結論――放置すれば文明崩壊級だが、人類全体との総力戦では蟻側にも勝ち目が薄い
ピトーは生まれた直後にカイトを殺す。
同格の王直属護衛軍が、プフとユピーを含めて三体いる。
その三体が守る対象として、さらにメルエムが生まれる。
その後、東ゴルトーの国民を集め、選別によって念へ覚醒できる人間を兵士化しようとする。
構造だけを見ると、
カイト級を倒せる護衛軍
×3
↓
その上に王
↓
さらに大量の念兵士を生産
である。
普通に考えれば世界が終わる。
実際、対応が数か月遅れ、王が国家運営、軍事技術、国際政治、兵器、念能力者の捕食を学べば、人間社会は極めて危険になる。
ただし、
護衛軍三体はネテロ三人と完全に同じではない。
また、
人間側は念能力者だけで戦う必要もない。
ここが重要である。
護衛軍はネテロ級というより、別の能力軸で人間の上限を外れている
ネテロは、祈りから攻撃までの速度と百式観音の連打で、護衛軍や王にも通じる異常な技術を持つ。
ピトーがネテロの一撃を正面から防げず、遠方まで吹き飛ばされたことからも、瞬間的な戦闘技術と速度はネテロ側に大きな強みがある。
一方、護衛軍には、
- 桁外れのオーラ総量
- 生物としての耐久性
- 高速な学習
- 王への絶対的忠誠
- 個体ごとに異なる特殊能力
- 戦闘中の成長
がある。
したがって、
護衛軍一体=ネテロ一人
という単純換算ではない。
より正確には、
ネテロでも安全に処理できる保証がない怪物が三体いて、その上にネテロの奥義でも倒せない王がいる
である。
ピトー、プフ、ユピーは同じ強さではなく、役割分担が壊れている
三体は全員強い。
しかし同じ戦闘員ではない。
ピトーは、
- 広範囲の円
- 治療
- 死体の操作
- 自己戦闘強化
- 高い身体能力
を持つ。
プフは、
- 鱗粉による感情・精神への干渉
- 分裂
- 情報処理
- 選別や兵士管理
- 人間社会へ入り込むための知性
を持つ。
ユピーは、
- 圧倒的な肉体
- 形態変化
- 爆発的攻撃
- 戦闘中の感情理解と能力進化
を持つ。
一体ずつでも厄介である。
三体が王のそばに揃うと、
戦闘、索敵、治療、精神操作、兵力生産、情報処理が一つのチームに揃う。
単純な攻撃力の足し算ではない。
国家機能の原型が完成している。
選別は、護衛軍を増やす計画ではなく、念兵士を大量生産する計画
東ゴルトーでは、少なくとも約500万人の命が選別にかかっている。
全員が兵士になるわけではない。
念の強制覚醒に耐えた一部だけを残し、それ以外は死亡する。
仮に生存率を約1%とすれば、得られる兵力は約5万人になる。
この五万人が王直属護衛軍級になるわけではない。
大部分は、ラモットのように強制的に精孔を開かれた粗製の念能力者である。
しかし一般国家から見れば、
超能力を使う兵士が数万人いる
だけで十分に脅威である。
しかもプフが能力開発や統制へ関与し、王が戦力を食べて強くなるなら、時間とともに軍の質も上がる。
蟻側が本当に怖いのは、勝つたびに学習と資源を得ること
キメラアントは、占領地域から次の資源を得られる。
- 人間の肉体
- 念能力者のオーラ
- 科学技術
- 行政機構
- 軍事情報
- 通信網
- 兵器
- 人間の知識と記憶
- 新たな兵士候補
通常の侵略者は、戦争が長引くほど消耗する。
王と護衛軍は、勝つほど人間社会を学び、食料と能力者を得て強くなる可能性がある。
そのため東ゴルトーで止められなければ、
侵略国家が指数関数的に能力を増やす
展開へ入る。
カイト死亡時点は、強い敵が一体現れた場面ではない。
世界規模の侵略システムが起動した直後である。
それでも人類側が国民救助を捨てれば、戦争の難易度は一気に下がる
宮殿突入作戦が難しかった最大の理由は、王と護衛軍が強いことだけではない。
選別のために集められた数百万人を巻き込めないことである。
人類側が、
東ゴルトーの国民を救う
という条件を捨てれば、選択肢は変わる。
王と護衛軍の位置を特定し、国家規模の兵器で地域ごと破壊する。
それなら個々の念能力者が王へ勝つ必要はない。
