会議の前に「まず、たたき台を作って」と頼まれる。口頭の話を整理し、分からない点を拾い、関係者が話せる形にする。ところが、職務経歴書ではその仕事を「資料作成」の一言で済ませてしまう。
それでは、何を整理し、どの判断を助けたのかが伝わりにくい。たたき台の価値は、きれいな資料を作ることだけではなく、曖昧な話を判断できる形へ変えることにある。自分が担った仕事を、その過程から言葉にしてみる。
たたき台は、完成品より判断材料
まだ決まっていない話を、完成したように整える必要はない。目的がはっきりしないなら、仮の目的と確認したい点を分けて書く。選択肢があるなら、それぞれの違いを並べる。何をもって終わりとするかが曖昧なら、完了条件を仮置きして確認する。
こうして「決まっていること」と「これから決めること」が見えると、関係者は具体的な箇所について話せる。口頭の会議で同じ言葉を使っていても、思い浮かべているものが違うことはある。たたき台は、その違いを確かめる材料にもなる。
たたき台を作る人が、すべてを決める人になるわけではない。判断者に確認すべき質問を作り、判断に必要な情報を整理するところまでが役割の場合もある。どこを自分が担い、どこから先を関係者に確認したのかも、仕事の説明に含めたい。
自分がやっていた作業を分けて書く
「たたき台作成」の中身を振り返ると、次のような作業が見つかる。
- 要望から、目的や対象者を整理した。
- 一つに見えていた問題を、いくつかの論点へ分けた。
- 比較できる選択肢を用意した。
- 決まっていない条件や、確認が必要な点を見つけた。
- 判断者に聞く質問を作った。
- 完了条件を仮置きし、認識を確かめた。
実際に担ったものを選ぶと、「資料を何枚作ったか」だけでは見えなかった仕事が説明できる。目的を決めたのか、目的の候補を整理したのか。自分で判断したのか、判断する人へ材料を渡したのか。その違いを残すと、担当範囲も伝わる。
職務経歴書では、整理した対象と役割を示す
職務経歴書では、例えば次のように整理できる。
曖昧な業務課題や口頭ベースの要望を、目的・対象・論点・確認事項に分解し、関係者が判断しやすいたたき台資料として整理。会議の論点整理、意思決定支援、業務改善の初期設計を行った。
この例を、そのまま自分の実績として使うのではなく、実際にした仕事に合わせて書き換える。どんな要望を扱ったか。何を整理したか。誰の判断を助けたか。どこまで担当したか。説明できる範囲を具体化する。
会議の論点を整理したのであれば、その役割を書く。業務改善の最初の段階で、確認事項や選択肢を作ったのであれば、それを書く。「資料作成」という作業名を、仕事の内容へ戻す考え方だ。
文章を速く作れるようになっても、論点を選ぶ仕事は残る
文章を作る道具が便利になれば、案を書き出す速さは上がる。しかし、何を整理するべきか、どの条件が未定義なのか、誰に確認するべきかは、別に考える必要がある。
出力を速く作ることと、判断に必要な材料を選ぶことを分けて捉えると、自分の仕事も説明しやすくなる。たたき台を作っていたなら、資料の形だけでなく、曖昧な話をどう整理したのかを振り返る。その過程に、職務経歴書へ書ける役割がある。

