突然、見知らぬ人から英文メールが届いた。
「亡くなった配偶者が海外口座にお金を残しました。私は重い病気で余命が短いので、あなたが受け取ってください。70%を慈善団体に寄付し、30%はあなたが使ってください」
昨日まで接点ゼロだったのに、今日から国際遺産分配担当大臣に任命された。しかも報酬30%。遺産の総額は書いていない。
米国の消費者保護当局FTCは2026年7月、偽の遺産や生命保険金を「受取人・慈善団体などで分配する」という似た詐欺を改めて注意喚起している [1]。今回のメールも同系統の疑わしい勧誘だ。
1. 「先に手数料を払え」と言われたら
まず重要な区別。今回のメール本文には、まだ手数料の請求はない。 ここからは、同種の前払い金詐欺で起こり得る仮の展開だ。
「送金手続きを始めるには、先に5万円をお支払いください」
待て待て。
仮に遺産が1億円なら、自分の取り分30%は3,000万円。
そこから5万円引いて、2,995万円送ってこいよ。
以上、計算終了。
数千万円を配るという壮大な慈善活動なのに、数万円の事務費だけは知らない人の財布を頼っている。
世界平和への志は高い。経費精算は町内会以下である。
2. 「差し引けない」という追加設定
仮に返信すれば、「海外口座が凍結されている」「税金は受取人が先に払う」「弁護士への費用が必要」など、もっともらしい説明が登場する可能性がある。
もちろん、正当な相続の費用や税金がすべて遺産から天引きできるわけではない。国や手続きにより異なる。
しかし、この話で最初に疑うべきなのは計算方法ではない。法的な関係も資産の証拠もない知らない相手が、いきなり海外遺産の30%を約束していることだ。
FTCは、同様の申し出に反応すると、金銭や金融情報を狙われると警告している [1][2]。まだ存在を確かめていない遺産を、本当に送金できる資金のように扱ってはいけない。
3. 事実と仮説を分けておく
実際の文面は、配偶者の死、本人の病気、子どもを支援したいという話、70対30の配分、そして受取依頼。まだ5万円の請求はされていない。 1億円も5万円も説明用の例だ。
この送信者が次にどんな要求をするかは分からない。それでも、知らない人への突然の遺産分与の申し出は、十分に警戒すべきパターンである。
4. 対応は?
返信しない。添付やリンクを開かない。銀行口座、住所、身分証を送らない。迷惑メールとして報告して削除。すでに送金した場合はすぐに銀行などの送金先サービスに連絡し、警察や消費生活相談窓口へ相談する [2][3]。
結局、「何千万円でもあげます」と言う人が「でも数万円はあなたが先に出して」と頼んでくる。
国際慈善事業というより、他人の財布を使った壮大な立替精算である。
参考資料(3件)
- US Federal Trade Commission (FTC), "Unclaimed life insurance money? It’s a scam," July 2026 consumer.ftc.gov
- US Federal Trade Commission (FTC), "Contacted about a long-lost relative’s inheritance? Hold on a minute," August 2022 consumer.ftc.gov
- US Federal Trade Commission (FTC), "How To Avoid a Scam," July 2023 consumer.ftc.gov