作中でも、ネテロは王との決闘に敗れた場合に備え、心停止で起動する貧者の薔薇を体内へ仕込んでいる。
百式観音と零の掌でも王を倒せない。
それでも薔薇の爆発と毒は、最終的に王、プフ、ユピーを死へ導く。
つまり、
武の頂点は王へ勝てなかった。
量産兵器は王を殺した。
国家全土を焼く必要すらなく、中枢を分離して一発を当てればよかった
ネテロたちの作戦は、宮殿で薔薇を爆発させることではない。
そこには多数の国民がいる。
そのため、
- ネテロとゼノが王を宮殿から分離する
- 討伐隊が護衛軍を足止めする
- 王を無人の兵器実験場へ運ぶ
- ネテロが決闘する
- 敗北した場合は薔薇を起動する
という構造になっている。
これは正々堂々の決闘ではない。
決闘を、人質から王を引き離す輸送工程として利用している。
ネテロは武人として戦いを楽しんでいる。
同時に会長として、勝負に負けても任務が成功するようにしている。
人間側は、能力相性と分断で「倒す」以外の勝利条件を作った
宮殿突入部隊も、護衛軍を正面から全員倒すことを前提にしていない。
必要なのは、
- 王と護衛軍を分ける
- 数分間足止めする
- 監視と通信を乱す
- 王の位置を固定する
- ネテロの戦場まで王を運ぶ
ことである。
そのために、
- メレオロンの完全な不可視
- ナックルの利息と強制絶
- モラウの煙
- ノヴの空間能力
- シュートの部位封印
- ゼノの龍星群
- イカルゴの潜入
- パームの監視
が使われる。
純粋な火力では護衛軍に及ばなくても、
戦闘の目的を「撃破」から「分断と遅延」へ変えれば、参加できる能力が増える。
最後は不意打ちではなく、最初から用意された任務保証
貧者の薔薇は、王が油断した隙に偶然使われた奥の手ではない。
ネテロは最初から体内へ仕込んでいる。
発動条件も、自分の心停止である。
王がネテロより強い。
ネテロが腕や脚を失う。
零の掌でも倒せない。
それらをすべて許容したうえで、
自分が死ねば王も死ぬ可能性が高い
状態を作っている。
だからキメラアント編の決着は、
人間側の最強能力者が、敵の最強個体を上回った
ではない。
人間側が、個体戦の勝敗を任務の成否から切り離した
決着である。
蟻は念能力者との戦争には勝てても、人類という種との総力戦には勝ちにくい
王はネテロより強い。
護衛軍は大半のプロハンターを圧倒する。
選別軍が完成すれば、通常の軍や警察では止めにくい。
それでも人類には、
- 大量破壊兵器
- 長距離攻撃
- 毒
- 封鎖
- 情報網
- 国家間連携
- 人口と生産力
- 個体を犠牲にできる政治構造
がある。
蟻側が東ゴルトーへ集中している段階なら、人類は最悪の場合、地域ごと切り捨てられる。
逆に蟻側が世界へ分散し、各国の中枢へ潜伏し、兵器や政治を理解した後なら危険度は上がる。
したがって時間軸は、
東ゴルトーで集中している
→ 人質救助は難しいが、殲滅自体は可能
世界へ分散する
→ 発見と同時攻撃が難しくなる
国家中枢と兵器を掌握する
→ 本当に文明崩壊の可能性が高まる
となる。
世界が自動的に滅亡するわけではない。
放置すると、人類が国単位の犠牲を払わなければ止められなくなる。
それがキメラアント編の危機である。
インフレをさらに強いキャラクターで終わらせなかったから、物語が壊れなかった
グリードアイランド編までの強敵は、人間の念能力者として理解できる範囲にいる。
レイザー。
ゲンスルー。
ビスケ。
旅団。
そこへピトーが出てきて、カイト級を生後間もなく殺す。
同格があと二体いる。
さらにその上に王がいる。
普通のバトル漫画なら、次は王より強い味方を登場させる必要がある。
しかし『HUNTER×HUNTER』はそうしない。
ネテロは武術で敗れる。
ゴンは人生を前借りして一時的にピトーを上回るが、再利用できる成長ではない。
王は兵器で死ぬ。
これにより、
個人戦闘力の天井は極端に上がったままでも、以後の敵を毎回メルエム以上にする必要がなくなった。
王が参加しているゲームへ、さらに強い駒を置いたのではない。
人間が盤面を爆破した。
