキングでも「PETとなわとび」は、ボタンを押す回数が多い、二重跳び後にタイミングが変わる、PETのジャンプ力が低い、ミスするとトレーナーに責められている気分になる、といった難しさが挙げられていた。
つまり、プレイヤー側の感覚としても、ちゃんと「圧」は発生している。
ペットボトルに縄跳びをさせておいて、できないと圧をかける。
これはもう、ゲームというより、謎の新人教育である。
月は耳鼻科へ行け
もう一つ強いのが、月がくしゃみするやつ。
「千年に一度のコワ〜イよる」みたいな設定で、月がくしゃみをする。
それだけでもう意味が分からない。
千年に一度なら、まず災害対策会議をしてほしい。
なぜ外にいるのか。
なぜ避難路がそんなに弱いのか。
なぜ月のくしゃみをリズムで処理しようとしているのか。
画像のツッコミにもあったけど、
「今夜くらい家に居な」
があまりにも正しい。
千年に一度の怖い夜なら、外出禁止でいい。
月がくしゃみするなら、耳鼻科に行けばいい。
避難路に穴があるなら、板を足せばいい。
前の人を押すな。
全部正しい。
でもゲームとしては、その全部を無視して、リズムでなんとかしろと言ってくる。
ここが面白い。
常識で解決できる問題を、あえて常識で解決しない。
「家にいろ」「橋を直せ」「月を治療しろ」という現実的な解決策を全部捨てて、プレイヤーにタイミング入力をさせる。
それがリズム天国である。
まず橋を作れ、という正論が通らない世界
月のくしゃみ災害を冷静に見ると、かなりBCPが終わっている。
BCPというのは、災害やトラブルがあった時にも事業や生活を止めないための計画のことだ。
この世界の場合、千年に一度のリスクが分かっている。
月がくしゃみすることも分かっている。
住民が避難することも分かっている。
なのに避難路がボロい。
穴がある。
板を人力で押さえる必要がある。
しかも、押し損ねると人が落ちる。
これはゲームだから笑えるけど、仕様書として見たら終わっている。
普通なら、
- 橋を常設する
- 穴をふさぐ
- 外出を禁止する
- 避難訓練をする
- 月のくしゃみ予報を出す
- そもそも月の真下に住まない
あたりが対策になる。
しかし、それをやるとリズムゲームにならない。
だから橋は壊れたまま。
だから住民は外に出る。
だからプレイヤーは板を押す。
合理性を捨てた瞬間、ゲーム性が生まれる。
ここが狂っていて、同時にうまい。
設定を酔いながら作っていそうなのに、ゲームとしては成立している
リズム天国の設定は、会議室で真面目に詰めたというより、誰かの夢の中で出てきたものをそのまま採用している感じがある。
「月がくしゃみします」
「いいですね」
「住民は逃げます」
「避難路は板です」
「ではプレイヤーに押させましょう」
「千年に一度ということにします」
みたいな会議をしていそうだ。
普通の人が途中で、
「家にいればよくないですか?」
と聞いても、
「それだとリズムが生まれないので」
で却下される。
「橋を作ればよくないですか?」
と言っても、
「それだと入力が発生しないので」
で却下される。
狂っている。
でも、たぶんこの順番なのだと思う。
まず世界観があるのではなく、先にリズム入力がある。
このタイミングで押させたい。
この連続入力をさせたい。
このフェイントを入れたい。
この圧を感じさせたい。
では、何をさせれば面白いか。
ペットボトルに縄跳びをさせるか。
月にくしゃみをさせるか。
この順番で作っている感じがする。
だから設定はおかしい。
でも、操作と音楽と絵が合うと、なぜか納得してしまう。
リズム天国の理不尽は、笑える後出し要件である
リズム天国を冷静に見ると、後出し要件っぽいものが多い。
ペットボトルに縄跳びをさせる。
月のくしゃみに合わせて逃がす。
謎の相手に合わせて踊る。
よく分からない生き物や物体が、当然のように任務を与えられている。
しかも、失敗するとこちらが悪い空気になる。
これは職場だったら普通に嫌だ。
「その前提、聞いてないんですけど」
「対象物の仕様を確認しましたか」
「なぜペットボトルに脚がある前提なんですか」
「千年に一度なら事前準備してください」
と言いたくなる。
でも、リズム天国ではそれが笑いになる。
なぜなら、理不尽の責任がプレイヤーの人生に乗ってこないからだ。
失敗しても、せいぜい評価が下がるだけ。
再挑戦できる。
絵がかわいい。
音が楽しい。
だから、理不尽が「怒り」ではなく「草」になる。
ワンパンで終わるときついが、理不尽はおいしい
とはいえ、ゲームとして一発ミスで終わる系はきつい。
リズムゲーでワンパン終了は、面白さより「は?」が勝ちやすい。
理不尽設定はおいしい。
でも、遊びとして成立するには、失敗しても笑える余白がいる。
たとえば、
- 1回目は予兆だけ
- 2回目は吹っ飛ぶけど復帰
- 最終盤だけ強い失敗演出
- ツッコミ役が毎回「だから外出るなって」と言う
くらいなら笑える。
月にワンパンされるのは面白い。
でも、本当にワンパンで全部終わるとしんどい。
このあたりのギリギリを攻めているのが、リズム天国の面白さでもある。
まとめ:意味不明なのに、なぜか真剣にやらされる
リズム天国の面白さは、ただの変な設定ではない。
意味不明な状況を、なぜか真剣にこなさなければならないところにある。
ペットボトルに縄跳びをさせる。
月のくしゃみから逃がす。
千年に一度の怖い夜に、なぜか外にいる。
冷静に考えれば全部おかしい。
でも、音楽が鳴る。
キャラが動く。
タイミングが来る。
押すしかない。
この「押すしかない」感じが、リズム天国である。
現実なら、まず要件定義をし直したい。
でもゲームだから、笑いながら受け入れられる。
リズム天国は、かわいい顔をした理不尽世界だ。
そして、その理不尽をリズムで殴るゲームである。
出典・確認資料
- 任天堂公式「リズム天国 ミラクルスターズ」紹介ページ
https://www.nintendo.com/jp/switch/bflta/index.html - 任天堂トピックス「Nintendo Switch『リズム天国 ミラクルスターズ』を7月2日に発売。」
https://www.nintendo.com/jp/topics/article/6e4d615a-3989-41cb-9598-7e63175db64f - 任天堂サポート「リズム天国 ミラクルスターズ サポート情報」
https://support.nintendo.com/jp/switch/software_support/bflta/delay-settings/index.html - Game8「リズム天国ミラクルスターズ ユーザーが選ぶ!最難関ステージランキング」
https://game8.jp/rhythm-tengoku-ms/795267
