結論――パームは「人間が蟻になっても人間性を残せる」ことを示す逆向きの存在
パームは登場するたびに見た目が変わる。
最初は、
- 長く乱れた髪
- 青白い顔
- 不健康そうな体
- 包丁
- 強烈な圧
- 感情の振れ幅
によって、ホラーキャラクターのように描かれる。
ゴンとのデートでは、髪を整え、服を変え、別人のような姿になる。
宮殿潜入時には秘書として化粧と衣装を整える。
そして護衛軍に捕まり、繭から出てきた時には、
- 手足の鱗
- 額の水晶
- 青い目
- 細長い輪郭
- 無表情
- 強化された身体能力
を持つキメラアント兵へ変わっている。
登場時、デート時、潜入時、改造後で別キャラに見える。
変わりすぎである。
しかし、この変化はキメラアント編の中心テーマとつながっている。
パームは死亡して転生したのではなく、生きたまま改造された
多くのキメラアントは、人間が女王に食べられ、別個体として生まれ直す。
パームは違う。
宮殿へ潜入し、ピトーに発見された後、兵士改造の実験材料にされる。
繭の中で身体をキメラアント化され、プフの操作を受ける実験兵「No.1」として再登場する。
そのためパームには、
- 元の肉体と記憶
- キメラアントの身体能力
- 念能力の変化
- プフによる感情制御
が同居する。
完全な転生ではない。
人間を素材に、蟻の兵士へ上書きしようとした存在である。
額の水晶は、元の能力が肉体へ埋め込まれた姿
人間時代のパームは、干からびた人魚と水晶を使い、対象を遠隔で見る能力を持っている。
改造後、外部装置だった水晶は額へ移る。
能力も「淋しい深海魚(ウィンクブルー)」として再構成される。
右目で見た対象を記録し、左目で対象の現在を確認する。
記録できる人数には上限がある。
この変化は、単なるパワーアップではない。
道具として外にあった能力装置が、キメラアント化によって身体へ統合された。
ピトーが生まれながらに念を扱うのと逆で、パームは後天的な改造によって、能力と肉体の境界を失っていく。
ブラックウィドウは、パームの感情と強化系を戦闘へ接続する
改造後のパームは「暗黒の鬼婦神(ブラックウィドウ)」を使う。
長い髪を全身へ巻きつけ、防具のような形にする。
髪が防御を担うため、本人は攻撃へオーラを集中できる。
パームは強化系である。
したがって、
髪の鎧で防御を補い、身体強化と攻撃へ集中する
能力構造は系統と相性がよい。
見た目は魔女のドレスのようになる。
登場時のホラー演出が、そのまま実戦用の能力へ完成した形である。
生身のパームと比較して、戦闘性能が別人になっている
人間時代のパームは、念能力者ではあるが前線戦闘員として描かれていない。
キルアを包丁で追っても、速度では相手にならない。
改造後は違う。
キルアのヨーヨーを破壊し、正面から連打を浴びせ、キルアに防御を強いる。
キルアは、純粋な力では自分より上の可能性を考える。
つまりパームは、
索敵・透視型の支援要員
↓
高耐久の近接戦闘員
+
強力な遠隔監視
へ変わっている。
護衛軍の改造技術が量産できれば、選別兵は単に精孔を開くだけでは終わらない。
既存の念能力者を、能力を保持したまま蟻の肉体へ強化できる可能性まで示している。
これは世界滅亡リスクをさらに上げる要素である。
それでもパームの人格は消えなかった
プフはパームの記憶と感情を利用しながら、王へ従う兵士へ変えようとする。
しかしキルアとの対話で、その制御は崩れる。
キルアはパームを倒すより先に、ゴンを支えられない自分の苦しさを打ち明ける。
その感情を受け取ったパームは、キルアを殺す命令より、自分の記憶と関係を選ぶ。
小型のプフ分身を破壊し、味方へ戻る。
ここで重要なのは、
記憶が残っているだけではない
ことだ。
パームは、
- ゴンへの感情
- キルアへの理解
- 仲間としての判断
- 自分で選ぶ意思
を回復する。
身体は蟻になっている。
人格の最終決定権は人間側に残る。
プフにとってパームは失敗作だが、人間側には成功例になる
プフが欲しいのは、王へ完全服従する兵士である。
前世の記憶や人間関係が強く残れば、兵士は命令へ逆らう。
そのためパームの実験失敗は、
記憶を持つ兵士は管理しにくい
ことを示す。
人間側から見ると逆である。
パームは、
身体を蟻へ変えられても、関係と意思によって自分を取り戻せる
ことを示す。
キメラアント編では、前世の記憶を持つ蟻が複数登場する。
コルト。
ウェルフィン。
イカルゴ。
ブロヴーダ。
レイナとしての記憶を持つシドレ。
人間性は身体の種別だけで決まらない。
パームはその境界を、最も直接的な改造によって見せる。
ピトーとパームは逆方向に進み、同じ境界へ到達する
ピトーは蟻として生まれる。
最初は、人間を研究材料や玩具として扱う。
しかし王がコムギを守ろうとする姿を見て、他者の痛み、忠誠、懇願、約束を理解していく。
最後には、王のためにコムギを治し、ゴンへ頭を下げ、約束の時間を守ろうとする。
パームは人間として生まれる。
身体を蟻へ変えられ、感情を操作される。
しかし人間関係と意思を取り戻し、仲間の側へ戻る。
二人は逆方向である。
ピトー
蟻の身体
↓
人間的な感情を獲得する
パーム
人間の身体
↓
蟻の身体へ改造される
↓
人間的な意思を保持する
この二人によって、
人間と蟻の境界は肉体だけでは決まらない
という主題が完成する。
最後に王の願いを受け取るのがパームなのは偶然ではない
終盤、王はコムギの居場所を知るため、パームへ頭を下げる。
パームは、自分の身体の一部がキメラアントであるからこそ、王が頭を垂れる意味を強く理解する。
王は最上位個体である。
その王が、人間との最後の時間を得るため、元人間のキメラアントへ懇願する。
パームは王の強さではなく、目的を見る。
そして条件付きでコムギの場所を教える。
かつて感情を制御できず、他人を追い回していた人物が、最後には、
- 王の覚悟
- コムギの意思
- 仲間の安全
- 薔薇の毒による結末
を理解し、冷静に判断する。
姿だけでなく、役割も別人級に変わっている。
パームの変貌は、キメラアント編の答えを身体で表現している
パームは変わりすぎている。
外見。
能力。
身体能力。
性格の見え方。
物語上の役割。
すべてが変わる。
しかし芯まで別人になったわけではない。
むしろ改造後の方が、他人の感情を理解し、自分で判断し、仲間を守る側へ立つ。
キメラアント編は、
人間は善で、蟻は悪
という話ではない。
人間は安価な大量破壊兵器を作る。
王はコムギを愛する。
ピトーは治療のために頭を下げる。
蟻になったパームは人間性を守る。
姿が変わっても、何を選ぶかは残る。
パームの変貌は、その答えを最も露骨なビジュアルで見せている。
